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廣島  作者: 火村虎太郎
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共黒会 紙江田組 若衆 ノブオ


「粉もん屋でも、つけ麺屋からでもカスリ取ってこいや!」


そう言ってご機嫌斜めに組事務所から出ていく組長。

お好み焼きからもみかじめ取れだぁ?

そんなもん速攻で暴対法の餌食じゃねぇか!


「ほんっと・・」若衆


たかだが2万のカスリ横取りされた位で・・


「器が小さいというか・・」


最近組の金がねぇのは、

自分が今どきの経済ヤクザ気取って投資で失敗したからだろうが。

俺の先見る目で組デカくしただとかカタリ入れてよ・・


そりゃ紙屋町に事務所と縄張り構えてるってだけで異端と言うか・・


紙屋町は広島の金融・ビジネスの中心でかつ商業地だ。

飲食店は多々はあれど、ピンク色系の店は皆無だ。


紙江田は経済ヤクザ・・広島唯一の・・

カタギにも同業者にもそう知れ渡っている紙江田組。

武闘で知れた共黒会の歴史がさらに紙江田を異端に輝やかせている。


紙江田組の得意分野は、

企業や店舗に、企業や企業舎弟を仲介することで得る中抜き・・

人材派遣や、企業が使うタクシーや、お昼の配達弁当・・

まぁ、これもいわば恐喝、みかじめの類なのだが。

だが・・


「最近のやってる事はクソオールドスタイルのヤクザじゃねぇか!」


誰がリスク背負って、集金と薬捌いてると思ってんだよ・・


「あんたの無駄使いのせいで『暴力団』までしてんだぞ!」


暴力団=古臭いヤクザ みかじめ・薬・恐喝等・・


「まぁ『ノブオ』気にするな」大刀

「いや・・かしらぁ・・」ノブオ


舎弟はノブオって・・イメージだからって、

ノブオって呼ぶの止めてくれないっすか・・タカシっす。


「まぁでも・・」大刀


悪くない・・暴力団も・・


「・・・粉もん屋の件、ジェイに動かせろ」大刀

「マジですか!?頭ぁ」ノブオ


お好み焼きにみかじめなんて取りに行ったら、

速攻通報されて終わりじゃないのかな?


大刀のカシラも焦ってるのかな?

それともやっぱ経済ヤクザって言われるのが嫌なのかな?


「共黒会ももうすぐ動きそうだし・・」ノブオ


誰もが薄々感じてるのは現会長の引退は近い・・

すんなり行けば、

流川に縄張りを持つ共黒会若頭『流黒組』組長だろう・・


その流黒組若頭とウチの若頭は・・


「不良少年時代からのライバル・・」ノブオ


今の共黒会内でも・・。


「ノブオっ何やっちょるんじゃ!はようせいや!」大刀

「えっ!頭も行くんですか!?」ノブオ


ジェイフォージェイに会いに・・


電話でガキ共を奴らのたまり場に呼び出して・・


(うわぁヤベぇ・・大刀さんまで来てるぜ・・)

(マジか・・ヤキかのう俺等・・)


そしてノブオが開口一番に・・


「何やっちょったんじゃ!

 大刀のカシラに恥かかせおって!」ノブオ


「すいませんでした!」


紙屋町ジェイフォージェイ・・


このチームが広島で一番目立っている・・


「お前らシノギ言うのはのぉ!」

「はいっすいませんっ!」


真昼間に響く大声・・


「ねぇ・・あれヤクザよね・・」

「恐ぇ・・あの不良チームもやべーんだろうな・・」

「紙屋町ジェイフォージェイって言うんだって・・」

「聞いたことあるわ。あれがそうかぁ」


「並べぇこらぁ!」ノブオ

「はいっ!!」


白昼の緊張感・・

想像できるのは、もうすぐ側にあるであろう暴力に血・・


だが、それとは全く空気の違う男が・・


「・・・女の子じゃのぅ・・」大刀


※竹原ピストル「女の子」


ガキ共を叱りつけるのをよそ眼に、

大刀は原爆ドームを眺め、寂しそうな声を出す。


異端だ・・

この原爆ドームの側に居る不良達は・・

だから目立つ。真面目な一般人にも・・外部からの目にも・・


故に勝手に担ぎ上げられる。

あれが広島ナンバー1チームだと・・


そしてまだオフィスが賑わうこの時間この場所に・・


「ウォン!!」

「すいませんっ!遅れましたぁ!」


「遅ぇぞタコ!」ノブオ


族車仕様の単車が登場・・

まだサラリーマンが慌ただしく行きかう平日のこの場所に。


さらにそれが・・


「女の子かよ!」

「すげえコントラストだな」


行きかうサラリーマンの目も立ち止まる・・

これがジェイフォージェイだ・・


「・・・・・・ジュリ、ちょっと来い。」大刀

「あっ!はいっ!大刀さんお疲れ様です!」ジュリ


これが紙屋町ジェイフォージェイ特攻隊長ジュリ。

ジェイフォージェイの広報担当であり、マスコット的存在。


「・・・・・・・・・。」大刀

「はいっ!はいっ!」ジュリ


少し離れたとこに居る大刀とジュリの会話は、

ジュリの大きな返事の声だけ聞こえてくる。


「でもノブオさんっ俺らも抗争が始まって・・」

「ノブオじゃねぇって言ってんだろうが。」


まぁそりゃ自由にやらせてぇよ。一度限りの青春だしな。

ジェイが居るからウチの売り上げも上がってる訳だし。


「そのっ、縦文字復活させてもらえるらしくて。」

「ええ。特攻服も」


「なるほど・・」ノブオ


消えた特攻服かぁ・・

俺も先輩達に憧れて憧れて・・


「胡子講かぁ懐かしいな」ノブオ


特攻服背負って機動隊とヤリあったなぁ・・


「めちゃかっこよかったっす。」

「ユーチューブにもアップされてるっすよ」

「ノブオさんあれに参加したんすよね!?」


広島のガキにこのニンジンぶら下げられたら熱くなるわ・・


「だから最低限は紙屋町に残しますので!」

「お願いします絶対勝ちますんで!」

「俺も派手に名前売れれば年小でも構わないっす」


えっ!?もしかして・・


「お前等が勝てば、お前等の縄張りも広くなるの?」ノブオ


いや、ちょっと待てよ、これって・・


「まぁ・・潰せば・・」

「そうなるかと・・」

「やっぱ八丁はちょっとでも欲しいよな」


えっ・・これって・・

・・・・代理戦争なんじゃ?


これ・・特攻服うんぬんもあるだろうけど・・


「ジュリ頼むぞ・・」大刀

「はいっ!」ジュリ


煽られて・・煽られて・・


クソガキ共・・

行くとこまで行くぞ・・


「あっ!頭ぁ!待ってくださいよ!」ノブオ

「はよこんかい!帰るぞ。」大刀



そう・・。始まる・・・。



いつしか、最初の意味さえも忘れて・・



血を血で洗えぬ大人達の為に、

ガキ共が血を血で洗う戦いが・・



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