第十一話 一緒にいられる
「何もしてない」
相田錦が何してるの?と聞いてきたのでしかめっ面でそう答えた。
すると彼はわーいと言って、じゃあゆうかちゃん一人じめだと喜んだ。
「今日何の日か知ってる?」
知らないと即答すると、相田錦は俺の誕生日♪と言った。
「ゆうかちゃん、祝ってよ」
忙しいフリをするべきだったと思いながらも、私はお誕生日おめでとうと言った。
「今ちょっとだけ優しい顔になったね」
「そうかな」
彼はにこにこしてうんと言った。
「ちょっとだけオフモードだったかも」
「俺といるとき、それが永遠に続けばいいな~」
相田錦を横目で見ながら、人畜無害な顔をしているなあと感じた。
一回りも年上の彼氏とは最近話が弾まないことが多く、あくびを噛み殺しながら話を聞いている。
不思議なことに、相田錦といるとそこそこ楽しい。
「ゆうかちゃん、俺ずっと待ちぼうけだよ」
彼は私の彼氏候補に何度も名乗りを上げてくる。
「考えとく」
「一生のお願いだから今決めて」
そろそろ彼氏との関係を清算した方がいいかなと思っていた私は、いいよと答えた。
ホント!?と大げさに喜ぶ相田錦は今から俺ゆうかちゃんの彼氏って言っていい?と許可を求めてきたので、まるで母親に何かを求める小学生みたいだなと思い、私は苦笑しながらうなずいた。
「おっしゃー!!」
ずーっとあきらめなければ彼のように願いが叶うこともあるのだなと思った。
心細くなってきた。
あの子との約束の日、姉から自分も行こうかと提案されたのだが、もう高校生なのだから大丈夫だと断ってしまった。
だけど彼女を待っている今、これからしなくてはならない避けたい話題のことを考えると全速力で逃げ出したくなってきた。
しかし運命は非常で、彼女は僕の目の前に現れてしまった。
「久しぶり・・・」
記憶の通り気の強そうな彼女はこくりとうなずくと、朱と呟いた。
「えっ・・・」
「明日香さんから聞いたかもしれないけど、朱っていうの。葉月朱」
「朱さん・・・。えっと、この間は本当にすみませんでした!」
深くお辞儀をしすぎて、ボディバッグが頭の方にずるりと落ちてきた。
そのまましばらく沈黙が続いたので気まずいなと思っていると、彼女の方からぼそりと何か聞こえた。
「何て・・?」
「許してあげる」
彼女の一言で一気に救われた気分になっていると、自分の意思であなたに話かけたしと言ってくれた。
「でも、力づくで朱さんにあんなことをしてしまって、怖かっただろうなと思って・・・」
「説教された?」
不思議そうな顔をしてみると、彼女は明日香さんからと付け加えた。
僕はバツの悪い顔をして、姉をだいぶ失望させてしまったと思うとこぼした。
「心配しなくていいと思うよ」
彼女は笑みを浮かべると、姉が僕の代わりに何度も謝罪してきたと言った。
「あなたも謝ってくれたし、それでもう十分」
「ありがとう・・。えっと、朱さんは今日時間ありますか?」
「おごり?」
なんだか僕は不利だなと思いながらも、はいと返事した。
途端に無防備な笑顔になった彼女は朱でいいよ。私もきみとタメだからと言った。
「亘。僕は亘」
「うん」
不思議だなと思った。
つい最近まで何の接点もなかった子とこんなふうに距離を縮めてる。
徐々に心を許せる関係になれたらいいなと僕は思った。
うまくいってほしいです( *´艸`)




