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おはよう、ちえちゃん

作者: 大空東風

おはよう、ちえちゃん。

今日はとってもいい天気。

すずめがちゅんちゅん集まっています。

あらあら、ちえちゃんお友だち?

お母さんはにっこり笑います。

今日は楽しい一日になりそうね。



おはよう、ちえちゃん。

太陽はぎらぎら、今日は暑くなりそう。

お母さんはお庭の小さな木にお水をあげます。

大きくなあれ、大きくなあれ、と歌っています。



おはよう、ちえちゃん。

今日は朝から雨がざあざあ。

お母さんは心配そうにお庭を見ています。

外をこどもたちが走っていくよ。

赤色、黄色、青色、ピンク。

いろとりどりの傘がとってもきれい。





お母さんは、朝起きるといちばんにカーテンをあけます。

まっさきにあいさつをするのは小さな木です。

それから朝食を準備して、お弁当を作ります。

家族を見送ったあとは、お母さんはひとりぼっち。

お仏壇に手を合わせたあとは、ほっとひと息。

縁側に座って写真を見ています。

お母さんが小さな小さな苗木を持って写っています。

となりには小さな女の子を抱いたお父さんがいます。

みんなとっても幸せそう。

にこにこ、にこにこ笑っています。




小さな小さな苗木は、今ではお母さんと同じくらいの大きさに育ちました。




おはよう、ちえちゃん。

お母さんはいつものようにカーテンをあけてあいさつをします。

ところがなんということ、小さな木が折れています!

昨日の晩の強風のせいでしょうか?

心無い者の仕業でしょうか?

お母さんは髪の毛を振り乱して名前を何度も呼びました。


ちえちゃん、ちえちゃん。


おはよう、お母さん。


女の子の声です。

お庭のすみに、女の子が立っています。


あなたはだあれ?


わたしはちえ。


お母さんは信じられませんでした。

十歳くらいのかわいい女の子です。

お庭の木もちょうど十歳です。

なんということ!

お母さんは女の子をじろじろ見ました。

顔色を変えて女の子に近づきます。


ちえは、わたしよ、お母さん!

ちえは、わたしよ、お母さん!


お母さんは女の子に向かって絶叫しました。

お母さんは女の子を突き飛ばします。

お母さんは女の子が泣き叫んでも知らんぷりです。

お母さんは女の子が持っていたのこぎりを引ったくりました。


あんたなんか、ちえじゃない!

あんたなんか、ちえじゃない!


お母さんは狂ったように叫ぶと、のこぎりを振り上げました。





お母さんが大切にしていた木は、もうありません。

幸せそうな女の子が写った写真もありません。

家はひっそりと静かです。

ただ、朝方だれもいないとき、ちえちゃん、という声がきこえるのだそうです。



おはよう、ちえちゃん。


全国のちえちゃん、すみません・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] おはようございます。 読ませていただきました。文章の書き方が、怖さを倍増させていて、ラストまで「どうなるんだろう」と目を離せませんでした。 全てを明らかにしないところが、想像を掻き立てられ…
[一言] 読ませていただきました。 女の子は、なぜノコギリを持っていたのでしょうか? その辺りの説明があると、うれしいです
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