伊藤翔平(仮名)
まず一人目の被害者。
伊藤翔平(仮名)、十七歳。
都会の中にある高級住宅街、その一角のとある家庭に生まれる。父と母の三人暮らし。
父親は会社の社長。母親は別の会社の重役。とても裕福であり、小さな頃から欲しい物は何でも両親が購入してくれていたようだ。成績もよく、偏差値も高い。高校も親のコネを使い、有名進学校に進学。
しかし、小さな頃から両親は夜遅くまで仕事であり、家では孤独な時間が多かったようだ。両親からの愛情を感じないまま育った伊藤は、その寂しさを紛らわすように、付き合う友人も素行が悪い者が多い。表では優等生。裏では恐喝、暴行の常習犯。そのアンバランスな内面は、両親は気付いていなかった。
とりわけ、高校に進学した後の素行は目に余るものがあり、同年代の男子生徒からの話では、世の中は自分の思い通りになると考えている面が多々見えていたらしい。だが、それも仕方がないのかもしれない。小さな頃から物だけを与えられ、何も困ることもない、何も我慢することもない、誰もが羨むような生活を送っていたその生活では、他人のことを想う気持ちなど育むことが難しいだろう。
次が、二人目の被害者。