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軍人マディラと泥棒娘の見合い特訓6(完)

挿絵(By みてみん)

⑥返した光、残る想い



腕に付けられたブレスレットを眺める。

キラキラと光を集める。


盗まずに済んだはずなのに……。

でも、少しも気持ちは晴れない。


命を賭ける任務を背負うマディラ様と、罪を犯す自分。

私はこれから、王室へ侵入することすら考えている。

胸にたまった空気を大きく吐き出して、部屋に戻る。


机の上に、金工用の器具を取り出す。

この目的のために、ある職人のもとで一年ほど徹底的に特訓した。


あるフィルターを通してブレスレットに光を当てる。

オーロラに揺らめく一つの宝石。

精霊の力が込められた証。


傷をつけないよう、細心の注意で取り外す。

高品質のイミテーションを付け替えた。


「マディラ様……」


ブレスレットを胸に抱きしめる。もし、このブレスレットを受け取っていいのなら、私はマディラ様を待つことができる。

辺境で、マディラ様の任務を支えるために働くことも夢想してしまう。

私は丈夫なのは自信があるし、質素な生活でも構わない。

でも、マディラ様にも、マディラ様のお母さまにも私は顔向けできない。

あの、大きな手や、たくましい腕、広く温かい背中。

失うと思うと、とても心細くなる。

けれど、あんなに高潔な魂に、私は影を落としたくない。


ブレスレットの白い光は、罪を犯す私には眩しすぎた。

一晩中、その輝きを目に焼き付けた。



翌朝。

まだ陽が昇りきらない薄明の庭に、馬の蹄の音が静かに響いていた。

辺境へ向かう部隊の準備が進む中、私はそっと屋敷から歩み出た。

マディラ様が、ふと振り返る。

驚いたように青い瞳が揺れた。


「……パル」


その声を聞いただけで胸が痛む。

私は深く息を吸い、両手で包むように小箱を差し出した。


「これを……お返しします」


マディラ様の目が、わずかに見開かれる。


「今の私には、ふさわしくありません。

でも……いつか胸を張って受け取れるように、努力します。

だから……どうか、ご無事でお帰りくださいませ」


震えないように言葉を整えたつもりだったのに、

最後だけどうしても声が揺れた。


マディラ様は、しばらく何も言わなかった。

ただ、私の手の中の小箱を見つめ、やがてそっと受け取る。


指先の温度がはっきりと感じられて、胸が締めつけられた。


「必ず帰る。だから……いつか、また……」

マディラ様は一瞬目を伏せた。


「ご武運を……心より……心よりお祈りしております」


マディラ様は、ゆっくりと頷いた。

そして馬に乗り、手綱を握る。


軍人らしく、背筋はまっすぐ。

けれど、去る直前に一度だけ振り返り、私を見つめた。

蹄の音が遠ざかる。

風が吹き抜け、赤褐色の髪が陽に揺れる。


私は胸に手を当て、静かに目を閉じた。



「魂は永久に残る」


かつてマディラ様が言った言葉を胸に、私は歩き出す。


この国の安寧のために。

そして、いつか胸を張ってあの方に再会できる日のために。


私もまた、自分の役割に魂を掛けようと思う。

マディラ編完結です。ここまでお読みいただいた方、ありがとうございました。

次回新章です。マディラ編はIF後日談へ繋がります。

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