万全を期して・・
まだノブオは捕まらない。捕まらないというか・・
「水沢、本当に何かないか?」刑事
「ノブオとかじゃないんですか?大刀の所の」水沢
水沢の組に聞き込みにやってきている広島県警。
ずいぶん前にジュリナが撃たれた件だ。
「バカタレっジュリナと大刀は、デキとるじゃろうが」刑事
「そうなんですかね・・」水沢
的外れだ。所詮仕事の刑事の考えなんて。マジでアホ。
大刀とジュリナは仲良く繋がっているので・・
「ジュリナが邪魔なんは、お前か天野くらいじゃろうが」警部
「カタギにチャカ向けるヤクザなんて居ませんよ・・」水沢
これほど割に合わない懲役はない。
「ま、頭のええお前じゃないとは思っとるが」警部
一応疑っとかんとの・・『一応』の・・
「・・・おい、『お車』用意できたか?」水沢
「はいっこちらで・・」若衆
お車、いわゆる車代だ。これは謝礼とも賄賂とも違う
「おう。じゃあ何か分かったら俺に一番に教えろよ」警部
「ご苦労様です」若衆
そう・・仕事ついでに、ねぶりに来ただけだ。ヤクザの金を。
安い演技で、タダで甘い汁が吸えるなら吸いに来る・・
「まぁあんならも昔の廣島に取りつかれた亡霊じゃ」水沢
「ですね」若衆
今どきの若い刑事だが、
昔の人達の時代、やり方に憧れをも持ってるというか・・
しかし・・
意外に今の小僧達ってのは・・
「仁義があるんですかね?」若衆
確実にノブオが撃ったと知ってる不良連中が誰も口を割らない。
知らない、見てないの一点張り。
「ジュリナは大刀を怖がってとは思いますが・・」若衆
他の小僧達も恐れてるのかな?チクれば狙われるかもって・・
「本当に警戒してください」若衆
「だな・・」水沢
今、一番の脅威はノブオだ。
きっと大刀が飛ばした偽装破門
「そろそろか・・」水沢
「はい出発しましょう」若衆
今日、金の問題はこれで解決するだろう・・
『♪18時50分発・・・』
心地よいアナウンスの流れる特別待合室で・・
「お久しぶりです水沢さん」花元
「おう」水沢
水沢の所へ花元が現れる。
「空港っすか?」花元
「一番安全じゃろうが」水沢
水沢が花元と会うのに指定した場所は空港だ。
空港の出発ロビーの個室の待合室。これほど安全な場所はない。
「あの・・自分は水沢さんに・・」花元
「ありがとう」水沢
無粋な会話など不要。呼んだ理由に呼ばれた理由は解ってる事。
この言葉だけでいい。後は多少の日時決め。
「ジュリナに届けさせます」花元
これもしっかりとアピール。ジュリナは水沢派だと。
2億は次の幹部会の日の前日の夜に・・
「廣島なんか?」水沢
「あはは廣島ですよ。」花元
自分は。
ふふ・・
あはは・・
やっぱりこの人じゃ。
何かええ。男から見ても。
多少の小話をして・・
「じゃあ自分はそろそろ・・」花元
「おう」水沢
「ほかのお客さんの目もあるのでお見送りは出来ませんが。」若衆
わずかな時間だったが有意義だった時間。
「すいません。急用が出来て乗れなくなりました」花元
丁寧に申し訳なさそうに引き返す。
「・・・バズるな・・」花元
搭乗ゲート逆行ぉーーーって。
いや、さすがにこれを動画公開すると炎上か・・
それにもし水沢さんに会ったことがバレてもな・・・
少々トリッキーだったが安全に終わった。
ええ買い物したわ。水沢さんに2億の恩を売れるなんて。
けど・・
「・・・乗るんじゃろうか?」花元
さすがに若い衆と2人で搭乗ゲート逆行はせんかな?
自分もさっきしたから目立つじゃろうし・・
でも時期が時期やし・・
『ゴーーーーーーーー・・・・』
「・・・行くんや・・沖縄・・このクソ忙しいのに」花元
ちょっと気になって待ってしまった飛行機の出発時刻を。
「ヤクザもええなぁ・・」花元
何かそんな気もしてくるほど器の大きい人だ水沢さんは。
だが・・
「大刀さんもヤバイ・・」花元
少々別格・・この人は。
何か毛色が違う。感じは水沢さんに似てるが・・
「全く読めない・・」花元
本当に恐い・・この人は。
きっと天才だ。人を操る、騙す事の。
負けるイメージが全然沸いてこない・・
大刀・堂島・ジュリ・破門されたノブオさん、関東のバックアップ・・
このピースは強力で確かに広島を取れそうだ・・
う~ん・・
やっぱ不良を押さえたのが大きいな・・
意外にジュリがキーマンのような・・・
だけど俺の見た感じだと・・
「・・・飛ぶぞ・・あの女・・」花元