損切は早く・・
「大刀ぇ!動くなよ!」刑事
朝早くから物々しく大刀の事務所に盾を持った機動隊が並び始める。
「バン!!」
大刀が机を叩き立ち上がり
「くそがぁ!」大刀
「大刀ぇ!熱うなるな!」刑事
熱くなる大刀を押さえようとする刑事
「そりゃ破門した言うても一番の子分・・」刑事
殺されたなら熱くなるのは分かる。
「・・・時期見て復縁さすつもりじゃったんじゃろ」刑事
「・・・・・・・・・・」大刀
まぁそうじゃろうな。大した事での破門じゃないしの・・
「・・・偽装破門で水沢狙っとったんじゃろうが?」刑事
「・・・・・・・・」大刀
「・・刑事さんっそろそろいいですか」堂島
目を閉じて何も答えない大刀に堂島が答える
ええか、絶対・・
「水沢がやったって憶測で動くなよ!」刑事
「堂島ぁ!お前も走るなよ!」刑事
くく・・走るわけねーだろ。
本当気持ちいいくらいハマるな。
この話は当然幹部会に出席するメンバーや共黒会にも早々に伝わる
『はぁ!?どういうことなら!』水沢
『今各方面に確認中です!』若衆
『なっ!下手したらこっちまで疑われるぞ!』天野
『くそが!またもしかしたら幹部連に銭出さんと行けんぞ!!』壬生
共黒会の内輪揉めはご法度だ
前回の疑惑の時にもそれぞれが金や指を落とした・・
「オヤジっそろそろ・・」堂島
「そうじゃの」大刀
大刀は幹部会に向け事務所を出発。
「大刀ぇ、2台付いて行くぞ」刑事
「ご迷惑おかけします」大刀
警察のパトカーと覆面が付いて行くことに。
すでに共黒会にも機動隊が盾持って・・
「なんじゃ!?本家にチャカなんか持てくるかい!」天野
「ええからボディーチェックだけさせえや」刑事
物々しい警備
そしてすべてのメンバーが揃い・・
「ご苦労様です!」
「ふむ・・」会長
最後に会長が席に。
普段は末席に座る、大刀、天野、壬生、水沢だが、
この4人は今日は端から最善列に。
今日はいろいろ議題が多いが・・
鎖を買うのか・・
偽装破門が浮いただ・・
なんや盃の了承取りたいだ・・
ワシも色々言いたいこともあるが・・
「お前ら、何から進めたい?」会長
「では私めから・・」大刀
すぐに声を出したのは大刀。
そりゃ幹部連から見ればすぐに分かる答えが目の前に・・
「2億です。どうぞお納めください」
4人の座る前に大金が積まれてるのは大刀だけ・・
「ふむ・・」会長
ええじゃろ。まずは大刀の独立、執行部入りを認める。
「・・・この一つだけ一千万の束(帯)になってないのはなんじゃ?」
他は全部ブロックになってるのだが・・
「誠意です。」大刀
この金は右から左に用意できた金じゃない・・
最後の最後までかき集めて作った命ある金・・
「ふむ。」会長
嫌いじゃない。大刀のこういう所も。
この男は所作もよく理解している。
今、この正座のたたずまいも良く、弁も立ち外交にも優れている。
身だしなみもいい・・
天野など、一応選んだであろうシャツにネクタイだが、
正座して少し短くなるズボンに見えるくるぶし・・
大事な時と場所でショートソックス・・
ヤクザに必要なのは、やはり女だと理解させられる。
女っけのないヤクザはどうしても華がない。
(ふふ・・)大刀
俺だけ。
水沢に天野、壬生に鎖を買う金は無し。
だが・・
(5千万ってとこか・・・)大刀
水沢の目の前に置かれているアタッシュケース・・
多分金・・だが2億には到底届かない大きさ・・
そして次の議題・・
「大刀の子分が浮いた・・」会長
言いたいことや、反論があるなら答えろ。
皆の大体の考えは水沢を狙ったが返り討ち・・
この辺が妥当な考えだろう。
「では・・」水沢
「・・・・・」大刀
軽く大刀が水沢に冷ややかな視線を送る。
「当方は全く・・」水沢
無関係。逆にこちらが探していた・・
「水沢ぁ・・」本家幹部
「はい」水沢
じゃが、ここ何日か・・
「おどれはどこに行っとったんじゃ?」本家幹部
ワレ、広島におらんやったじゃないか・・
それは逆にアリバイ作りじゃないのか?
「いえ、それは・・」水沢
確かに逆に怪しく感じられるアリバイだ。
「・・・・・・・」水沢
「どうした水沢?」会長
今、ここで言うべきか・・・
沖縄は俺が唯一金じゃなく執行部入りができる武器だ。
沖縄のメンツを保つためにもかならず俺が執行部入りが出来る。
沖縄の次の次を狙える人物と広島の人間が兄弟になるなら、
執行部連中にも評価は高く、当然同格くらいの役職は貰える。
まぁ、大刀も狙ってるのは若頭補佐だ。
執行部に入ってすぐ若頭補佐ならもう上出来だ。
だが・・
「・・・っ・・」大刀
「・・・・・」水沢
この大刀の時折唇を噛みしめる仕草・・
きっと・・
必死に笑いを堪えている・・・
勝ちしかないのか?
まだ何か武器を持ってる・・・
「・・・・・・すぅ~」水沢
水沢は落ち着くように息吐き・・・
脳内で猛烈なスピードで近々の出来事を整理、判断、予想・・
「・・・・何を真実を言おうとも・・」水沢
疑われる。そしてこの嫌疑、遺恨はずっと続くであろう事・・
「私は・・」水沢
ええんか?大刀の武器を見んで?俺の武器を出さんで?
これは賭けじゃ・・・いや・・自分の直観が生き残れと動かしている
「5000万です・・」水沢
これが今俺が用意できる目一杯の額・・
そして・・
「おいっ!ドス持って来い!」水沢
「はっ、はい!」当番若衆
「ゴリ!!」
「・・・つぅ・・」水沢
断指・・
これで・・
「円満なる共黒会からの脱退をよろしくお願いします!」水沢
急な水沢の脱退宣言。
求めるのは破門状、絶縁所払いなど無しの脱退・・
「それは水沢よ・・」会長
ここにいる幹部連もそれが一番の納めどころだとは分かっておるが・・
それは広島に残って一本独鈷か?それとも・・・
「失礼します!」
「・・・ふっ」大刀
大刀が安心したかのように笑った・・
「私、沖縄の若頭補佐をやらせていただいてますっ」
「・・兄弟ぃ・・」水沢
ここでたまらず水沢の兄弟分が現れ・・
この流れ・・兄弟分の不利・・
そしてこの部屋の外に居たから先に分かった事実・・
「ほう・・」幹部
「沖縄か・・」幹部
そう・・
「すでに私と水沢とは・・」
5分の兄弟分。そしてこの状況・・
「水沢の沖縄入りをお願いしたく!」
「ふむ・・」会長
なるほど・・
幹部達も納得できるじゃろう。
これは逆に広島が沖縄と付き合いできるっちゅーことじゃ。
少しざわついた後・・
賛成反対の挙手を取って・・
「一番の落としどころじゃろ」幹部
「ふむ。沖縄の会長にもよろしくお願いします」幹部
これが一番いい。
水沢と大刀の両方を広島に置いておくには少々危険すぎる。
満場一致で水沢の脱退、移籍許可。
「ふむ・・」会長
じゃあこれで・・
ノブオの件は水に流そう。
誰がやった、やってないはもう無しじゃ。
「つぅ・・」水沢
「水沢ぁ席外すか?」会長
断指の痛みに耐えてる水沢に病院に行くか?と。
「いえっ・・大丈夫です。」水沢
あと少し・・見届けよう・・
俺の負けを・・・
すまん・・廣島・・・
色が変わる・・・広島に・・