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虹と黒の系譜 【打ち切り】  作者: 草犬尾茶
第1章 人格侵食
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第七話 記憶、思い。

 

 どうしよう、壊しちゃった。


『化け物が!また罪の無い子供を殺すか!』

『てめぇ!俺たちだけじゃなく子供まで殺すか!』

『あはははひあは!トマトとまとぉ!』


「うるさい黙れよ!お前らのせいなんだよクソが!」


『そうやって責任転嫁か?さいっていだよな、ひゃはははあ!』


 うるさい。

 本当にうるさい、でも直さないと。治さないといけない。


『蘇生だと!?貴様何処まで人の道を外れれば!』


 黙れ。


 まずはどうしたら良い?食べたら良いのか?


 違う。


 そうだ、組み立てるんだ。

 部品は作れる。


『お人形あそびぃ?白樹くんもそんな事するのね!私だったらぁ、こう!こうするの。素敵でしょ?」


 身体が制御できない。

 脳なんて精密な物を今の私では作れない。


 どうしたら治せる?

 どうやったら良いの?お姉ちゃん……


 …………この世界にお姉ちゃんはいない。

 私しかいない。

 私だけしかいない。

 クラスメイトなんていう上辺だけの付き合いの奴らもみんな死んだ。


 この人形だけがいた(・・)

 私を私じゃない他の記憶から救う力になった。なりかけた(・・・・・)


 エルフの領地に行くのもこの私じゃない私以外を消すために行こうとした。

 もしかしたら、消せるかもしれない。消せるかも。消せる。


 そう自己暗示して、知らない記憶から逃げていた。


<=他の記憶……======>


 好きだったクラスメイトが目の前で死んだ。

 何で死んだ?病気、ふざけるな。

 殺される。なんで殺される?




 世界が変わる。変わる変わる。黒い場所。

 あの人は、この黒い暗い場所でただ一人光る。

 でも……あなたはなぜ白いの?

 私はなぜ白くないの?

 あなたの瞳に映る一部ですら無く、

 私はこの黒い宮殿の一部。

 立てない。私ではあなたの隣に立てない。

 なら必要ない。私は必要ない。

 白樹くんに殺される。よかった。




 忠誠を誓った王が救いを求めた勇者に殺された(・・・・)

 そして国が壊れた。みんな死んだ。

 その中には母さん、妻、娘が居た。友人もいたのに。




 餓死しそうになりながらも必死で二人で生きてきた。

 餌であると思った奴に戦友が、目の前で殺された。

 足を喰われ、頭を噛み砕かれた。

 化け物が。




 白く輝く生き物が居た。

 逃げるから追った。

 ただそれだけなのに殺された。

 理不尽、自然の理、ならこれは理であるのか?

 それでも僕は生きたかった。




 無鉄砲で先走るあいつが死んだ、なぜ死んだ?

 こいつが殺した。

 俺が殺す、殺してやる。

 でも……歯牙にもかけられず犬死した。

 他の奴らは逃げた。裏切り者め。




 みんなあの黒い人形に殺されていく。

 ならばこの俺が食い止めてみんなを逃がそう。

 軽蔑の眼差し、もう見られすらしない。

 一矢報いる、できない。

 俺の生きた意味は何なのだ。

 みんなで生きていこうと誓ったあの誓いはどうなる。







 …………やっと扉が開いた。

 何年待っただろう。

 液体の中で、時が止まったこの部屋の中で、

 やっと役に立てる。


魔導人形(マギドール)、製造番号E287、起動成功しました。主人登録プロセスに移行」


 役に立てる。


 

 言う事を聞かなくてごめんなさい白樹さま。

 私をこの時が止まった場所から出してくれたあなたは、私の恩人。


 私なんかがあなたと対等に呼び合う訳にはいけません。


 でも、そんな頑固な願いにも微笑んでくれた。

 優しい笑顔。


 あなたの、白樹さまの手が私に触れる。

 身体が変わる。あなたのために。

 あなたが私を生み出した。

 量産品の他の子達から私は離れ、あなただけの物となる。


「さて、ここから出るぞ、人形ちゃん」


 そう、私は人形なんだ。

 それでも、私はあなたの役に立てますか?



#人形ちゃん


 時魔法、状態維持の魔法が永続付与された研究室。

 永遠に時が止まった研究室に何百年といたために出たいと思う心が強くなった。

 その為、表に出ないほど、少しであるが自我が生まれた、

 研究をやめて、放置したら成功するとは何とも皮肉な事である。


 人形ちゃんが組み立てられて行く間に他にあったパーツの意思の全てがこの人形に集まった。

 そして少しだけだが表に心が出せるようになった。

 命令を聞くように造られた存在がそれを凌駕した。



 この世界では物に、心が宿る。

 何百年と在ると、邪素、聖素に触れて自然と心が生まれる。


聖素に触れ続けた物は善く在り、

邪素に触れ続けた物は悪く在るのだ。

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