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小説人生 今と昔

 私が小説を書き始めて、もう5~6年になるだろうか。遅筆ながら作品数は増え、「小説家になろう」に載せた物だけでも60作品はある。そんな私が小説を書くきっかけとなったのは、漫画である。

 漫画と言っても、いわゆる版権ものではない。突如「自分で漫画を描きたい」と思ったのだ。それが今に至る創作活動の原点であった。何故描こうと思ったのかは、実はよく覚えていない。ただ二人の妹達を巻き込んで、裏紙にマスを引いて描いた。人間の絵を描くのが苦手だからといって、ドラゴンを主人公にした。他に犬と鬼という種族がいた。属性の要素も入れた。

 そんな風にして設定が作られた漫画『(りゅう)(けん)()(せい)の大冒険』は、残念ながらたった数コマ描いただけで飽きてしまった。けれど、この一種の気の迷いが私に「創作」という概念、選択肢を与えたというのは間違いない。


 もともと、私は空想癖があった。小学校に上がる前から、ゲームのキャラクターを頭の中で勝手に動かしたりした。また全然別の設定を作り、頭の中で物語を構築することもよくあった。だから、いずれそれを作品として昇華する可能性はかなり昔からあったのである。

 そんな私が小説を書くことになった直接のきっかけは、中学の技術の時間にワードファイルの使い方を教わったことである。そのときに「これで小説も書けるんじゃないか」と思い立ち、家に帰ったときに早速探してみた。授業で一太郎もワードとだいたい同じと聞いていたので、デスクトップにあった一太郎のアイコンをダブルクリックして立ち上げたのだ。

 すでに漫画を描くことに挫折していたから、パソコンで文章だけを打ち込むのは簡単だからいい、という考えに至った。絵が描けなくても、文章なら打ち込める。最初はそんな軽い気持ちで小説を書き始めたのだった。

 昔から小説が好きだったかというとそうでもなく、自分からはあまり作品を読まなかった。むしろ漫画を読むことの方が多かったくらいだ。一応、中学のとき毎朝読書をする制度があったのだが、そのときくらいしか読まなかった。そのとき読んだ本に影響を受けたが見本にすることはなく、最初はほとんど我流でやっていた。その文章はせいぜい作文レベルだったと言ってもいい。

 だから今小説を熱心に書いている人にすれば、そんな甘ったれた気持ちで臨むものじゃないと思うことだろう。小説を書くという勉強をすることもなく、とてつもなく軽い気持ちで書いていたのだから。


 そうして小説を書くという選択をした私は、書くための話を構築した。空想の一部を書き出しても良かったが、物語として描くには混沌としすぎていた。まるで口伝の神話のようにまとまりがなかった。だから新たに話を構築したのだ。もちろん、空想時代の“神話”の一部も取り入れた。こうして処女作『魔法使いの世界』が生まれた。

 当時はいわゆる小説の作法など知らず、自分流の書き方で好き勝手書いていた。またプロットという概念もなく、ただの思いつきだけで物語を進めていた。だから『魔法使いの世界』は行き当たりばったりの物語だ。

 プロットに関しては、今もあまり作り込まないのでそう変わらない。ただ、「あらかじめ書きたいことをまとめておく」という概念があるという点では、少しは成長していると思う。

 最初は完全に自分だけの趣味で、誰かに見せようというつもりで書いてはいなかった。どこかに応募してみようという気持ちもなかった・ただ自分が見るだけなら、不格好でもたいして問題にならない。場合によっては黒歴史確定ではあるが、そうなっても自分の中にしまっておけばいいだけの話である。

 けれど物語が書き上がってくるにつれて、誰かに読んでもらいたいという意識が生まれてきた。自分の作品に自信があったからなのか、それとも評価が欲しかっただけなのかは、よく覚えていない。ただ誰かに見て欲しいという欲求があったことは確かだ。

 その頃よくネット上の二次創作を見るのも趣味だった。だから公開するならサイトを立ち上げたいと思っていた。まだ高校生だったから、無料で使えるサーバを調べ、その中からより手間のない物を選んだ。すでにYahoo!のアカウントを持っていたので、Yahoo!ブログを開設してそこに載せることにした。

 もちろん、載せただけでは人なんて来ない。ましてや感想も来ない。だから小説を書いている他の人とブログ友達になったり、小説のサーチエンジンに登録したりした。そのときに「小説家になろう」というサイトにも出会った。

 恥ずかしい話、当時はてっきり宣伝や検索に使えるサーチエンジンのようなサイトだとばかり思っていた。だから初期の頃はなろうに出没することは稀で、ブログメインで作品を書いていた。なろうが作品を書ける場所だと知ってから、しばらくは『魔法使いの世界』の宣伝用と、携帯投稿の場として利用するだけであった。高校は電車で通っていたから、電車に乗っている暇な時間にガラケーからちまちま書いていたのだ。そのときの作品が『歌声レストラン』である。

 そんな状態だった当時、今のようになろうメインで作品を投稿するだなんて夢にも思わなかった。私の作品一覧を見て、Nコードの末尾が「A○」の作品がごっそり抜け落ちていることからもお察しの通りだと思う。


 そうして書いた小説を公開するにつれて、他人の小説も読むようになってきた。ネットの作品も読むし、数は少ないが文庫本も積極的に読み始めた。良いと思ったことは自分の文章に取り入れ、逆に悪いと思ったところは反面教師にして自分の作品から除外する。そこで小説作法というのも知るようになったから、徐々に成長はしていったはずである。

 また他人の作品を読むとインスピレーションが湧いて、自分も書きたいという気持ちに駆られることもある。そうして生まれた作品が果たして「オリジナル」と呼べるのかは議論されることだとは思うが、ここではとりあえず触れない。ただ発想の元が他人の作品だったとしても、頭の中で空想から構築する際に変容して原形をとどめていないことがほとんどだから、少なくとも「二次創作」と呼ぶにはおぞましい代物だ。ファンの方から叩かれることは間違いない。

 最初のうちは小説を上手く書こうなんて思っていなかったと述べた。何かお手本にする物もなかったと。けれど他人の作品、特にネット小説を読むと「何が良い小説か」を嫌でも考えさせられてしまうものだ。ここで言う「良い」とは普遍的な物ではなく、あくまで私個人としての「良い」である。私はただ作品を書くだけでなく、良い作品になるように洗練するようになった。

 読者としての目線を生かし、読者に配慮した文章に仕上げる。そこに私の趣味・嗜好はかなり含まれているが、私は理想を追求すべく洗練した。

 洗練したとは言ったが、実際に私がどの程度なのかは、よくわからない。自分の文章に慣れすぎて、自分では文章の巧拙がわからないのだ。だから読者に下手だと思われれば下手なのだろうし、上手だと思われれば上手なのだと思う。ただ、書き続けてもやはり理想には遠いと思っているから、仮に「文章が上手い」と褒められてもあまり嬉しくなかったりする。

 というか、5~6年も書き続けていまだにマイナーなのだから、私の実力なんて所詮その程度なのだろう。人気と巧拙は必ずしも同値ではないが、私の意見なんて取るに足らない戯れ言だということに変わりはない。

 相変わらず人気はほとんど出ないが、時間があれば私は書き続けてしまうのだろう、と思っている。

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