杉谷総一郎(仮名)
被告人は、杉谷総一郎(仮名)、36歳。
生まれは関西某県のごく普通の町。両親と兄、妹、祖父母、曾祖母の八人家族の中育つ。小・中学校では物静かで真面目な少年であり、高校も県立の普通科に進学。偏差値も平均的で非行もなく、むしろ家族思い、友人思いの優しい青年だった。
高校卒業後は家庭の負担になるからという理由で大学には進学せず、地元の中小企業に就職する。
勤務態度は真面目であり、仕事が特別出来たわけではないが、その人柄から会社での評価も良かった。会社の同僚にも恵まれ、安定した生活を送っていた。
二十九歳の時に友人のツテで二つ年下の女性と出会い、三十歳の時に結婚。その女性も杉谷と似た性格であり、綺麗な女性だった。杉谷の友人たちは言う。
『よく出来た奥さん』
『総一郎にはもったいないくらいの女性』
もちろん、杉谷自身にとっても自慢の妻であった。
三十三歳の時に待望の長女が生まれる。家庭仲は大変良く、贅沢な暮らしではなかったが、幸せな家庭であった。
平たく言えば極普通の人間。何一つ変わったことのない、平々凡々な人生を送っていたはずの杉谷が、今回の事件を起こす。
さて、次は被害者について話すことにしよう。