絶対に背負いたい文字
異端、異質に輝く・・・
悪党の風で・・
さぁ・・動き出せ・・廣島・・
週末の夜の街・・
数年前と変わらぬ慌ただしさだがもう奴らは居ない。
最後の暴走族解散・・数年前に流れたニュースだ。
「よっしゃ流川まで歩いていこうか」
「そうじゃの歩いても10分くらいか。」
何となく分かる昔悪かったんだぞオーラを放つ二人の中年。
商業地区と繁華街の入り混じった紙屋町で飲み始め
ほろ酔い加減で歓楽街流川へ向かう道中の繁華街八丁堀で・・
「ねー、これすごくねー」
「ぎゃははっ超だせぇ」
恐いものをまだ知らぬ若者たちが、
路上に座り込み、スマホに夢中。
そして人目も気にせず大声で喋る光景を見る中年は・・
「・・最近のゆとり教育はよぉ~。八丁じゃぞここは!」
「ほんとじゃのっなんちゅう無防備さじゃ」
週末の夜ってのは、ワクワクしてヒリヒリして、
そして誰もが本当は臆病でふるえてた・・
「まぁ時代なんかの・・」
「まぁ、流川行けば、もうちーとピリっとするがの。」
人生に少し余裕が出て、
流川の飲み屋街を闊歩しだす30~40代のやんちゃグレは、
ちょうどあの激動の世代の人間だ。
「ワシ等のころは、毎日殺し合いの喧嘩じゃったけどのぅ」
「とくに週末の八丁は本当緊張の夜やったよの」
特攻服は、もうしばらく見かけなくなった・・
最近の『あの祭り』の夜も、
せいぜいもどきの黒い服来た単車が単騎でつっこんで来る位。
ここから少しだけ歩けば広島最大の飲み屋街流川だ。
ここには当然あのヤクザ組織が深く関与する。
そして消えたと言っても不良・半グレはいつの時代も存在する。
流川にたむろする不良らしき集団を見つけ・・
「・・ほう。流川にもガキ(不良チーム)がおるんじゃの」
「ゆうてもそのほとんどがチーマーみたいなのじゃね」
そう。そのすべてがチームを組んでても特攻服の暴走族ではない。
かっこよさを優先したギャング系ファッションがほとんどだ。
消えた暴走族・・特攻服・・チームの旗・・タオル覆面・・
広島の消えた悪しき伝統・・
だが、このゆとり世代には狙う者も多い・・
「あのっ!〇〇さんっすよね!」
「おっ!俺たち憧れてて!」
その不良少年が過去の不良有名人に群がり・・
「俺たち『流川黒心連合』の者なんすけど!」
飲み屋街の不良は当然ながら闇の仕事の末端員だ。
いわばヤクザ予備軍。
「自分等〇〇組にもお世話になってますっ」
とはいっても、
この広島にあるチームのすべてがヤクザには世話になってる。
なにせこの広島市には組の上部団体は〇〇会しかないのだから・・
「あのっ!復活させてもらえませんか!?」
復活を・・
なんでもいい・・暴走族を・・いや、特攻服を・・
消えたのじゃない・・
嫌ってるのじゃない・・
「封印じゃ言うとるじゃろうが!」
「それくらいの『ゆとり』じゃ恥なだけじゃ!」
全国の不良に恥なだけ・・
今までの伝統さえ汚すほどの最近の不良の質の悪さ。
恥を晒すだけだ。あの広島も今はこんなものかと。
数年前に封印されたのだ。暴走族と特攻服と・・
「黒心連合もダメじゃぞ!」
「辞めえっその連合っゆうの。グループじゃグループ。」
縦書き(漢字表記)チーム名も封印。
「大した事ない不良が何が復活じゃあ」
まぁ、流川の不良は、ちーと筋食うとるから、
他より、マシいやぁマシじゃけど・・
※(筋食うとる=ヤクザ者。ちょっとヤクザ者)
「せめて・・」
この言葉で、おかしな抗争が始まろうとしている・・
「ほんならまずてっぺん引きずり落とさんかい!」
「おお。あれじゃあれ・・その・・」
なんじゃったかいの?今一番売れとる若手・・
最近よく聞く不良グループ・・
この時代の広島のトップチーム・・
「・・・・・・紙屋町っすか・・」若者
「おおっそうじゃそうじゃ。」
「その・・なんじゃったかいのぅ?」
えっと‥紙屋町・・なんちゃら・・
「戦争して潰してみぃや。」
「ほんなら今、広島で一番になるじゃろ」
そう言って去っていく過去のヒーロー達。
今はSNSですぐに広まる情報・・
週末の夜に各地区にたむろする不良チーム達へ。
八丁堀・・
「おいっ聞いたか!」
「ああ。ど真ん中のここ八丁が要になるぞ」
流川・・
「マジかよ!?紙屋町潰したら!?」
「もしそうだったら何年ぶりじゃ!?」
「でも八丁抜けんと紙屋町に届かんぞ。」
紙屋町・・
「はぁ!?ウチ等潰したら?」
「じゃあウチ等は生き残ればいいの?」
憧れの特攻服・・縦書き文字・・憧れの刺繍・・
おかしな抗争が始まろうとしている・・
大したチーム同士の抗争もした事ないのに、
すでにトップに祭り上げられたチームを潰す戦い。
この時代に居るチーム数は5つ。
流川に2チーム。
八丁堀に2チーム。
そして紙屋町に1チーム。
憧れの特攻服・・縦書き文字・・憧れの刺繍・・
許されるなら、何を入れたい・・
何を背中に背負いたい・・・
絶対に背負いたい文字・・
「廣島じゃろうがぁ!!!!」
「廣島!」
「あの廣島!」
「旧字体の!」
そして憧れの・・
数か月後にある伝統の祭り・・
刺繍特攻服背負って胡子講へと突っ込む為に・・
「しゃあ!先手必勝じゃっ!」
「いやっ!凌ぎきろうや!」
まぁ、どっちにしても始めようかいね・・・
「喧嘩上等っ紙屋町ジェイフォージェイ参上だぁ!」
このまま・・
廣島の夜のてっぺん死守したらぁ・・