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REVENGER  作者: h.i
26/36

人として

「ふぅ...」

深く溜息を吐いて鏡を見る。

未だに決心はついていない。何せ、これを人前に晒すのは初めてだ。拒絶が、否定が、嫌悪が怖くて誰にも打ち明ける事はしなかった。

そういう意味では、真に信のおける友人は今までで、いなかったのかもしれない。

けど、何故?何故、告白する事を恐れていたの?

いつも辿り着く答えは簡単だ。違うから。

僕は皆とは違うから。

皆と違う僕を見た、友人と思っている人達が僕から遠ざかって行きそうで...それが堪らなく恐ろしかった。

多分、僕は寂しがり屋なんだろう。自分を直視出来ないから、他人を通して自分を認識しようとしていた。

僕は、『僕にとっての僕』ではなくて『皆から見た僕』でいようとし続けたんだ。

だから、他人が僕から離れるのが何より恐ろしいんだ。『皆から見た僕』というフィルターを失えば、『僕にとっての僕』を直視しなきゃいけなくなる。

そう、皆とは違う僕を、見つめざるを得なくなる。

誰かを通して見ていた人間の僕ではない。我が目で見る、異質な僕だ。


じゃあ、彼は?

彼は僕を見て、恐れないの?幻滅しないの?

こんな予想、楽観的かもしれない...。けれど、彼は...隼也は、僕を避けたりはしないと思う。

だから、嬉しかった。初めて、僕がこれを見せても受け入れてくれる人が現れたんだ。


自問自答。入浴中の日課のようなものだ。

普段は他愛ない事について、ゆったりと浴槽に浸かりながら考えに耽る。短い時には、10分足らずで打ち切る事もあれば、1時間以上も没頭している事もある。

殆んどは結局、意味も無くと言った場合が多いのだが、今日は違った。

いつもとは打って変わって、湯船には浸からずに鏡の前で椅子に座って、この時間を過ごしている。どうにかなりそうな程に不安だからだ。お父様が、じいやが、隼也が僕を見る目に憂いが混じっていることが分かってしまうから...


胸に手を添える。隼也から与えられた剣が、添えられた手の元へと胸の内から現れる。

あぁ...今、この剣に願えば隼也は来てくれるんだろうな。僕に、僕の隠し事を曝け出す勇気が有れば楽だったのに...

剣の刃をなぞりながら、妖怪として隼也が放った技を思い出す。隼也の持った大きな剣が敵を貫いて、敵の身体から無数の刃が飛び出して...

だけど、その記憶が嘘だったみたいに、この剣の光はこんなにも優しく感じる。


「...!隼也!」

確かに感じた。隼也が帰って来たと。

ひどく安心した。隼也なら大丈夫だと信じながらも、隼也が自分の知らない所で倒れて戻ってこなかったらと、心の何処かで心配し続けていた。全部、僕の杞憂だった。

とにかく無事に帰ってきてくれた。今はそれだけでいい。

早く会いたいと、逸る気持ちに従って身支度を手早く済ませて隼也の元へ向かった。



「お帰りなさい、隼也!」

「ただいま。奏も無事だったか」

隼也の声に安心の色が見える。彼も、身を守るだけの力を持ち合わせていない僕たちを心配してくれていたらしい。

隼也の方は、相当大変だったらしい。腕には傷が目立ち、体中薄汚れている。

見かねたじいやが隼也に風呂を勧めると、決まりが悪そうに笑って、それに従った。

浴室の方へ向かう隼也を見送っていると、湯冷めしますよと、じいやが毛布生地の暖かいショールをかけてくれた。

じいやの優しさを感じると、偶に嬉しさと共に何処か申し訳なさも感じてしまう時がある。最近は隼也も僕の為に危険を冒して動いてくれているから、余計に意識してしまう。

ふと、昔の事を思い出した。じいやに僕は迷惑を掛けてないかな?と尋ねた時の記憶だ。

まだ、少し幼かった頃の記憶だから詳細に思い出せる訳では無いが、その時じいやはこう答えたのだ...

「お嬢様、私はお嬢様方が立派に成長していくご様子を見守らせて頂く事が、何より楽しいのです。迷惑とはとんでもない。じいやはそれが楽しいのですよ」

どれだけ時が経とうとも、その時のじいやの表情は鮮明に思い出せる。

本当に嬉しそうな表情で微笑みかけてくれていたな...。あの後、じいやの事を心配してくれるとは感激です!みたいな事を言って、こっそり、おやつのチーズケーキを2切れに増やしてくれたっけ。


「思い出に浸るなんて久しぶりだな...」

過去を思い返す事は、僕にとって何よりも辛い事だから...








「ふぅ...傷口にお湯が染みたな。過去最高に寛げなかった...」


「ん?あれは...」

髪をワシャワシャと拭きながら洗面所から出てきた隼也は、廊下の奥、響の部屋のドアの下から光が漏れているのに気が付いた。

ドアに近付こうとすると、丁度、東雲が中から出てきた。

「おぉ、隼也様」

「東雲さん。響さんは今、時間とれそうか?」

「えぇ、会社の業務の引継ぎは今し方終わりました故、大丈夫かと」

「そうか。ありがとう」

「いえいえ...」

東雲は一礼して別の部屋へと姿を消した。ドアへと向き直り、ノックする。少し間を置いて、はいりなさいと声が聞こえる。

あまり音を立てないようにドアを開き、一礼して部屋へと立ち入った。

「隼也君か。何か聞きたい事でも?」

いつも通り、部屋の正面の机に手を乗せて寛いでいた。だが、心なしか少しやつれているような印象を受けた。


来客用のソファに腰掛けて少し考えた後、疑問を投げかける。

「奏の家族について聞きたい。その様子じゃ男手一つなんだろ?強大な力を持つ妖怪である母親がどうなったか知りたい」

分かっている。

この質問は奏にしろ、響にしろ、心を抉るものであるとは百も承知だ。

だか、時間がない。

今夜が2日目、明日の夜には、奏の命を狙い、マグナが現れるだろう。

奏の母親が死んでいるとしたら、直接、マグナが手を下した訳では無くとも何かしらの繋がりがあるのかも知れない。それを知りたい。


「彼女は....死んだよ。事故に巻き込まれてね」

「事故?妖怪が死ぬ程の?」

「昔、家族4人で出掛けようとした時....トレーラーが私達の車へ向かって突っ込んできたんだよ」

「馬鹿な...弱い力の妖怪ならともかく、奏の母親程の妖怪がそれだけで」


響が椅子を回し、こちらから顔を隠す。何よりも辛いだろう。過去の最も悲惨な記憶を自ら呼び起こす事は。

一つ一つ噛みしめるようにゆっくりと語り続ける。



「長男、律は助手席が好きで...その日もそこへと座っていた。妻と奏は後部で二人並んでいた。その時は、私に電話がかかって来たので路肩に停めて電話に出た」

今更、もし、を考えても意味など無いだろうが、ふとした瞬間に考えずにいられなくなる。

それほどに響には重すぎる出来事だった。

「あの日だけは、仕事に関するものを全て忘れていたなら、こんな事にはならなかったのにな。路肩に停車した私達へ向けて、高速でトレーラーが正面から突っ込んできた」


「恐らく、何者かが妻と我が子達を狙ったものだったのだろう」

一時の静寂。響の中でも最も重く悲惨な記憶に触れようとしているのだ。言葉がそう簡単に出てこないのも当然の事だろう。


「助手席に座っていた律は......即死だった。前席にも関わらず私は助かってしまった。私の後ろに座っていた奏も胸を酷く打ち付けて、もう助かりはしない所まで行ってしまった」


「奏は重体だったが、外傷も少なく、何より人の形を保っていたのが唯一の救いだった。ボロボロの体を引き摺って、妻が奏へと這いよって...一つ術を行使した。本来自身の治癒はおろか、生命活動の維持の為の妖気までも振り絞って、奏の命を繋ぎ止めた」

「それじゃあ、奏の母親は...」

「あぁ...自分の力全てを奏を救うために注いで、自らの死を選んだ。......奏だけでも助けられて良かった。律と見守ってるね。とだけ遺して妻は姿が消えていった」


「静かに眠る奏と体の動かない私。私だけが...何もしてやれなかった事が虚しくて、悔しくて...」

響がゆっくりと椅子を回しこちらへと向き直った。

「だから、あの子だけは救いたい...。事が終われば私の命でも何でも捧げよう。だから...」

「響さん。あんた、神様ってあんまり信じない人だろ」


「え...?なにを...?」

隼也の問いかけに豆鉄砲を食らった鳩の様な表情をする響。

「祈って祈って、救いがあるかどうか未だに分からない神様より、代償を払ってでも力を得られる悪魔の方が良い、って話し方をしてるぞ。響さん」

「そんな...わたしはただ...」

「わかってるよ。そんな事は無いってだろ?ただの例えだよ。だけどな、分かっちゃいるだろうが、娘が多少懐いたからとは言え、ポッと出の妖怪に自分の一番大切なモン託すなんざ、正気の沙汰じゃない」

「重々、承知の上だ。それでも、どんな危険な橋を渡ろうとも護りたいモノの為だ。その為なら幾ら危険だろうと、例え道半ばで朽ち果てようとも可能性に縋りつくさ」


やっぱり...響さん。

どんなに恐ろしかろうと自分の一番大切なモノの為なら、どんな苦痛も代償も飲み込もうとする意思がある。恐ろしく真っ直ぐな目だ。

隼也も響の目を見返す。いや、見返すと言うよりも睨み返すと言った方が正しいか。

普段のリラックスしている時の黒い瞳から、臨戦態勢の青い妖気を湛えた瞳へと変わる。そんな隼也にも臆することなく、真っ直ぐにその目を見返す響。

「......全力で睨みつけたつもりだったんだけどな。子を守る親は強しだな」

「いや、怖かったさ、全身が震えあがる程にね。もし君に殺意があったら私は重圧に耐えられずに気を失ってたよ」

見てみると、響の首元などには尋常ではない程の冷汗が流れ、冷静を装う顔とは裏腹に手足は細かく震えていた。響がどれ程の覚悟があるか試したつもりだったが、余計なお世話だったらしい。


「明日の夜、事態が急変する」

「ああ、分かってるよ」

響も知っていたのか。と言うことは響の前にもマグナは姿を現したのだろう。

そうなると、屋敷全体を覆う結界も通過されたのか。元より結界程度でマグナを止める事が出来るなどとは期待もしていなかったが。

「鎧の男か?」

「ああ、そうだった。奏と私の今後について少し触れた程度だったけどね」

「あいつは...何と...?」


「奏は死しても人の身を失うだけだと...あの子の境遇を鑑みれば、この言葉は妖怪として変わるのではないかと思う」

「何故、そんな事が言える?人の身を失って、ただ死ぬだけかもしれないだろ?」

「人の身を失った上で、幸せを見つける事も出来よう。奴はそう言った。確かに疑わしいが、どんな意味でこの言葉を選んだのか分からない以上、私は最善を信じたい」

確かにそうだろう。

これまで、度々姿を現したマグナの言葉を思い出せば、ただ奏が妖怪の血を引くから殺す、それだけでは無いような言い方だった。ならば奏もまた、自分と同じように妖怪としての身を与えられ、妖怪としての生を受けるのだろう。


「私は絶望と共に、少し嬉しかった。あの子が殺されようと、まだ希望は残ると言う事に。だが、それが奏の死を黙認して良い理由になんぞ一切なりはしない。あの子には苦しい思いはさせたくないし、何より今ある未来を奪わせたくない。私達の子であって欲しいんだよ」

「そうか。そうだろうな...」

響の望んでいる未来には、マグナへの勝利が加味されている。

果たして、それができるのか?

正直な事を言えば、マグナの能力が磁力だと分かっていようとも、歯が立つような相手とは思えない。戦略、知略では無いのだ。完全に、そして圧倒的にこちらの力量不足だった。一度対峙した際に嫌と言うほど思い知らされた。あの時も、マグナ側に作戦らしいものは全く感じられなかった。

もしかすると、それが作戦だったのかもしれない。ただ単純な力による圧倒。それを見せ付ける事により、差を理解させるため...

あの時は剣が掠りすらせずに長い間気絶させられた。その時間があれば何回奏が殺せる?

妖気を使うまでも無く、妖怪の力なら素手でも人一人は簡単に殺せるだろう。


「一つ、正直に言っておく。十中八九、俺では奏をマグナから守れない」

「.......」

「やっぱり、奴の力は強大だ。散々に打ちのめされた上で、未だ底が知れない程にな。かと言って、この屋敷から出る事も出来ない。俺達は詰みになったようなもんだ」

「それでも私は諦めない。妻に、律に誓って諦める事は許されないんだ」




「ふっ...そうか」

不敵な笑みを浮かべ隼也がソファから勢い良く立ち上がった。

「それより響さん。着替え、無いか?」

一瞬驚いたような表情を浮かべるが、直ぐに座っている机の横に置いてあったキャリーバッグを隼也のほうへ押し出した。

「すまないな、仕事先から真っ直ぐ来たものだからフォーマルな物しか入ってないが」

「この薄汚れた服よりマシだ。洗ってあるだろうな?」

「心配無用だ」

「おう、そっか」

隼也はキャリーバッグを受け取ると、スーツ一式を取り出し背を向けた。

「さぞかし手痛い代償だな、こいつは貰っていく」

そう言い残し、隼也は部屋を後にした。嵐のように去って行った隼也に、響は少し含み笑いをする。

「そんな良心的な悪魔がいるものか」







「うーむ、ピッタリだ。それにしても、良い肌触りだな。金持ちは着てる物も違うなー」

シンプルな2ボタンのスーツを羽織る。

洗面所で着替え、鏡で襟を整えながら独り言を吐く。

「中々、いけんじゃない?フォーマルと言えばブレザーしか着た事無かったな」

ブレザーを着ていた記憶も、碌に残っておらず断片的にしか思い出せないわけだが。

「ったく...何時になったら思い出せるようになるのやら」

そう言いながら、髪についていたゴミを払い、スーツのよれを伸ばす。その時、鏡越しに東雲の姿が現れた。

「隼也様、一番下のボタンは留めない方がよろしいかと」

「ん?あぁ、東雲さんか。このボタンね...これでいいか?」

言われた通りにボタンを外す。生憎、スーツは着た事が無かった為、ルールはよく分かっていない。

「はい、大丈夫かと。それにしても、響様が何やら嬉しそうな表情だったのも頷けますな」

「どうゆうことだ?」

「高嶺家長男、高嶺律さまが御存命であったならば、丁度、隼也様と同じ位だったのです。響様もその姿を重ねて見たのでしょう」

東雲自身もその姿を想起しているのだろう。懐かしむように目を細めている。


「そうか...。あまり辛いようなら、元の服に戻ろうか?」

「いえいえ、響様も私も辛いとは思ってはいません。どうか、そのままでいて下さいませ。折角、お似合いなのですから」

微笑んだ東雲の目からは、確かに辛いと言う感情は伝わってこなかった。いつも通り、見守るような優しさを感じる目だ。


「そうでした!あまりに隼也様の姿を見て、懐古していたもので、忘れていました」

「どうしたんだ?」

「隼也様、どうか、奏お嬢様の元へ付いてやって下さいませ。目紛しく変わる状況と先の見えない不安で、お嬢様も不安でしょうから」


それも当然だ。これからどうなるか、俺自身も不安だ。誰も先の事など分かりはしない。

だからこそ側に誰かが付いていてくれた方が、僅かでも心に余裕が出来るだろう。

「分かった」と、声を掛け、洗面所を出て階段を登って行った。





妖怪と人との間の子。

人の子が何らかの要因で生まれつき妖気を備えると言うのは非常に稀であるが、それの更に上を行く希少な存在だろう。

そもそも、人と妖怪の間に子が授かれる事も珍しい上、何より妖怪と伴侶になると言う事が困難なのだ。

人とは思考、価値観、世界観が違い過ぎるからだ。

人と、人では到底不可能な程の悠久の時を生き続ける妖怪。寿命の長さと言うものは想像以上に、その者の価値観に変化をもたらす。

寿命が短いほど、子孫を必死に残そうとするだろう。しかし、寿命が長い生物ほど、必死さは薄れていく。

時間がある分、機会もあるからだ。

それに加え、妖怪はそれぞれ強弱はあれど、力を持っている。天敵と言えるものが全くと言っても良い程、存在しない。

悠久の時と死の心配の少ない強力な妖怪ならば、子孫という発想すら存在しないのかもしれない。

僅かな一面を取り上げて見てみても、人と妖怪との違いははっきりと分かる。


その奇跡の内に生まれた奏の命を、妖怪は今度は奪おうとしている。

死後、どのような結末を辿ろうとも、例え、妖怪としての生が存在するとしても、それは看過できる事では無い。

あと1日。

彼女が諦めなければ、自分も諦めはしない。


ドアをノックする。薄暗い廊下に乾いた音がこんこん...と響き、一呼吸おいて「入っていいよ」と聞こえた。

「入るぞ」

そう言ってドアを少し開けて部屋へと入ると、奏は窓辺のロッキングチェアでゆったりと揺れながら、本を抱き抱え、月を見上げていた。

部屋の電気は点いておらず、月明かりだけが窓辺を照らしている。

その隣へと歩み寄る。奏の見ている方を見ると、奇妙に大きく、満ちつつある月と青白く照らし出された廃墟と化した街並み。そして、地上から邪魔する光の無い満天の星があった。

見た限り、電柱などの電気系統の設備は全滅のようだが、何故か電気は使える。元の世界との関係はそのままに、この屋敷だけをこの世界に転移させたのだろう。



ここは俺から声を掛けてやるべきなのだろうか?

奏はこの光景に何を想うか、ただただ押し黙って外を眺めている。考え事をするように時折、暫くの間俯くが起きてはいるだろう。




「この本ね...僕のお母様がくれたものなんだ」

奏は大切そうに抱えていた本を、表紙を上にして膝の上へと置いた。

随分と古い本だ。落ち着いた印象を受ける紫の表紙にはおおよそ題名と見て取れる文字は無いが、右下の隅の方に金の字でこう綴ってあった。

『The meaning of my Life』

奏の母親、高嶺舞がどのような意味を込めて、この字を書いたかは知り得ないが、何より大切な子供達への贈り物の本だったのだろう。

「何が書いてあるんだ?」

「分からない。意味は何となく分かるけど、読めない」

そう言いながら、奏は適当なページを開いて見せた。それを見て奏の言いたかった事が理解できた。

ページを埋め尽くす程の、見た事の無い文字列と複雑な図形群。記憶する限りのどの文字にも該当しない。

ペラペラと数ページを捲るも、どのページにも不可解な文字と図形が描かれている。


「何と無く意味は分かるって....この本は何を伝えたいんだ?」

本を優しく閉じ、奏は表紙をそっと撫でた。

「この本は多分、全体を通して術式が描かれてる。効果も規模も分からないけど....」

「そうか...まぁ、母親がくれた本なんだろ?きっと、奏をいつか助けてくれるんだろうな」

「うん」


奏の横を通り抜け、窓辺に手をついて外を眺める。

実際に感じる訳ではないが「冷たい月」と例えるのがしっくりくる。これ程まで満月へ向かう月を憎く感じた事は無かっただろう。


その隼也を顔を上げて見た奏が、驚いたような表情を浮かべた。

「あれ?隼也、そのスーツは?」

「ん?今、気がついた?」

そう言えば奏は今まで、本か窓かだけを見ていた事を思い出した。

「今までの服がボロボロになっちまったからな。奏の父さんから奪った」

「奪った?...嘘つき。貰ったんでしょ?」

「さぁな」

側から見ればただの悪党なのだろうが、奏にはこの程度の隠し事、見抜かれているらしい。

月明かりに照らし出された顔が僅かな微笑みを含んでいる。

「似合ってる...とっても」

「そうか。ありがとうな」


どちらからとも分からないが、静かな沈黙が続いた。

別に苦しくはない。ただ、それだけで満たされるような感覚。




「あのっ....!」

唐突に切り出したのは奏だった。

振り向くと、こちらを見上げている。いくら特殊な境遇にあろうとも、こういう所はただの勇気を出して何かを告げようとする少女だ。

「どうした?そんなに改まって」

真っ直ぐにこちらの瞳を見詰める奏。一見、普通の少女だ。しかし、妖怪である隼也を視認する為の藤色の瞳を見ると、彼女が最後まで向き合わなければならない、妖怪としての奏までも見えてしまう。



「その...」

意を決して切り出そうとしたものの、喉元で言葉が詰まってしまう。今まで生きてきて、これを教えて関係が崩れ去る。そのような経験を嫌になる程、ウンザリする程に繰り返してきた。

その度に、相手の記憶の中の本当の私を消して、縁を切る。

そして、妖怪である事を理解してもらえなかった自分と、それを無かったことにする為に妖怪の力に頼る自分へ嫌悪を抱くのだ。


きっと大丈夫。

そう繰り返し言い聞かせても、私の心は怖がりで、失いたくない、嫌われたくないとワガママを言って憚らない。

「っ....僕は.....」

やっと押し出した言葉も、か細く途切れてしまう。本当に伝えたい事が、胸の奥へと逃げて行ってしまう。



違う。僕がこうすると決めた事だ。

誰もそれを邪魔する権利は無いはず。

僕の人生だ。僕の心だろうと....僕の邪魔をするな。



「隼也....見てほしいものがあるんだ...」

一度、口に出してしまってからは気が楽になり、後は早かった。

隼也へ背を向けて何の警告も無しに、上のパジャマを脱いじゃったから隼也も驚いたかもしれない。

背中を向けたまま、上半身一糸纏わぬ姿になった。


「.......どう?」

「いや...どう?って言われても...なぁ」

隼也へと背中を晒す。確かに怖いが、期待している自分もいる。隼也なら認めてくれるんじゃ無いかと。


「細いなぁ...とは思ったけど?」

「え...?いや、この背中について聞いたんだけど...」

どういう事だろう?隼也には見えていない?

僕の身体に描かれた無数の術式、僕を守る為に与えられた数多の護りが。


「別に....?どうとも思わねぇよ?それを言えば俺の方が人外だろ」


「勇気を出して言ってくれたらしいけどさ、奏が自分を人と思えば人。妖怪と思えば妖怪だろ。身体中、術式だらけだろうが、何だろうが....結局は自分がなりたいと思った方になるんだろ?」



「奏が人でいたいと言うなら、人だ。贅沢じゃ無いか、自分で人も妖怪も選べるのはお前くらいのもんだろ?」


やっと認めてもらえた。

本来なら取り分け記憶に残るような事じゃ無いのかもしれない。だが、僕にはそれが何より嬉しかった。自分と自分以外との違いを認められて。

想像以上に軽かった隼也の反応も嬉しかった。理解されても、気を使われるのは気持ちが悪い。

良かった。本当にこの人で良かった。


「しかしなぁ....随分と複雑なモノ背負ってんだな」

肩甲骨の間から少し下を中心に6つ、術式が放射状に広がっている。術式は中心から伸びた幹から樹状に展開しており、恐らく前まで続いている。

奏が部屋を暗くしていた理由が分かった。元々、白い肌に藤色の光を帯びた術式だ。明るい所では見難かっただろう。

「これのお陰で、ただの妖怪、ただの人間、そうは生きられなかったんだ」

「嫌だったか?」

「...ううん、全然。お母様が遺してくれたものだし....」

奏が胸へと両手を添えて、肩越しにこちらを見て笑った。

「今は隼也も守ってくれてるしね」

壁に反射するのは、よく見慣れた光。青藍の妖気が奏の胸から漏れ出ている。


あぁ...あの時の剣か。

「気に入ってくれて何よりだ」


「あ〜ぁ、なんか今日は疲れちゃったな。僕、そろそろ寝ようかな」

「あぁ、そうか。じゃあ、俺はまた見張りに行.......

「待って。寝るまで待ってて」

部屋から出ようとした隼也を引き止めた奏。

「別に良いけど...」

そう言いながらロッキングチェアに腰掛けると、奏は満足そうな顔をしながらベッドへと潜り込んだ。


「おやすみなさい」

「おやすみ。奏」


時計を見ると11時26分を指している。

明日のこの時は、マグナとの約束の時間だ。

そう思うと、緊張や恐怖といった感情に胸が締め付けられるように苦しくなる。

そういった感情を吐き出すように、天井を見上げながらゆっくりと深く溜息を吐いた。


「....死ぬかもな...」

一度死に絶えた身だ。今更死のうが、元の在るべき姿に戻るだけなのだろう。

一度目は力も何もなく、友の血に塗れ、風化し燻んだ鉈のみを持って、何も考えず死ににいった。

だが、今度は違うんだ。

この手の中にあるのは粗末な鉈では無い。

多くの想いを背負う輝かしい直刀と、ほんの僅かの間ではあったが仲間であった先達たちの力の象徴。


大狼樹の『風迅剣』天樹かおるの『両儀刃【黎明】』

天樹あやめの『両儀刃【落陽】』累葵の『天穿ち』

双羽竜胆の『天狼•熾爪』星良蓮の『宵蛍鎖』

そして、犬走椛の『無銘の剣盾』

今の俺には力がある。まだまだ敵いはしないが、自分より強大な者へ楯突く力が。

やれる事をやるしか無いだろう。万に一つも勝てはしない。だが、今は勝たなくても良い。意地汚くても彼女に生きる意志がある限り、生かしてやるのだ。


手元に妖気を集め、愛用する妖剣を創り出した。青白い月光に負けじと深い青藍の光を放つそれは、いつも以上に頼もしく目に映る。

何よりも自分が信を置く剣だ。

「大丈夫、やれるさ」

そう呟いて、ロッキングチェアの横にある小さなテーブルへ妖剣を立てかけたところで、大きく欠伸が出てきた。

昔から、何もせずに考え事をしていると無性に眠くなってしまう。不用心過ぎるとは思うが、少しの間仮眠を取ることにした。













〈来る日も来る日も〉

〈貴様は今日も己を抑え込んで、作り上げた笑みを顔へ貼り付ける。〉

〈辛くは無いのか?〉

「辛くない。...って言いたいけど...辛いよ。とっても辛い」

〈そうか...そうだろうな。〉

〈私もその痛みはよく分かる。身を以て体験せねば理解できない痛みだ。〉


気が付くと僕は窓際に立っていた。

微睡みに落ち行く中で見た月明かりは変わらない。

確かに自分が長年暮らし部屋だが....

違う、この部屋は....2人分の温もりが残る部屋だ。

今の、僕1人がただ居るだけの部屋とは違う。2人分のベッド、2人分の勉強机、2人分のロッキングチェア、2人分のクローゼット。

10年前の....お兄様が生きていた頃の部屋だ。


その部屋の入り口、月明かりが届かず薄暗い中に、それはいた。

それは僕に話し掛けてくる。


随分と精神が安定したな。前回のような動揺は見られない。


耳ではなく胸の内へと響くような声で淡々と話す、ダークブルーの鎧。

全く見えない兜の奥には、あの時と同じ様に、今も射殺すような双眸が僕を見詰めているのだろう。


「今度は何をしにきたの?お母様とお兄様に続けて、僕も殺せば満足?」

どうしてか、挑発的な言葉が出てきた。

僕は知っている。お父様には告げてはいないが、母親と兄の命を奪ったのは、単なる事故では無かった。

小さい頃から妖気に関しては、兄よりも敏感に感じ取る事が出来た。だから、事故の真相を知れたのは、僕とお母様だけだったと思う。だけど、お母様は私を救う為に命を受け渡した。

もう、あの悲劇を知るのは僕しかいないんだ。


〈そうか...知っていたのか。殺したのは私では無いが心当たりはある。〉

〈満足か?と問われればそうでは違うな。私が見たいのは血などと言う陋劣な物では無い。〉



「じゃあ、何で僕の所にまた現れたの?」


〈警告だ。どの様な行程を経るかは貴様の選択次第だが貴様は明日の夜に死ぬだろう。だが、そこで諦めるか、立ち上がるかは選ぶ事は出来る。〉


「諦めたら死ぬだけ....なら、諦めなければどうなるの?」


〈今とは比較にならない程の苦痛を伴う、艱難辛苦の旅路になるだろう。血も涙も流れる、正に地獄の様な物だ。〉

〈だが、得る物も有るだろう。今の貴様には手が届かない、見えすらしないものがだ。〉


「僕は...諦めたくない。僕が止まったら、お母様にも、お兄様にも顔向け出来ないから」


〈ふっ...そうか。〉

〈諦めると言うならば、無駄に苦しむ前に今此処で魂を壊してやろうとも思っていたが...〉

〈無駄な気遣いだった様だ。〉


〈ふん...少し話し過ぎたか。〉

〈まぁ、良い。〉

〈諦めないと言うなれば、精々足掻くが良い。貴様等の想像以上に行先を遮る者は大きいぞ。〉


鎧は踵を返し、部屋の入り口のドアへ晴れ間の霧の様に消え入っていった。


「僕は諦めないよ。苦しくても、死ぬ事になっても、失いたく無いから。僕はもう背負うのは精一杯だから」


とす.....

鎧が消えた途端、気が抜けてへたり込んでしまった。

身体が小刻みに震えている。強気に出はしたものの、心は恐れをなしていたらしい。

「ふぁ...ぁあ......」

大きく欠伸が出てきた。突然、眠気が襲ってくる。

張り詰めていた気が緩んだらしい。覚束ない足取りで立ち上がり、ベッドに腰掛けて横へ倒れ込んだ。

布団もかけないままに、瞼を支えきれなくなって行く。

「.....すぅ.......」










「あぁ、またここかよ」

地平線の見えない暗い世界。

少し動く度に足元からは水面の様に波紋が立つ。

頭上では無数に星の様な細かい光の粒が、ついては消えを繰り返している。


そう、眠りに落ちると、この夢を見る事がある。

何時も通りならば、少し経つと....


《もう慣れたかしら?》


誰だか分からない女性の声。

妖怪として目覚める前の夢も、奏の世界へ来る前の夢も、この声が道筋を照らす。


「何にだ?」

《妖怪の身体によ。》

「お陰様で、絶好調だよ。....どうせ、そんな事を聞く為に夢に出てきた訳じゃないんだろ?」


《えぇ、そうね。》

《明日の貴方へ少し助言を...ね?》

「へぇ、マグナの倒し方でもご教授頂けるのか?」

《そうではないわ。今の貴方では彼がその気になれば、何も出来ないままに消されるでしょうね。》

「諦めろってか?あんたにとって、そんなに消えて欲しく無い手駒か?俺は」


次の言葉まで少し間が空く。

《ええ、重要よ。こんな場所で失われるべきでは無い程にはね。》

《しかし、今の最優先事項は彼女よ。》

「奏か。勿論、守り通すつもりだ。あんたが気にするまでも無い」

《いいえ、違うわ。貴方には守り切れない。》

「はぁ?何を知っててそんな事を言っ....

《マグナの強さを知ってて言っているのよ。》

「っ....」


《貴方に一つ、指令を与えるわ。》




《彼女は貴方の手で殺めなさい。》

「は...?」

理解が追い付かなかった。処理が追いつかずに唖然としている自分は、今間抜けな顔を晒しているのだろう。少しの間固まり、命令を理解した時、どうしようもない怒りが腹の底から噴き上がってきた。


「...っざけんなよ!それじゃあ、やってる事はマグナと同じじゃねぇかよ!」

《そうよ、目的はマグナと同じよ》

やり場が無く飽和した怒りに、妖剣を創り出して地面へと叩き付けた。打ち付けられた激情とは対照的に足元には深々と申し訳程度の波紋が立つ。


《恐怖や痛みは肉体だけではなく、魂までも傷付ける。魂が傷付けば様々な障害が発生し、最悪、妖怪としても生まれ変わらせることも出来なくなる。》

《そう、今の貴方の様に記憶を壊されるかもしれない。記憶だけならば幸運ね。もし、彼女が1人で飲食、運動、思考、発声、呼吸、排泄、大凡動物が生きる為に必要な行動が出来なくなる程に魂が傷付けられようとも....私は彼女を妖怪として呼び出すつもりよ》


「このっ....外道が....!」

手に持った妖剣へ力が篭る。

余り強く握り締め過ぎて、今にも爆発が起きるまで妖気が腕に集まっている。

顔も知らないこの女性の声には、確かに意思が篭っているのが分かった。奏がどうなろうとも、此奴は奏を呼び出すつもりなのだ。


《だから、彼女が苦しむ前に貴方が眠らせてあげなさい。ごく簡単な事よ。ただ、ゆっくりと妖気を流し込んであげれば、何も苦しまなくて済む。そうすれば、妖怪としての第2の生を受ける事が出来る》


「なんでだよ。どいつもこいつも...あいつが何か悪い事でもしたかよ!」

バァン!

腕の妖気が爆ぜ、逆手に持った妖剣が地面へと突き立てられる。地面から噴火を起こしたかの様に、爆炎が立ち昇った。

こんな事をした所で意味が無い。分かってはいるものの、何かにぶつけなければ自身が破裂してしまいそうだ。


《貴方も貴方なりの考えがあるのでしょう。でも、言っておきましょう。貴方達は必ず私の言った通りの運命を辿る。貴方も、彼女の事を思うなら苦しませてあげないで》


反響し語り掛けてきていた声がぱったりと消えた。

地面に突き刺さる妖剣が妖気の供給を断たれてヒビが入り、バラバラと崩れ落ちる。妖剣の破片が起こした波紋が次第に霞んでいるのを見た。

もうそろそろ、この忌まわしい夢から目覚めるらしい。

満天の光の粒が滲み消えてゆき、意識が遠い所へと引き戻されていくのが分かる。

「どうすりゃ正解なんだよ...」


















ーtipsー


『妖気と人体について・上』


※この設定は原作に忠実なものでは無く、個人的な解釈、設定、見解が非常に含まれています。



『妖気』とは

本来、妖怪が持つ力の事。

妖怪はこの妖気を扱い、様々な術の行使を可能としている。しかし、その本質は通常の生命体で言う所の『体力』『生命力』と非常に近い物である。


生命体が自身の体力の限界を超えて活動し続ければ、自らの生命活動に異常を来し、最悪

死に至る。それと同じ様に、妖怪も限界を超えた活動を続ければ、妖気は枯渇し死に至る、或いは消滅してしまう。

妖怪が妖気を消費して行使する術は、人間が体力を消費して行う運動と同じである。行き過ぎれば死に関わるのだ。


また、人間の体力と同じように、妖怪も訓練を行えば妖気の上限を大幅に伸ばす事が可能である。

白狼天狗の里の戦闘員と非戦闘員が良い例である。

戦闘員は幼い頃から厳しい修練を積み上げ、妖気による攻撃や空中浮遊、結界など、高度な術を行使する事が出来る。

しかし、一方で非戦闘員は修練を積んでいない為、妖怪であるにも関わらず、身体能力の高い人間と然程変わらず、妖気を扱う事も出来ない。

勿論、妖怪である以上、妖気を持たない訳では無い。妖怪にとっての妖気は、人間にとっての生命力。当然、全ての妖怪が等しく持っている。


妖怪の生命力が妖気であると言うことは、より強大な妖気を備えた強力な妖怪ほど、死から遠ざかると言う事だ。

上位の妖怪となれば、身体に風穴が開けられようとも、短時間で修復してしまう程の妖気を持つものもいるだろう。





妖怪には大きく分けて2種類がある。

先天的に妖怪だった者(以降『前者』と表記)と、後天的に妖怪になった者(以降『後者』と表記)。

前者は人間の恐怖や概念、自然現象などから形を成した者。或いは、より強大な妖怪によって創り出された者など。

後者は、生き物や道具などが長い年月を掛けて、次第に妖怪と変化した者などである。


相違点は、前者が『数が少ない』『強大な力を持つものが多い』『寿命に制限は無い』『経年で成長する事が無い』

後者が『非常に数が多い』『力が弱い者も多い』『寿命が存在する』『経年で成長出来る』


最初に『数』について。

前者は例を挙げると、森の騒めき、洪水、台風等の自然現象や、夜、闇、病、飢饉といった概念等へ、人間が抱いた感情から生まれた者だ。

後者は例としては、本来の寿命以上に生き続けた生物や、使われなくなった道具へと次第に妖気が集まり変質した者。

前者も決して少ない訳では無いが、後者の方は大小強弱合わせると、常に無数に生まれ続けている。


次に『力』について。

前者は人間が太古より向き合い続けて来た、時に無慈悲な災害や恐怖の具現である。

そこには、人間からの恐怖や畏敬などが向けられている為、必然的に強大な力を持つ事となる。

それに対し、後者は元が通常の生物や、使用されなくなった道具などである為、人間からの畏敬の念などは前者と比べれば薄い。

しかし、前記した通り、妖気は相応の修練によって伸ばす事が出来る為、例外もそれなりに存在する。


3つ目は『寿命』について。

自然現象や夜、暗闇などは幾ら時代や環境が変わってしまおうとも不変である為、その象徴である妖怪も消える事は無い。

しかし、後者は元が生物や道具である為、妖怪と化して規格外の寿命を生きたとはいえ、身体の活動の限界や老朽化などで、やがて寿命を迎える。

簡単に言えば妖怪の寿命とは『元となったモノが壊れた、或いは消えた時』と言う事である。


最後に『成長』について

これについても『寿命』と同じ様な理由である。

自然現象は不変のものである為、前者は単純な経年での成長は見込めない。

しかし、後者は通常の生命体や道具が経年により、妖気を溜め込み妖怪化した者である。

その為、経年でより妖気を溜め込む事でより強い妖気を持つ事が出来る様になる。

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