久しぶりに広島に響いたご法度・・
夜の流川・・
「天野じゃあ!」
「いっ・・いらっしゃいませっどーぞ。」黒服
ちっ・・ランボルギーニ見て入って来やがった・・
このくそドヤクザが・・
オタクが来ると店の売り上げが落ちるんだよ・・
「ジュリナがお前みたいなのに抱かせるかって!」黒服
「・・おい・・聞こえたら埋められるぞ・・」黒服
流川での評判はよくない天野。
そりゃ地元ヤクザの有名人だからペコペコはするけどよぉ・・
「今どき昭和の匂いさせんなよ」黒服
「おい・・止めろってもう。」黒服
なにが『廣島』ヤクザじゃ・・
時代は・・
「大刀さんみたいな『広島』ヤクザが生き残るじゃろ」黒服
「まぁ、シュっとしてるよな」黒服
ええのぅジェイフォージェイ。バックが紙屋町で・・
みかじめもそんなに取られんらしいしな。
ふぅ・・まぁ機嫌よう帰ってもらおうか・・
「『ひろぉしまぁ』には。」黒服
「ははは!やっぱ次は『ひろしまっ』じゃ」黒服
なんとなくニュアンスで呼び分けてる廣島と広島。
そして今夜もいつもの夜で終わるはずだった・・
少し厄介者の天野さんが来たくらいで、
いつも通り少しだけ慌ただしく響く流川の街音で・・
「ジュリナぁ!わりゃ抗争はどうなっちょるんじゃ!」天野
「・・・・いや、まぁまだ散発的ですが・・」ジュリナ
なんじゃあ、まだチンタラしとんのか。
「はよジェイ言うの潰したらんかいっ!」天野
「お仕事がありますので出るに出れない状況でして」ジュリナ
黒姫の主なメンバーは流川でガードの黒服だ。
全員が一気に出動など出来る訳がない。
唯一狙えそうなのは夜の街の明かりが薄くなる日曜日だが・・
「日曜日行ったらええじゃろうが!」天野
「いえ・・日曜の夜は・・」ジュリナ
日曜日の夜は・・
「ちっ!・・・『売』か。」天野
「ええ。流川を留守にすると八丁に取られますので・・」ジュリナ
なぜだか薬の売買が多いのが日曜日や祭日の夜だ。
これは買う側が人込みの目を避ける為からなのか、
平日や休日前は単純にやる事が多いからなのかはわからない。
「・・・売かぁ・・」天野
「ええ・・」ジュリナ
天野もさすがにこれは落とせない。
連合のハーバードに流川の売を任せてもいいが、
そうすれば天野の組に取り分は無い。
この天野の浮かない表情を見て、自分の熱が冷めていく。
結局、己の利権の為・・
そりゃ勝てばウチ等も利権も増えるし名前も残せるけど・・
浮かない天野とジュリナ・・
そこに急に入口から大きな声が・・
「あっ天野のカシラっ!!」若衆
「あああ!なんじゃ!」天野
天野の組の若い衆が焦った感じで走りこんで・・
「ガラスに撃ち込まれました!事務所の!」
「ああ!なんじゃと!」
いつぶりだろうか?この広島に拳銃の音が響いたのは?
天野の組事務所に拳銃が撃ち込まれる。
「そっ!それで、すぐに捕まえたんですが!」
「おお!ようやった!」
よっしゃ!すぐ事務所行くぞ!どこのどいつじゃ!
八丁か!それとも・・・
「そっ・・それが!」
「なんじゃ!?言うてみい!」
若衆と天野が、ごにょごにょと耳打ちで・・
「・・・・・・・・・・」ジュリナ
「・・・・警察には石投げられた言うとけ」天野
「はっはい!」若衆
何?誰が撃ち込んだの?
てか撃ち込むほど始まってもないはず大人の方は。
それに広島は身内同士の抗争はご法度のはず。
いや・・考えを変えよう・・
この天野さんは誰に撃ち込まれたら得をする?
「・・・ジュリナぁ」天野
「・・はい。」ジュリナ
来た・・冷静で良かった・・
絶対に演技・・天野さんの・・
「バチーーン!!」
「いっ!たぁ・・」ジュリナ
急に天野に頭を叩かれ・・
「おどれんとこのガキじゃ!!ボケ!」天野
「えっ!!?」ジュリナ
ちっ・・・
しくじったか・・
もっと遠い関係者使えよバカ・・
こっちは渾身の演技してるのによぅ。
「わりゃどういうつもりじゃ!」天野
「いえっ全く意味が!」ジュリナ
八丁のせいにしたかったんよ・・
もしくはツーエス。
「んっ!?おお天野どうした?」大刀
「あわっ!大刀さんいらっしゃいませ」黒服
「ちっ!なんじゃい大刀か!」天野
はいっいいタイミング。ちょっとでも分かりやすすぎかな?
「ほう、ジュリナのとこのガキに?」大刀
「われが糸ひいとるんか!?」天野
何の利点があるんじゃ、ウチがお前の組のガラス割って・・
この共黒会の縛りの中で・・
ま、唯一利点があるとしたら、八丁のせいにして、
天野と八丁で謹慎でも食らってお休み頂けたら楽じゃけどのぅ・・
「ジュリナとりあえず飲み物頂ける?」大刀
「あっすいませんっすぐに!」ジュリナ
てかこのバカ勝手にしくじりよってからに。
もしワシが裏で糸引いとるのがバレたらどないするんじゃ!?
ワシの何もかもを失うぞ。
だがこれで終わらない・・
「大刀のカシラーっ!」ノブオ
「なんじゃどうした?」大刀
今度はノブオがジュリナの店に走りこんで来て・・
「紙屋町に拳銃撃ち込まれました!!!!」ノブオ
「えっ!!!」ジュリナ
今度は大刀の事務所に拳銃が撃ち込まれる。
「・・・・・・・・・」大刀
「おっ、俺じゃないぞ!!」天野
天野と目が合う大刀
なんだ?ヤバイぞこれ・・
これじゃあウチと大刀のとこがお互いに撃ち込んだように見られる。
共黒会から共に謹慎させられるぞ・・
誰だ?普通に考えて得するのは・・
八丁か?
いや、八丁しかない。
「わしゃ帰るぞ!
ウチに撃ち込んだガキに誰からの指示か聞きだしちゃる」天野
「バカっ!帰るな天野!ここに居ろ!」大刀
なんでじゃ!こっちは急ぎじゃし、
お前もすぐに事務所行かんといけんじゃろうが。
だいたい一緒に酒なんて飲めるか!
「いいから居ろ!」大刀
「私もそう思います」ジュリナ
「ああ!?」天野
なんでじゃ?
だがそうこうしてたら・・
『ピピピ・・』
大刀の携帯に着信・・
「・・・本家からじゃ」大刀
「うっ・・」天野
そうやった・・ここで二人で居れば・・
「はいっ大刀です。・・ええ・・ええ、
ですが今天野と流川で一緒に飲んでる所でして・・・」大刀
そう。ウチと大刀が撃ち合ったわけじゃない。
もし可能性があるなら・・
「・・・八丁かと・・」大刀
『ブルっ・・』
「なんじゃあジュリナ震えてからに」天野
「いや・・こ・・抗争が始まるのかと・・」ジュリナ
寒気が止まらない・・この大刀さんのすべてに・・
ものすごいスピードで私のミスを回収し本線に戻した・・
消えそうになった火に、ガソリンぶちまけた・・
そのころ紙屋町の片隅では・・
「はよ拳銃貸しんさいや」ジュリ
「ジュリ頼むぞ」
「廿日市位まで行って海投げえよ!」
もう分けわからんけど、
大刀さんの言うことじゃけ聞かんといけんじゃろ。
事務所に撃ち込んですぐ拳銃海に捨ててこいって・・。
単車で15分ほどぶっ飛ばし、橋の上で・・
「拳銃ってこんなんなんじゃ・・」ジュリ
拳銃を手に持つジュリ。
「・・・・・・弾はまだ余っとる・・」ジュリ
こんなので人って死ぬんじゃ・・
ウチでも・・・撃てそうや・・
「・・・・・・・・・・・・」ジュリ
「キュルキュキュっ・・ウォン!」
夜中の海の近くの単車音が好きだ。
少しこもったような重い音・・
乾いた音が反射する街中の音とは違い、
何かやさしさがあるような・・
「ウチはジェイフォージェイでも好きじゃけどな」ジュリ
何かかっこえーし。横文字でも
ジェイって言われるのも何かかっこえーし。
ジェイの縦文字って何なんじゃろ?
昔暴走族しとった人に聞けばすぐ分かるんじゃけどなぁ
ジェイフォージェイ・・
でも自分達の力で答えを知りたい・・自分達の力で・・
単車乗って悪ぶって、痛いけど喧嘩もして。
女じゃけど憧れたしかっこええと思った廣島の不良の先輩達に。
じゃけぇ後悔はしたくない・・・たった一度の人生・・
「ウォン!」
「なんじゃ!ジェイが八丁来たぞぉ!」
「ジェイフォージェイ参上だ!喧嘩上等ぉ!」ジュリ
これが青春じゃけぇ・・廣島の。