表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廣島  作者: 火村虎太郎
34/37

二代目廣島水沢組


「うぅ・・ぉ・・・っ・・」


悲痛・・そう感じる事の出来る大刀さんの押し殺した声・・


本当に娘のように可愛がってたんだろうなぁ・・

よくこの娘を殺そうとしたもんだ・・

その非情なる所がトップになる男なのだろうが・・


そしてこの事を大刀さんに言うべきか・・


「こんなぁ!生きたまま埋められたんじゃろうが!」大刀


大刀さんに言おうか悩んでいた所・・


そう・・ジュリは膝を抱えていた・・

体育座りのままで。


「・・・生きたままですね。」


殺された状態では、この姿勢のまま埋められるのは不可能・・


どれだけ怖かった事か・・

上から土がどんどん覆いかぶさってくるも逃げることもできず・・


「・・・大刀さんっ!」

「なんじゃ!?」大刀


遺体を掘り出したすぐ近くに土色とは別の色が見える・・

そうじゃないかなと思ったが・・


「・・・発射した形跡がありますね・・」

「ここでか!?」大刀


拳銃だ。ジュリと一緒に埋められていた物は。

多分だが・・


ワンチャン狙った・・

この穴の中から・・埋められてる最中に・・


「もう少し掘ってみます」

「頼む・・」大刀


多分だが・・


「ありました弾丸っです」


土に打ち込まれた弾丸の跡。

やはり穴の下から埋めている者を狙った・・


だが・・


「全弾撃って外れて観念したか・・」大刀

「・・・・・ここに僅かに血痕があります・・」


ここに立っていた・・

体のどこかに弾丸はかすった・・


「ふぅ・・その拳銃も埋めてくれ」大刀

「はい」


それは多分天野の組のガラス割ったやつじゃ・・

ジュリのボケが!捨てずにおってからに!

それから足が付くじゃろうが・・


だが・・最後のチャンスに使えた・・

そして少しだが犯人への痕跡を追える物になった。


殺す・・

いや、殺さねば。


ジュリを殺した・・そしてこの場所を知っている・・


「大刀さん・・全員疑った方がいいかもです・・」

「そうじゃな・・」大刀


誰じゃ・・

ワシの道を邪魔するやつは・・


「ジュリぃ・・・」大刀


お前が一番俺の傍におったんじゃのぅ・・

誰よりも信用できるのはお前じゃったか・・


「・・・いいですか?」

「うむ・・頼む」大刀


そういって大刀は一人で車に戻る。


このジュリを無下にこの山中に埋めるのは見るに堪えなかった・・

とにかく申し訳なく・・かなしく・・


そしてすべてが終わった頃には堂嶋から電話があり・・


「神戸が明日大丈夫かとの事ですが?」堂嶋

「・・・おう。対応せい」大刀


まず復帰した事と神戸から連絡が来ている事・・


「あと・・」大刀


水沢組探れ・・名簿も共黒会から取って来い。

正式な組員や役職のあるものは共黒会に名簿を出してるはずだ。


まず疑うべきは花元。

だがこいつにジュリを生きたまま埋めるほどの非情さがあるだろうか?

そうそう出来るもんじゃない・・


あと疑うべきは・・


「病院からジュリナも呼べぇ」大刀

「はいっ!分かりました」堂嶋


ジュリナ・・・


もしかしたら・・俺のジュリを殺せを実行したのかもしれん・・

死体を処理したいがどこかないかなど、

ジュリにうまい事取り入ってこの場所まで来て・・


そうなると純也は生きていた?

警察の張り付きで俺に連絡が出来なかったが、独断で実行した・・


だがジュリナもこのジュリを生きたまま埋めれるだろうか?


「・・・そうかなるほど・・」大刀


銃痕がある・・今なら・・

切れたような真新しい傷が・・


やるなら一気か?


すぐに市内に戻り・・


「大刀さんっ私、多分別件で張り付かれてる」ジュリナ

「そうじゃろうな・・」大刀


堂嶋に病院まで迎えに行かせ連れてきたジュリナ


「・・ちょっとジュリナと出てくる」大刀

「はいっお気をつけて」


真昼間からじゃけど、街中のホテルに車で入り・・


「久しぶりじゃの」大刀

「はい」ジュリナ


ジュリナを久しぶりに抱く・・


「あっ・・」


傷だらけのジュリナの体を舐めまわし・・


(違う・・違う・・これも違う・・)大刀


傷は古いものばかり・・

そして事が終わり・・


「ジュリ死んだぞ・・」大刀

「はぁ!!!!!!?」ジュリナ


どういう事・・ねぇ・・


「どうして!!」ジュリナ

「・・・・」大刀


ジュリナじゃない・・・

独断でジュリナがやったと思ったが違う・・


「うぁ・・・・ん・・・っ・・ぇっ」


ジュリナじゃないと確信できるほどの悲壮なる声で、

布団の中で大きな声で嗚咽交じりで鳴くジュリナがいた。


疑ってすまんジュリナ・・

いや・・この渦に巻き込んで・・


だがあと少しなんじゃ・・

完全にレールに乗るまでには・・


その頃、八丁にある水沢組では・・


「つぅ・・・」

「北島のカシラっ腕どうされました?」若衆


いや、ちょっとな・・


「新しい包帯持って来いや」若頭

「はいっ」


二代目廣島水沢組若頭『北島』


無名無経験の若造がいきなり組のナンバー2の若頭・・

ここには若い世代や、

他所の組織の破門者なども集まるやっかいな一家だ。

とうぜんヤクザを経験してきた若頭より年上世代からの不満はあった。


あんなガキが・・ヤクザのしきたり、礼儀も知らぬ素人・・


が、短期間だが見せつける圧倒的暴力と非情。街の評価も高い。

誰もが思うのは同じ街同じ世代で生まれなくて良かったと思えるほどだ。

こいつは偽物ではない完全なる虎。


「オヤジっ共黒会から名簿出せって来とります」北島

「うん。出そう。」花元


この北島を抜擢したのはもちろん組長である花元だ。


「すみません・・水沢の組長居られますか?」黒服


飲み屋の黒服だ。組には夜の街の住民も寄り添い始める。


「やはり『水沢』に今まで通り」黒服

「ありがとう」花元


みかじめ、そしてバックを水沢組に。

やはり今まで通りに『水沢』の名前を出す方が、

地元のカタギのお客には分かりやすい。


(ふ~・・)花元


なんとかうまく組も回っとる。

本当水沢の金看板作って残してくれた水沢さんには感謝じゃ。

二代目名乗って正解じゃった。

東京や各方面からも俺の全く知らない組織からお祝いの花やご祝儀も届いた。

一応俺のポジションは初代の企業舎弟だったが、

今のこの世界では暴対法で企業舎弟の方が多いから、

別に違和感なく二代目を継げたし、水沢さんからのお墨付きもあった。


『先代が酒の席で話しておりましたよ』


そう教えてくれた他団体の方


廣島の男はもうそんなにおらん。自分で言うのもなんじゃが、

ワシ(水沢)とあの花元ぐらいじゃろ。

あと若手でおるとしたら・・


北島かのぅ・・・ありゃちょっと危なっかし過ぎるが・・


その北島を若頭に迎えた若々しい一家。

ただ虎に手綱は巻けれない・・

北島は本物の虎だ。気に食わない物は徹底的に潰す。

仁義や常識などお構いなしに己の感情で動く。


だが毒を食らわば皿まで・・


腕に新しい包帯を巻きなおす北島に向かって・・


「名簿は本名で出すのか?」花元

「ええ」北島


動き出した廣島の反撃・・


「おいっ名簿にワシの本名出しとけ!」北島

「はいっ」若衆


廣島の爆弾、北島純也ってのぅ。

さぁ・・


震えて眠れや。大刀ぇ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ