幼馴染
「風花‼︎」
ふいに名前を呼ばれた。
聞き慣れた声に笑顔で振り向く。
「あっくん。 どしたの?」
肩で息をしながら笑う彼はあたしの幼馴染。
「いや‥。体力づくり。へへっ」
あっくんこと 篠崎蒼生は屈託のない笑みで顔をあげた。
小学6年、残り4日となったあたしたちは委員会の仕事で放課後、体育館に残されていた。
「ほら、ないってゆってたろ。画用紙。早く準備済ませて帰ろーぜ」
「しあさってで あたしたち、卒業式なんだね…。なんかそんな気しなーいっ」
卒業式でつかう桜の花びらの形をした淡いピンク色の画用紙を切り取る。
あたしの方はシャキシャキと軽やかに音がなるけれど、あっくんは不器用だから変な形になってゆく。
「あー、もう。それ桜じゃないよ」
「っるせ‼︎ 俺だってな、やればできんだよ」
そう言いつつもさらに小さく、おかしな形になってゆく。
「かしてごらん。」
すりすりと近づき腕をのばす。
「…っ‼︎」
「え?」
「…わり なんか今、どきってした」
「え⁈」
突然の告白に戸惑う。
「‥いつものことじゃん‥。あっくんいつもあたしの隣でしょ⁇」
なんだか、変な感じがした。
「だな」
ふにゃっと顔をくずして笑う。
この笑顔を何千回と見ただろう。
ほっとする。
あっくんは世界一の幼馴染だと改めて思った。
卒業式当日、家が隣のあっくんはもう家の前で待っている。
「ごめんごめん、遅れた」
焦りながらすこし駆ける。
「おう‥。てか、スカート短くね?」
「え?みんなこんなもんだよ」
「そうか?」
「そうだよ。あっくん、みんなのこと変な目でみちゃだめだからね‼︎」
最近、男の子になってきたあっくんを思い出し念を押す。
「わかってるよ‼︎」
少し機嫌を損ねたようだ。足が早くなる。
可笑しくてつい ふふ と笑ってしまった。
この先ずっとあっくんと幼馴染でいられたら‥。そう思い、足を早めた。