第四話 闇纏う恐ろしき暴君
今私は全力で走っている。
通りにくそうな場所は木に『捕食手』を絡めて飛び、
翼で滑空、それほどまでに急ぐ理由は。
「グウォオオオオオオ!」
追われているのだ。
黒いティラノサウルスによく似た恐竜に。
『捕食手』で噛み付いたり、剣で切ったりしたが全然効かない。
おっさんの記憶から剣に黒い闇纏わせて切る技とかもやって見たけど、全然効かない。
故に逃げる。どうしてそこまで私に固執するのかはわからないがとりあえず逃げる。じゃないと喰われる。
「グゥゥウ!」
ん?何か来そう。どうしたら良いのかな。
分からないんだけど、とりあえず思いっきり空を飛ぶ!
バギャギャギャギャ!
物が折れるような音が連続して聞こえた瞬間、風も吹いていないし引きづられてもないのに下に引き寄せられる。
転移した感覚に似ていた。
何が原因なのかわからないが引き寄せられた場所にあったはずのものは全て消えていて、物があったと言うことさえ感じさせない。
ここが自然豊かな森のなかであることが、
その事をさらに際立たせる。
「ガァアア!」
かなりの距離があるのに退化した前足を振り上げ、
今、振り下ろさんとしてる。
また何か来るの?もうお腹いっぱいなんだけど。
何が起きるかわからないが横に跳ぶ。
黒い魔力が見えた次の瞬間、小さな前足から黒い闇の斬撃が飛ぶ。
その斬撃に触れている地面が黒い粒子を放って消滅していく。
私がよそ見している間に恐竜が突っ込んできた、避けれそうに無いので赤い魔力を放出、爆発のイメージ。
次の瞬間、予想通りの爆発が起き、私は爆風で吹っ飛び、恐竜は爆発に巻き込まれる。
……効かないよなぁ、闇の剣は効かなかったわけだし。
とりあえず次に備えて白い魔力でも練っておこうか。
爆炎が晴れる。しかし予想に反して恐竜の顔は焼けている跡が多分ある、肌が黒いので分かりにくいのだ。
「ガゥウ……ガアアー!」
恐竜が吼えた瞬間何かが見えた。あれ魔力か?
黒色、その中でも空間の魔力のすこし紺色っぽいやつだ。
刹那、物が折れる音を派手に撒き散らして私の身体がグチャグチャにされる感覚になる、が身体に異変はない。
なんでだろ?まあ消されなくてよかった。
服と魔石が壊されるのが痛いからね。
恐竜が動くのを待つ必要はない、
循環させて練ってあった白い魔力を放出。
イメージ固めてなかった、どうしよ、
とりあえず消し飛べ!
白い光の奔流が指した手の平から放出、恐竜を撃つ。
「グギュァァア?!」
悲壮な断末魔を上げ、
白い粒子を大きく撒き散らして消えていく。
おお、勝った。でも消滅しちゃった。
この皮膚あったら身体を改造できたのに。
そして恐竜の記憶が増える。
そろそろ対処法を考えないとな……
でもまあ、それはいい。
この白い消え去れビームという必殺技もできたし。
次の敵は細くした消え去れビームで倒すことにしよう。
これ以上変なのに絡まれたくないので急ぎながらも音を立てずに進む。もう暗くなり始めた。
空には太陽に代わり月が浮かびはじめた。
夕焼けが見えにくいけど綺麗だ。
日が沈んだらどうしようか、
寝なくてもいいし、目をいじれば夜だって普通に見える。
このまま進むか。
遺跡っぽいものを見つけた。入ろうかな……
#白い粒子、黒い粒子。
白い魔力によって物が消滅させられた際、白い粒子を放つ。
黒い魔力であれば黒い粒子だ。
消えた物が何処にいくのかはエルフでも未だよくわかっていないが、
白次元、万有の空間に白い魔力で消した場合は消えると思われる。
黒次元もあるのだが、全無の空間、
すなわち何物も入る事は出来ない概念的空間である為、
そこには行かず、
ただ単に消滅しているのでは?という説もある。
その為白次元に消えるという説も根拠がない為、黒次元の論と同じくただ単に消滅しているのではないか。
という説も多い。