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 砲撃を受けた駆逐艦オルガーとマシュラは、大爆発を起こして撃沈された。乗員が脱出する時間など無く、もしかしたら砲撃された事すら気付かずに死んだかもしれない。それほどの威力だった。


 突如正体不明の艦からの攻撃により二隻の駆逐艦が撃破された事に、薄暗い部屋の中でサスケ達も混乱していた。

「何よ!何が起きたの!」

「高エネルギーを確認!戦艦クラスの艦船からによる砲撃と思われる」

 クレハの問いにレーダーに張り付いていたサスケが答えた。

「戦艦じゃと!この辺の警備隊でも、重巡洋艦クラスの船しかないはずじゃぞ!何でこんな所におるんじゃ!それに撃たれるまでレーダーに反応は無かったのか?!」

「無い。敵は、新型のジャミングまたはステルス技術を持っていると推測される」

「馬鹿な!」

 研究所の周囲には、デブリに混じって多数のレーダーが仕掛けられていた。

 元々一人しか住んでいなかった研究所にとって、敵が何時何処から攻めてくるかが分かるか分からないかが命に関わる。過剰ともいえる数のレーダーが研究所周囲にあるデブリに撒かれていた。しかし、正体不明の艦が、ビーム砲のエネルギーチャージを始めるまで、その存在に気付く事が出来なかった。

 この事実は、何が来ようとも絶対に侵入者を見つける為に、綿密に計算して研究所から三百六十度、死角が存在しない様にレーダーの設置場所を決めたプロフェッサーからは信じられない事だった。

 研究所から、駆逐艦スカルヴァイドが居る方向を仮に12時方向正面とすると、その砲撃が飛んできたのは5時方向斜め下からだった。

 サスケがその方向に向けてある研究所の監視カメラの映像をメイン画面に表示させる。

 ビームが放たれた軌跡にあったデブリが赤熱化し、ビームが通ってきた方向はすぐに分かる。

 赤い軌跡のその先には、ひし形に平べったい四角錐の形状をした巨大な艦が先端を海賊達のほうに向けてゆっくりと航行していた。

 カメラからは底面は見えない。底面以外の四つの面には、二連装のビーム砲がそれぞれ1基づつ設置されいる。低めのブリッジが鈍角の接点部に作られていた。

 表面は、目視でも確認しずらい様に黒い塗料で塗られており、それがより一層不気味さを際立たせている。


 デブリ帯であると言うのにも関わらず、その戦艦はそこに真正面から突っ込んでいる。浮遊していたデブリが次々とその戦艦のシールドにぶつかり、白い火花を散らしていた。

 その事から、高出力のエンジンと、強力なシールドシステムを装備しているのであろう事が、サスケ達には分かった。

「カメラにて所属不明の艦を視認。データベース照合。データ無し。新型艦または未知の艦である事を確認」

「くっ!まずい。シールドリングは、駆逐艦のビーム砲程度なら研究所の装甲で防げる程度に弱める事が出来るが、戦艦クラスの主砲を受ければひとたまりも無いぞっ!」

「…最終手段を使用する可能性が高い。準備を頼む」

 サスケは少し悩むと、プロフェッサーに言った。

「分かった。おぬしらは、何とか、時間を稼げ!ワシは、ジェネレータールームに行く!」

 そういうとプロフェッサーは扉を開けて、部屋から出て行った。

「クレハ。そういう事だ。君は何とか、会話を長引かせて、時間を稼いでくれ」

「嘘でしょ!?そんな事出来るわけ無いじゃない!」

 戦艦の登場など、サスケ達は想像していなかった。現状研究所にある設備や、対海賊用にと急造した物では、到底太刀打ちできるものではない。機械でしかないサスケが焦り始めていた。


 一方デットロリポップ海賊団もデルトンが怒鳴り声をあげ、報告に来たクルーを蹴飛ばしている様子が通信画面に映っている事から、混乱した様子が伺えた。

 正体不明の相手を探っていた時、その相手から通信の割り込みが入った。

『双方戦闘を中止し、当艦に降伏せよ。当艦はトルーデ王国宇宙軍所属戦艦フューロベ。繰り返す、双方戦闘を中止し、当艦に降伏せよ。当艦はトルーデ王国宇宙軍所属戦艦フューロベ』

 通信画面に映ったのは、トルーデ王国宇宙軍の制服に身を包んだ酷薄そうな男だった。男の隣には、フューロベの艦長と思われる男が不機嫌そうに座っていた。

(この声…まさか!)

 クレハには通信機から流れている声に聞き覚えがあった。

 護衛を殺し、サスケの捨てられていたスクラップ待機場へとクレハを誘拐した、あの誘拐犯達を指揮していたあの声だとすぐに気がついた。

 同時に、機械であるサスケも、その声の主が誘拐犯のリーダーである事が分かった。

 誘拐された時の恐怖が蘇り、知らず知らずの撃ちに彼女の体が震えだす。

「ゆ…」

 誘拐犯と、言いそうになるが、その前にデルトンがかぶせる様に言う。

『ふん!今頃ご登場か?何の用だ?今、お前さんから依頼していた仕事をこなしてる最中なんだが?コズリック少佐殿?」

 そこで初めてクレハは、自らを誘拐した男の名前を知った。

(コズリック?それがこいつの名前?何で海賊が知ってるの?アイツはトルーデ軍って名乗った?…って事は私を誘拐して殺そうとしたのはトルーデ軍!?なんで!?派閥争い?どうして!?)

 混乱するクレハだが、一方サスケは、クレハを誘拐した者達が軍または、国家に属する者達である事は、最初から予想していた。

『どういう事かな?貴様からの報告では、始末は付いていると聞いていたんだが?』

『ちょっとした手違いだな。安心しろ。もう終わる所だ』

『いえ、もう結構です』

 双方、所属は違えども汚い事をしてきたのには変わりが無い。お互いに相手がやりそうな事は想像がつく。

 すなわち口封じ。

『おっ?俺を消そうってか?そんな事をしてみろ。テメェが俺達としてた取引の証拠を全て公表されるぜ?』

 当然、デルトンは、それに対する対処法も心得ている

『ああ、その事ですか。どうせあるのは闇市か、貴方の本拠地でしょう。それなら今頃破壊されていますよ』

 そこでデルトンの眉がピクリと動いた。その変化をコズリック少佐は見逃さなかった。


 この宙域は、トルーデ王国とミドロス星間連邦のある種の緩衝地帯だ。おいそれと双方の国が軍艦を派遣出来る場所ではない。

 闇市と自身の本拠地の同時襲撃。そうなると、トルーデ王国宇宙軍の大規模な海賊掃討艦隊が来ている事は間違いない。

 立派な国際問題だ。下手すれば、戦争になりかねないほどの大問題だ。


「じゃあ何で俺に通信してきたんだ?」

『何、ちょっとした確認ですよ。今の反応で分かりました。用心深いあなたは、取引のデータを他所に預けず、闇市か本拠地にしている資源衛星のどちらかに私との取引のデータを隠しているでしょう?それを確かめたかったのですよ。なので用済みです。目標海賊艦。撃て』

「ちぃぃ!全力回避ぃ!」

 スカルヴァイドの操舵手は、すぐさま回避行動を取った。スカルヴァイドの下降用スラスターを全て出力全開で吹かす。

 蹴飛ばされるように、スカルヴァイドの船体が下方向へと下がる。

 本来艦内に居た人間に対して何の警告も無い、急激な動作は、ご法度だ。対応しきれず何人ものクルーが転倒し、骨折などの怪我をした。

 しかしそうでもしなければ、攻撃を回避する事はできなかっただろう。

 それでも完全に避けたとは言えなかった。

 メインブリッジの正面を極太のビームが通過する。スカルヴァイドの甲板上にあったビーム砲は綺麗に抉り取られていた。融解しかけた甲板が小爆発を連鎖的に引き起こしてはいたが、まだかろうじて無事といえた。

『はっ!海賊なめんじゃ…』

 デルトンは最後までその台詞を言えなかった。

 そこで、クレハの見ていた通信画面は途切れ、シグナルロストと表示されるだけになった。

 フューロベから既に第二射が発射されたのだ。

 クレハが、外の様子を映している画面を見るとそこには、ビーム砲によって真っ二つになったスカルヴァイドの姿があった。

 二つに分かれたスカルヴァイドの残骸は、しばらく浮遊した後、二つの火球となって消失した。

 リンデット宙域で畏れられたデットロリポップ海賊団の呆気ない最後であった。


 研究所へと攻めてきた海賊たちを迎撃していたら、いつの間にか母国の戦艦が現れあっという間に海賊達を殲滅。だが、その戦艦に乗っていたのはクレハを誘拐し、殺そうとした犯人だった。

 めまぐるしく状況にクレハの頭の中は混乱の極みだった。

 しかし、それでもハッキリ分かる事がある。

 今は、絶体絶命の危機的状況であるという事だ。

 サスケ達の状況を言い表すにこれ程適した言葉は無いだろう。

 

『…そして、ようやく見つけたぞクレハ・クロードロン。よくもまぁこんな所まで逃げ込んだものだ』

「何で私を狙うのよ!私は、トルーデ王国の貴族の娘だけど、誘拐されて殺される様な謂われは無いわよ!しかも軍艦まで出してくるなんて!それでも埃高きトルーデ王国軍の軍人なの?何の罪も無い娘を誘拐してレイプしようとして殺そうとするなんて!あんた達、頭おかしいんじゃない!?」

 それをコズリックの隣で聞いていたフューロベの艦長は嫌そうに顔をしかめるが、何も言わなかった。

『腐っているというなら貴殿のお父上もそうだろう?』

 コズリックはにやりと笑った。

「何ですって!お父様は貴方達とは違うわ!」

『ハッ。いい事を教えてやろう。貴様の父親はNG(ノーブルガーディアン)よって逮捕されたぞ』

 ノーブルガーディアン。それは、貴族を専門に取り締まる警察組織だ。NGに逮捕されるという事は、罪を犯し、貴族に相応しくないと判断されたのに等しい。

「なっ!お父様を陥れたな!この外道!」

 父がNGに逮捕されるなんて信じられないクレハは、すぐさま言った。

 コズリックは困ったように肩をすくめながら答えた。

『勘違いしてもらっては困る。誓って我々は何もしておらんよ。奴らが勝手にやった事だ。まぁ上の連中が何かしたのかもしれんがな』

 その時、画面の外から一人兵士が映り込み、コズリックに耳打ちした。

『少佐。あの建造物のから、間違いなく通信波が出ている事が確認されました』

(この通信は、通信の出元を探るための時間稼ぎだったのね!)

 

『そうか。もう時間が来てしまったようだでは、お嬢さんさようなら。目標眼前の建造物。撃て』

「あんた達、恨んでやるわ!死んでも化けて出てやる!覚悟し…」

 

 容赦なく発射されたフューロベの主砲は、デブリ、サスケとプロフェッサーが作ったシールドリングを薄紙の如く軽々と貫き、研究所へと到達する。

 今まで、海賊の駆逐艦から放たれたビームを何度も受け止めていた研究所の装甲が、戦艦のビーム砲によって融解し、研究所を貫通するのにそれ程時間は掛からなかった。

 ど真ん中に大きな穴の開いた研究所は崩壊を開始した。

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