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廣島  作者: 火村虎太郎
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最終話 廣島の終わり


共黒会本部で・・


「どうなっとるんじゃ花元!」共黒会幹部

「いや・・その・・・・」花元


あっという間に広がる火。

純也が神戸の者を車に乗せてるのが神戸の者に目撃されていたのだ。


「神戸が乗り込んできとるんじゃぞ!」幹部

「ウチで、対応いたします!」花元


くそっ!何をしてくれとるんじゃ純也は!


「おお、それこそ三州じゃろうが!」幹部

「おお!そうじゃったそうじゃった」幹部


だが複雑な問題が・・

三州と神戸は兄弟分だ、直接やり合う事はない。

そして花元の所は三州には未加入・・


「じゃあどうなるんじゃ!?」幹部

「共黒会と神戸が直接やりあうんか!?」幹部


構図はそうなる・・

三州に加入してない花元が揉めたのだから・・

唯一当てがあるのは淡路くらい


「・・・淡路が力貸す言うとるがどないするか?」幹部

「あのバカ組織が!もう三州のガラス割りに行ったらしいぞ!」幹部


共黒会と淡路の連合・・これだともしかしたら・・

だが・・


「花元ぉ・・詫び入れぇ」会長

「・・・・・・・」花元


勝てん喧嘩じゃ・・それにこれじゃあ代理戦争になるぞ。


「ワシはあの時代の生き残りじゃからよく分かる・・」会長


昔のあの仁義なき時代の抗争。

あの時も神戸が入り込んでの代理戦争になった。

廣島の者同士が血を血で洗った・・・

そして残ったものは何もなかった・・


「大刀に詫び入れて三州に入れ」会長

「くっ!」花元


ワシは廣島の為に・・廣島を思って・・


「・・・・・・・・・」幹部

「・・・とりあえずお前とこの頭連れてとワシんとこ来いや。」幹部


ワシが仲介してやるけん。

お前の気持ちも分かるが一旦じゃ一旦。


「く・・分かりました」花元


あっという間に終結。

純也や淡路の和解反対派は多少三州に意地を見せたが、

結局は神戸、三州の猛攻に飲み込まれることになる。


そして共黒会幹部に連れられ三州に出向き久しぶりの対面


「・・・この度は・・まことに・・」純也

「・・・くくく・・」大刀


必死にヤクザしよってからに。

セリフ作らされて棒読みじゃのぅ・・


「・・大刀さん、ここに来るの誰にも見られてないんで」共黒会幹部

「なっ!売るんか!ワシ等を!」純也



そうじゃ・・懸賞金掛け取ったんじゃ10億って大金をのぅ

大体、詫び?受ける訳なかろうが!

お前はワシのかわいいジュリを殺したんじゃ。

その腕の包帯がそうか?ジュリの最後の咆哮は。


普通だったら純也は来なかっただろう。

最後の一人になっても爆弾抱えて突っ込んでくるような男だ。


だがもう気持ちが切れている・・いや知ってしまった恐れを・・


「何かを得るには何かを失わなければならんのじゃ」大刀


大きな悲しみじゃったわ・・

だがそれがお前の強気を断ち切った・・


三州でお前が一番の功労者じゃ・・

ジュリナ・・・愛しとったぞ・・・


「山ぁ連れてけぇ!」大刀



さぁ・・物語も完結じゃ・・



『ドサッ・・ドサッ・・』


こいつらには長く絶望を・・

縦に穴掘って杭を打ちそれに奴等を縛り付ける。

ゆっくりと・・長く土が覆いかぶさってくる恐怖を・・



「くっ大刀ぇえええええ!」

「くそがぁ!!」


吠える吠える・・最後の最後まで。

だが本当に死が見えた時は泣くか諦めるかのどっちかじゃ・・


「ぐっ!ごぼっ!ちょっ!待ってくれぇ!金なら!」花元


顔に土が掛かりだしたのが合図だ・・もうすぐ死の・・

先に花元の顔が埋まり・・


「ぅ・・・ぉ・・・ぉ・・・・・・・・・」


断末魔・・・

そしてまだ息のある土の中での、

絶望に泣いている声もだんだん小さくなっていく


そして純也は・・


「ごぼっ!おおたぁっ!ジャリっ!ジャリっ!ぐぼっ!」純也


お構いなし・・口の中に土砂が混じろうが喉に飲み込もうが・・


「がぁたてぇえ!!!・・ぁ・・ぇ!・・・・」純也


なんちゅう男じゃ・・・

これが廣島か・・ええ根性じゃわ・・

ワシがおらんやったら、お前が廣島取ったじゃろうの・・


「・・・埋め終えました」堂嶋

「おう」大刀


物語の完結。


「・・・・・・・・・・・・・」花元

「・・・ぇ・・・・・・ぇ・・・・・・・・・」純也


「・・まだ吠えとるか・・」大刀


完全に土に埋まった純也から僅かな声。

だがそれも僅か数秒で力尽きる。


ここに・・

広島の時代を担う主なる若者が消えていった。


ジュリ、ジュリナ、花元、純也


この広島の激動の中心にいた4人の若者。



「・・・・・・・・・あの、オヤジっ・・」堂嶋

「なんじゃ?」大刀


俺は絶対に裏切りませんし、一生付いて行きます。

だがら聞きたいことが一つ・・


「どうして・・」堂嶋


ジュリナを殺したんですか?

これだけウチの為に尽くして、そして大刀さんの女なのに・・


「ジュリナが別件で張り付かれとるって言っとたろう・・」大刀


ありゃ地検じゃ。田舎の警察なんかじゃないぞ。

そしてさっき花元を埋める前にした質問・・


『お前か?』

『何がじゃ!?』


と、本当に何のことか分かってなかった。


「ジュリナの口座なんじゃが・・」大刀


まぁ、2億くらい持っとるのは知っておったが・・


「40億!?」堂嶋

「ああ」大刀


増え取ったんじゃ。とんでもない額に・・

そして地検に張り付かれとった・・


「多分インサイダーもどきじゃろ」大刀

「株ですか!?でもジュリナってその分野は全く・・」堂嶋


そうじゃ。ジュリナにそんな才覚に度胸も無い。

そしてこないだジュリナを抱いた時に・・


「クセが違ったんじゃ」大刀


違う男と回数を重ねたクセ・・違う男の匂い・・

それは花元でもない・・

そして花元の尽きることない金の出所も未だ謎・・

多分コイツも・・


「スポンサーか、誰か入れ知恵しとるのが居ったはずじゃ」大刀


だがそれは国、地検が動くほどの嫌疑案件・・

奴等は司法取引でもなんでもして追い込んでくる。

いずれジュリナが落ちるのは必然じゃったじゃろう。

ジュリナのすべてがめくれれば、俺もすべてを失う。


「じゃあ40億は!?」堂嶋

「まぁしょうがないのぅ・・」大刀


動かすのはもう無理・・すぐに足がついてしまう。


「でももしかしたら・・」堂嶋


大刀さんの為に増やしてくれたのかも・・・


「いや・・違う」大刀


ジュリナはきっと俺より太い客を見つけた・・

俺にはジュリナに40億も稼がせるのは無理じゃ・・

いつか俺からも離れて行ってただろう・・


「・・・最後何も言わんかったじゃろ?」大刀

「そういえば・・」堂嶋


何で私がとかも叫ばなかった・・

何か自分の非を後悔してるようだった。


「ええ若者じゃったの・・」大刀


もしこの4人が最初から組んで俺に立ち向かってきたら、

俺はあっさり敗れていただろう。


「ジュリのとこだけ花置いとってくれや・・」大刀

「はい・・」堂嶋


花なんて買ったこともなく、そんなガラじゃなかった。

恨むか俺を?

まぁそうじゃろうな・・すまん・・・


じゃけどワシはこの広島を足掛かりに日本のドンになる男じゃ。

そしてその広島最後の戦いの相手がお前らじゃった。

やっとレールに乗った。後はただ真っすぐ進むだけ。


悲しいのぅ・・女の子みたいじゃったのぅ・・

膝を抱えた姿が・・原爆ドームの姿に似た・・



「じゃあの・・・・・・廣島ぁ・・・」大刀





誰も来ないこの私有地に置かれた花はやがて枯れ風に吹かれて行く・・




『ドサッ・・ドサッ・・』


いつから単車に乗らなくなったんだろう・・

いつから殴り合わなくなったんだろう・・

いつから・・・


もっと単純に不良で居たかった・・

喧嘩で勝ったり負けたりして・・


大刀さんが恐くて・・でも魅力的で・・

だってこの人はいずれ日本のトップになるんじゃけぇ!

こんなブスでも可愛がってくれるし!


でも・・ウチが悪いんじゃ・・

最初に仲間を裏切ったけぇ・・

今も、あの時も純也君を殺そうとしたんじゃけぇ・・


あ・・

あと少し・・光が消えていく・・


・・消え・・・


・・・・・・


ん?・・・・


・・・・お花?


・・・・何か・・・いい匂い・・


・・・・・あ・・・・もう・・何もない・・


光も・・・・匂いも・・


へへ・・・・消えるで・・・・ウチ・・・




じゃあの・・・・・・廣島ぁ・・・





『廣島 完結』


ご愛読ありがとうございました。



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