三話 黄色い通路を歩く凪
さっきまで真っ白だった空間が、いつの間にか黄色い通路に変わっている。
僕は夢を見ているのだろうと思いながら歩を進めていた。
「ちなみにじゃが、この世界には名字という概念が無いからのう。捨てるのじゃ」
「分かりました!」
灰色の髪の人……順応が早い……
「え? それで良いのか?」
子供の感覚がまさに正しい。普通は苗字なんて簡単に捨てられるものじゃないが……
「苗字が無くとも、魔法で誰が誰だか分かるのじゃ」
「え!? 魔法!? この世界に魔法があるのか!?」
女好き黒髪がちょっとテンション上がったか……絶対変なこと考えたな……
「魔法あるぞい!」
「いよっしゃ!! 超楽しみだぜ!!」
色々変なことが起こってるから、魔法がある世界は納得するけど……夢じゃないのか?
◆
「着いたぞい」
目的地に着いたようだ……
周りを見渡すと、部屋の中にはきらびやかな武器がずらりと並んでいて、まるで武器庫みたいだった。
「この世界では、バトルに勝ち続ければお金がたくさん貰えるイベントがあるのじゃ」
「へ〜! それは面白そうだな!」
バトルでお金が稼げるなんてゲームみたいな世界……
「面白そうではあるが、それを生業とすることは簡単ではなさそうだな」
子供のくせに謎に冷静で偉そうだな……頭がいいってことかな。
「それで急な話になるのじゃが、一人ずつ試しにわしと戦ってもらうぞい」
「え!?」
神と……戦う……!?
「今から隣の部屋でやるからのう。順番は構わないから、それぞれ武器を持って来るのじゃぞ」
「神様と戦うんですか!? 神様の体に傷を……!?」
さすがの灰色髪の男も動揺している……それはそうか。
「わしのことは心配しなくて良いぞい。わしは神様なのじゃからのう」
いや……神様より僕らが怖いな……
「我は神の心配をしていない。むしろ心配なのは我たちだ。我たちが神に勝てるわけがないぞ」
焦げ茶髪の子供の言う通りだ……僕らが敵うはずない。
「安心せい! 試してみるだけじゃ!」
神様は軽いノリで笑ったけど、試す意味ってあるのかな……
「なるほど……なら俺から行かせてもらおうか」
突然、右手を挙げて宣言したのは女子好きな黒髪。自信満々だが手に何も持ってない。
まさか素手で戦う気なのか……? 強そうな武器がたくさん並ぶのに。
「お主……武器を持っておらぬようじゃが?」
「ふっ……俺は素手で十分なんだ」
神相手に自慢げに胸を張って笑う女好き。
素手で神と戦うってかなりの自信家なのか?
「分かった……ではお主から試すとしようかのう」
「いや、俺が先だ」
この声は初めて聞く……
今までずっと無口だった白髪の男……その男は右手には剣を握っていた。
「な……なんだと!? お前……手を挙げていたのか……!?」
「俺は挙げていた」
ずっと無口だから神ですら気付いてなさそう……
「すまぬのう……どっちが先か困惑するのう……」
やっぱりね……
「神のクセに困惑するな! 俺の方が先だっただろ! それに手を挙げていたとしても、先に神から指名されたのは俺だぞ!」
「俺は譲らない」
どっちでも良いからジャンケンすればいいのに……
「お前たち! 喧嘩はするな!」
「そうじゃぞそうじゃぞ」
焦げ茶子供が怒り、灰色髪の者と神様が場を穏やかに誘導しようとするも、二人ともに譲る気配が全く感じられない。
「くっ……なら競走だ! 隣の部屋に着いた方から先に戦うってことにしようぜ!」
黒髪が提案すると、白髪が頷いた。
「レディーゴゥ!!」
二人が同時に走り出した。神と戦う前に体力を使ってどうかと思ったが……
「二人とも 曲がる方向が逆じゃ! 戻って来るんじゃーー!」
逆なのか……
人の話……いや、神の話をちゃんと聞いとけよと僕は思った。




