第十四話 Far from it
学校の中にいても、エキストラの一人のようにしか見えなかった。
そんな亘と後に意気投合するようになるとは不思議なこともあるものだなと思った。
「愛川、このチキンはまだ有効か?」
帳さんが俺の目の前にチキンのパックをぷらぷらとさせてくる。
やれやれという顔をして俺は賞味期限のシールを指でツンツンとしてよく確認しろと言う。
自分の感情をごまかすことができない亘を見ていたら何かいいことがあったのだろうなとすぐにわかった。
「お前も意外と抜け目ないなぁ」
「なんていうか、嫌われてはいないってことはわかったよ」
はにかむ亘に、お前は女の子にちゃんと献身しそうだもんなとからかってみる。
「要請があれば時間を作るけどさ」
「何か困ったときは援護射撃してやるからな」
そのとき厨房から帳さんの調子はずれな鼻歌が聞こえてきた。
「Harder~Harder~♪」
「何あれ、卑猥な曲?」
うんざりとした顔の亘をちらりと見ると、帳さんとは生きてきた世界が違うから理解不能だと言った。
「経験値を重ねたら、あの子とも対等な関係になれるかな・・」
エスプレッソの機械を掃除している彼の横顔を見ながら、途上の君がいいんじゃないの?その子はと俺の見解を述べてみる。
「気まぐれで亘と一緒にいるわけじゃなさそうだし、もっと自信もてよ」
不服そうな表情の彼は、そうだな、愛川と違って切って捨てることはなさそうだと吐き捨てた。
「ひでえなぁ。俺への見方変えろよ」
そう言いながら、かつて追い求めた手強い相手のことをなんとなく思い出していた。
「亘はなんでも鵜呑みにするから、お手柔らかにね」
長い沈黙の後、明日香さんは私の目を見てそう言った。
彼と付き合うのに、お姉さんの許可が必要と思ったわけではないが、礼儀として報告しておいた方がいいかなと判断し、今日は時間を割いてもらうことになった。
明日香さんの茶色い目を見ていると、性別は違っても亘によく似ているなと思った。
「でも・・、亘って朱ちゃんにとって普通すぎない?」
「うーん、どうだろう。そうかもしれないけど、ときどきすぐにカッとなるところとか、なんか可愛いですよ」
ほんとそうと彼女は苦笑すると、からかうとムキになるなるから面白いのよねと言った。
「家での彼はどんな感じですか?」
そうねえと明日香さんは首を傾げると、自分が仕事や付き合っている人のことをしゃべり続けているのをひたすら聞いてくれていると言う。
「料理もしてくれるけど、ときどき生焼けだったり、不味かったりするかな」
私よりかはましだけどねと付け加えた後に、彼女は自分が心配しているのは弟が空回りをして朱ちゃんに嫌われないかなということと言った。
「無理してない?」
私が困惑した顔をすると、明日香さんはあなたたちの始まりがあんなだったからと言い辛そうにした。
「全然」
私はにこりとすると無理してないです、と微笑んだ。
大丈夫です!(^.^)




