あなたの初夢
今回のお話は、『黎明の魔王』や『デスタウン』とは無関係です。
不思議なお話と思って読んでいただけると嬉しいです。
藤矢魔ユウトは憂鬱だった。
縁起の良い初夢は見られず、親の借金を返すための手伝いでゆっくり過ごすこともできず、気づけば年始はあっという間に終わってしまった。
今日から、また学校である。
良い夢を見られないまま登校することになるなんて。
「畜生!!」
藤矢魔は苛立ちながら、親友の弍鷹コウタの家に迎えに行った。
インターホンを鳴らして、彼は言った。
「おーい。コウタ。学校行こうぜ!」
しかし、返事はない。
藤矢魔は、ハッとした。
(やべえ。苛立ってるの伝わっちゃったか?)
彼は深呼吸して落ち着くと、またインターホンを鳴らした。
「コウタ。学校行こうぜ。初夢の話でもしながらさ」
『・・・・・・ユウト、俺行けない』
今度は返事があった。
だが、行けないとはどういう意味だろう?
「具合でも悪いのか?」
『違う。だ、だけど!』
「なら、何なんだ!?不良先生にまたネチネチ言われるぞ。あー、もう!中に入るぞ!良いか!?」
また苛立ってしまう藤矢魔。
すると、今度は弍鷹の母親が答えた。
『ユウト君、入って』
『母さん、ダメだ!』
『ユウト君、お願い。入って、コウタの話を聴いてあげて』
藤矢魔はうなずいた。
「わかりました」
弍鷹の家に入ると、藤矢魔は驚きの声を上げた。
玄関も、廊下も、お札がびっしり貼られていたのだ。
「お、お邪魔します」
藤矢魔は挨拶して靴を脱いだが、弍鷹の母親は見当たらない。
弍鷹本人も玄関にいない。
2階の部屋に行ってしまったのだろうか?
藤矢魔は階段を上り、弍鷹の部屋の前に立って、ノックした。
トントンッ。
「コウタ、いるんだろ?学校行こうぜ!」
「ユウト、何で入った?」
「何でって、お前のお母さんが入れてくれたんだろ?」
「もう終わりだ・・・・・・!もう終わりなんだよ!」
「わかるように言ってくれよ!何なんだ!?」
「・・・・・・わかった。お前には話す。あの夢のことを」
弍鷹は話し始めた。
彼が見たという恐ろしい初夢について。
◆
弍鷹は夢の中で、自分の部屋にいた。
彼の部屋には天窓がついているのだが、ふと上を見ると、その天窓から恐ろしい怪物が覗いていた。
漆黒の肌。赤い目。爬虫類の頭と人間の体がくっついている。
そんな怪物が、笑いながらヨダレを垂らして弍鷹を見つめていたのだ。
弍鷹は怖くなり、家から逃げ出した。
しかし、怪物は素早く、弍鷹を追ってくる。
弍鷹は近くのショッピングモールへ逃げ込んだ。
だが、そこには警備員どころか、客もいない。
弍鷹は本屋の本棚に隠れ、やり過ごそうとした。
しばらくして、怪物も窓ガラスを割って侵入してきた。
怪物は店を回って、弍鷹を探した。
弍鷹は息を殺して、耐えた。
怪物はついに弍鷹がいる本屋に来た。
弍鷹は奴が出ていくのを待った。
何時間か経ち、弍鷹はこっそり本棚から周りを見渡した。
怪物はいなくなっていた。
弍鷹は胸をなで下ろしたが、その次の瞬間、彼の頭に粘ついたものが落ちてきた。
弍鷹が恐る恐る見上げると、本棚の上にあいつがいた。
天窓から見せていたような不気味な笑顔だった。
◆
弍鷹が話し終えると、藤矢魔は首をかしげた。
「その初夢がどうしたんだ?そりゃ、気の毒だけどさ」
「目が覚めた後も、あいつに見られてる感じがするんだ。時々枕も粘ついてるし。それで怖くなって、神社に相談に行ったら、やばいことを言われたんだ」
「やばいこと?」
「・・・・・・俺は、神様に好かれたんだって。人間が大好物の神様に。ごめんな、ユウト。巻き込んじまった」
「は?」
藤矢魔は弍鷹の話の意味がわからなかった。
しかし、彼にまた質問しようとしたその時、突然右頬を誰かに舐められた。
ベチョリ。
舐められた右頬は粘ついていて、気持ち悪かった。
初夢の内容は、一部自分が実際に見た夢を参考にしました。




