かぶりネコと中の人 2
この作品は「かぶりネコと中の人」の続編です。
単体でもお読みいただけますが、前作をお読みいただいてからの方が、わかりやすく面白いと思います。また、前作の多少のネタバレを含みますのでご了承くださいませ。
「かぶりネコと中の人」http://ncode.syosetu.com/n9439db/
宿主が海外旅行から戻ってきた。
「ネコさん……た、ただいま…………」
ふむ。ずいぶん疲れ果てているようだが何があった?
3本ある尻尾のうちのひとつを足にからめてやると、途端にうれしそうな顔になる。それだけで気分が向上したのだろうか。ちょろい、ちょろいすぎるぞ宿主よ。
む、吾輩の腹に顔を埋めようとするのは止めい。
「癒されるぅ。やっぱり今回の旅、ネコさんにも一緒に来てもらえばよかった」
お断りである。
友達に会いに行くだけだから吾輩がいなくても大丈夫だ、南国でまで吾輩にかぶられたら暑くてたまらない、いなくても平気だと言ったのは宿主だろう。そもそもせっかくの休日に、何故にわざわざ働かなければならぬ。何より暑いところに行ったら溶けてしまうではないか。宿主は吾輩をかぶらないでいられるかもしれぬが、吾輩のこの毛皮はかぶりものではないのだぞ。絶対に嫌だ。
それより、だから吾輩の腹に顔を埋めるのは止めよ。
「だってネコさん聞いてください。行きの空港で荷物が出てこなかったんです。」
ほほう、それは大変だったな。
「そして聞いてください。帰りの空港では、荷物が壊れていました。」
宿主がびしっとスーツケースを指さす。
おお、確かに見事にベコッと凹んでおるな。おや、鍵も壊れているはでないか。中身は無事なのか?
「はい、無事でした。でも、でもですよ?折角羽を伸ばしに行ったのに!!知らない人とたくさん話さなきゃいけないし、クレーム対応も最悪だったから頑張って自分の主張を伝えて、荷物取りにいったり書類作ったり、それも英語で!……ネコさんが一緒に来てくれたら、全部ネコさんがしてくれて、……私はぼうっとしていればよかったはずなのにぃぃ」
止めよ。少しは働けい。
それに羽を伸ばす必要があるのは宿主ではなく吾輩である。実際には羽などないが。あるのは尻尾だが。その尻尾も別に延ばす必要はないのが。まあ、それは兎も角。
「やっぱり、今度からはどこに行くにもネコさんの中にいるぅ」
そう言って吾輩の腹でむせび泣く宿主。
ふむ。吾輩は認識を改めるべきかもしれぬ。
宿主は「猫かぶり」ではなかったのだな。
宿主のような者を、世間では「引きこもり」と呼ぶに違いない。
ネコさんはかなりでかいです。宿主がすっぽり入ります。
サブタイトル「中の人は引きこもり?」を付け加えるかどうかで悩みましたが結局はずしました。
ちなみに、遠方に住む友人に会うため旅行した際、行きにスーツケースが紛失し帰りに破損したのは筆者の体験談です。
お読みいただきありがとうございました!