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ギルド(別称)と、悲劇と

世界と二郎は丸二日ほどの時間をかけ、男の案内で近隣の国(ア・ガルという国らしい)についた。

ちなみにその累計時間の半分は世界の体力のなさに起因しており、最後の方は二郎におぶられていた。

 そして男につれられるがまま、中々に重要と思しきギルドのような役割を持つ施設(正式名称:多目的福祉施設 対害魔獣駆除科)に来ていた。酒場というよりは役所のようなところであり、ノートパソコンの代わりに魔道具が映像を投影し、職員が世話しなく映像に筆で何かを書き込んだり、印鑑のようなものを押したりしている。


「それにしてもセカイ、お前さんの対魔法力、凄いもんだな!今度うちの職員と戦わせてみたくなったぞ!」


 例によって例のごとく、この男はギルドマスターであった。

 ギルマスなら女性の方がよかったと二郎は愚痴を漏らしていたが、女性の社会進出は職業柄難しく、出てきたとしても、筋肉の塊のような人が多いそうだ。柔らかみなど到底求めることが出来ないと笑顔の男から聞いた二郎は、それはそれは深い溜息を吐いたという。

 ちなみにこの男、名を「レイバン・ソロ」というらしい。自分語りの中で、侯爵ソロ家の次男と言っていたため、このレイバンの地位がそこそこ高いことと、この異界では名前が苗字より先に来るということを世界は知った。

 なお曲がりなりにも異界に先乗りしていた二郎はこの事を知っていたのだが、なまじ魔物生活が長かったためすっかり忘れていたという。

 一言二言社交辞令を述べた世界は、恐らくこれから起こる悲劇を予測し、入り口に立ち止まったままにしたところ、レイバンに尋ねられた。


「セカイ。何故お前は入り口に突っ立ったままなのだ?もっと中に入ればよかろうに」


「いや、俺が向こうに行くだけで、絶対に悲しむ人が出る。それだけは絶対に避けねばならない。申し訳ないが、俺はこの場から一歩も動くことはできない」


 この悲劇は絶対に避けねばならないと確信している世界は、これを断固として断る。


「何を馬鹿なことを・・・いいからこいっ」


 何をしているわけでもないのにこの子どもは何を言っているのかと、レイバンは世界の手を取り、中にずんずん進んでいく。世界も一応抵抗はしているのだが、いかんせん文芸部部長が三十数年間体を動かし鍛えてきた男の筋力に勝てる訳もなく、ずるずると引きずられていく。とたんに事務所内から湧き上がる悲鳴。いきなり消える魔道具からの光。世界の言うとおりになってしまったことに困惑しているレイバンに、世界が答える。


「僕の能力、魔法や奇跡の無効化は、常時展開型なのだ。それこそ魔道具に使われている魔法なぞ、簡単に消し飛ばしてしまうくらいにはな。だから入りたくなかったのだが・・・」


「そういうことは早く言え!」


 レイバンに怒られ、世界は少しシュンとした。言葉にしなくとも分かっているかと思ったからだ。そんな世界の肩におかれる手。二郎だ。振り向いた世界が自分を視認することを確認した彼は


「言葉にしなきゃわかんねぇって」


 と言い、世界はさらにシュンとした。


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