第四話 心中穏やかでない
猛烈に眠いと言いながら、既に居間のソファで寝かけている姉を見ながら、どうしたらこの人のように高いモチベーションを維持できるのだろうかと思った。
彼女は相変わらずプライベートは上手くいっていないのだが、仕事に対しての歩調を緩めようとしない。
「だって自分を高く評価してくれる人たちを失望させたくないでしょ?」
姉の言うことはごもっともかもしれないが、その他大勢に埋もれている僕は、周りの人の期待に添えないことに慣れている。
自分がどこにいるのか分からないような気になる。
ときどき路上生活をしている人をぼんやりと見ていると、自分よりも野心があるように見えてくる。
僕の周りの人たちがもしもバックパッカーになったなら、熱心に目的地にまで行く
交通手段や今日の寝床を確保する努力をするのだろうけれど、自分はどうだろうか。
きっと何もかもが面倒くさくなって、生きることを諦めてしまうかもしれない。
「なんだっておまえはいつも遠い目をして自分を否定し続けてるんだ?」
バイトの休憩中、愛川は僕の顔を覗き込んでそう言った。
「損な生き方だなぁ」
「俺を見てると不快になる?」
愛川はうーんと少し考えると、不快にはならないけれど何か渇望するものがないのかと不思議になると言った。
言葉に詰まってうつむいてしまった僕の頭を愛川はなんだよーと言いながらくしゃくしゃと撫でた。
「・・・。努力はしてるよ」
僕は自分を晒すのが正直ニガテなのだが、こうやって愛川には自分の暗い部分を話したりする。
愛川はそっかと言うと、おまえはなんていうか、偶然に頼ってるというか、物事を成り行きに任せている感じがすると分析した。
「たしかに、今まで何かを熱望するってことってなかったかも」
「いろんな意味でぎりぎりの生活をしてみれば、おまえの生き方に少しは変化を起こすんじゃね?」
変化ねえ・・と考えている僕の横で、愛川はにこにこと微笑んだ。
「横のつながりもけっこう楽しいな」
「何それ?」
「オレ、バイトの人たちとは話したりするけど、タメのやつとは最近あんまり付き合いなかったんだよな~」
愛川はぼんやりそう言うと、ま、自分に非があったからなんだけどねと付け加えた。
「たしかに、愛川って年配の人たちには敬意を払ってるって感じだけど、他の人には態度が横柄だよね」
愛川は、はははと笑うと、もう後戻りできなくなっちまったよ~と言った。
迷走しています




