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廣島  作者: 火村虎太郎
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共黒会 紙江田組 若頭 大刀

ここ広島の闇社会は他の都市とは大きく異なる。


共黒会・・

これが広島に有る唯一のヤクザ組織だ。

故に不良グループや半グレなども、

必然的に共黒会に関わりを持つようになる。


各地区に二次団体の組はあれど、

街の黒い金のすべては上部団体の共黒会へと吸い上げられる。


普通繁華街は幾つものヤクザ組織が群雄割拠するものが常だ。

東京の歌舞伎町を例にしても、

いくつの大手ヤクザ組織が入り込んでいるだろうか?

名古屋系・・神戸系・・

住・・稲・・極・・松・・九州系・・

中国・・東南アジア・・アフリカ・・

さらに上部団体を持たない半グレ・・個人ブローカー


複雑になった利権の奪い合いに取りこぼしも多く、

組織売上の大きなウエイトを占める薬物売買にしても、

最大手組織でもせいぜい全体の2割取れればいい方だろう・・


だがここ広島ではすべての金は共黒会だ。

絶対的な集金力を誇る共黒会・・・


そして当然組織が一つしかないのだから、

共黒会同士の抗争もご法度・・いや、起こせる訳がない。

この街で共黒会の看板なくして生きていけるアウトローなど居ない。



大刀おおたてぇえ!どうなってんだ!」

「はっ。」大刀


共黒会 紙江田組 若頭 大刀 40歳

紙屋町に事務所を構える共黒会有力2次団体に、

若くしてナンバー2に就任した男。


「おめぇ八丁堀のガキにカスリ持ってかれちょるじゃないか!」

「申し訳ございません・・」大刀


カスリ・・みかじめ料の事だ。


「ジェイなんちゃらってのは何やってんだ!」江田


共黒会 若頭補佐 紙江田組かみえだ組長 江田56歳


この組長江田に怒鳴られる大刀の理由は・・


「あのっオヤジっガキ共が抗争始めたみたいで」若衆

「ああ!?」


今日突発で出た紙屋町のガード(セキュリティー)の仕事を、

八丁堀の不良グループが回収(仕事)したのだ。


なぜガキが抗争を始めただけでヤクザのカスリが動くのか・・


「ジェイには紙屋町を出るなと伝えておきます・・」大刀

「何の為の縄張りじゃ!ボケが!」


繁華街でのヤクザの大きな収入は、

ガード(みかじめ料・セキュリティー)と

薬物売買だ。


ガードには種類があって、

店が定期的にみかじめを払って、

事が起こった時だけ来てもらうのと、

クラブや、飲み屋の営業中に常駐するセキュリティー。

これはよく見かけるクラブのセキュリティーや、

飲み屋の黒服、客引きがそれだ。

それをシノギにして生活しているのが不良グループだ。


そしてこの繁華街には5つの不良チームがあり・・


「ほんま邪魔じゃのぅ!八丁も!」


そしてヤクザの二次団体も5つ・・

八丁堀に2つ。流川に2つ。紙屋町に1つ。

すべてのヤクザの組に不良グループが一ついるのだ。


そして今日八丁堀のガキに持っていかれた理由は、

紙屋町の不良グループが、

すぐに店に駆け付けられなかった事が原因だ・・


「店からの苦情(依頼)は、一元で共黒会ですので・・」大刀


これが広島のいい所で変わった所だ・・

どこがどうカスリを取ろうと結局最終は共黒会なのだ。


ただし・・


「八丁に中抜き持ってかれちょるじゃろうが!」


簡単に説明するなら、月々のみかじめ料とは別に、

事があった時(喧嘩や泥酔客の処理)の出張費は、

お店からは5万。

それを二次団体が2万。実働した不良グループに1万。

残りの2万が共黒会だ。


これは薬物売買などでも同じ割合だ。


そして共黒会の方針でシノギは縄張り組織優先だが、

縄張りの定義はゆるい・・

基本の月々のみかじめ料はその縄張りの組に入るが、

末端の組員ではない者が実働した分には、

どこが抜いてもいいシステム。


たとえば八丁での薬の売買は『八広組』か『八王組』だけだが、

売人不在で紙屋町の組織の者が代理で捌いてもおとがめなし。


共黒会からしたら取りこぼすくらいなら、

別の二次団体に吸い上げてもらえばいいだけの事なのだ。


「まぁそれが共黒会の強みでもありますので・・」大刀


絶対的な集金力・・

故にそのトップの座は誰もが欲しい地位・・

依頼を一元に取り仕切る共黒会若頭の地位も・・


結局依頼を振り分けるのは共黒会若頭・・

もっと突き詰めれば・・


「今日の本部当番は八王組でしたので・・」

「ちっ!」


事に対しては圧倒的スピードの処理能力を有する広島。

本部に直接かかる依頼を二次団体を通さずに、

直接依頼場所近くの不良グループへ連絡。


昨今の暴対法によって生まれたシステムだ。

直接動けないヤクザは不良グループを使わざるをえない状況。


だが若頭、当番の裁量・・

ひいきグループへの依頼は当然多くはなる。


それでも・・


「わりゃ!ただでさえウチはカスリが少ないんじゃぞ!」江田


「バチーン!!!」

「あっ兄貴!」


つぅ・・・


「以後気を付けます・・」大刀

「銭作ってくるのが子の仕事じゃろうが!ボンクラが!」


確かに紙屋町は八丁や流川に比べると地場のシノギが小さい。

全体で100と見たら、

流川が75。八丁が20。

紙屋町はわずか5だ。


異端、異質だ・・

だからいい・・

だから輝くのだ・・ジェイも。

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