第四話 「Mr.TYT解説はじまる」
「いよいよこの日がやってきました。
甲子園への切符をかけて東京都代表が決まる大会。
神明高校、春夏合わせて五大会連続を現実のものとするか。
それとも、紅南高校が神明の五大会連続を阻止し、
阻まれてきた三年ぶりのセンバツ甲子園をもぎとるか。
野球の女神はどちらに微笑むのかでしょう。
わたくし、東京都野球大会にのみ参上つかまつります、
アナウンサーMr.TYTこと福富 健児です。
そして紹介が遅れました。
今日は今からちょうど二十年前、東京都代表桜坂高校キャプテンとして甲子園に出場し、
準優勝を経験されました、梅澤俊樹さんに特別解説者としてきていただきました。
どうぞ、よろしくお願いします。」
「はい、よろしくお願いします。」
「本来、私の職業ですと梅澤さんと苗字で呼ばせていただくのが
セオリーではありますが、まちにまった決勝戦です。
ここは、無礼講としてお名前の俊樹さんと呼ばせていただくことにしましょう。
よろしいでしょうか?」
「あ、は、はい」
「ありがとうございます。
では俊樹さん、ズバリ両チームのキーマンになりそうな選手は誰でしょう?」
「そうですね、紅南高校の方は、やはり打撃の柱である四番の今井省吾くんでしょう。
二年生で四番を任され、本大会ですでに四本塁打を放っています。
プロ注という情報も入ってきていますから、
この決勝戦でも神明側は最も警戒していることでしょうね。」
「二年生で四本塁打というのは本当に驚くべき数字ですね。」