第二話 「レギュラーに名乗りを上げた大阪遠征」
一輝は入部早々
特別待遇で一軍のメンバーと
練習から遠征試合まで行動を共にした。
一軍メンバーは三年生が十六名
二年生が三名
一年の一輝で計二十名であった。
総部員数百名を超える神明高校で
一年生が一軍入りするというのは異例中の異例であり
創立三〇年目にして一輝が二人目となる。
そんな神懸った野球センスを持ち合わせる
一輝を認めるものもいれば、そうでない者も多くいた。
神明高校の野球部は筋金入りの名門であるがためか
部員数が多く、先輩後輩の関係はもちろんのこと、
野球の技術面での上下関係もはっきりしている。
そのためどうしても野球部内での
差別やいじめなどが発生してしまうのも事実であった。
特に入ってきたばかりの新入生は格好の的である。
才能が有り、レギュラー争いに入ってきそうな一際目立つ新入生が
新人つぶしに遭う現実は決して稀ではない。
大阪の名門
大阪光陰高校との遠征試合で
一輝は九番センターで出場し、
初打席でライトスタンドに本塁打を放つと、
その後の打撃でも四打数三安打一四球、走塁で二盗塁と
早くも神明高校のレギュラーとして名乗りを上げた。
そう、この輝かしい成績を見せた大阪の遠征試合から
、少しずつ歯車が狂い始めていたのかもしれない。