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ミステリーテスト  作者: 如月いさみ


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3/4

禁じてミステリー 後編

 ロッジに戻ると杉尾伸一と坂口由紀が蒼褪めながら二人を出迎えた。

 静寂が降り注ぎ何処からか虫の鳴き声が聞こえてくる。


 春貴は彼らとリビングダイニングのテーブルを囲むと全員を見回して

「今回の完璧な密室事件の犯人が分かりました」

 と静かな声で告げた。


 田中和也と杉尾伸一と坂口由紀は顔を見合わせて誰もが固唾を飲み込んだ。


 最初に口火を切ったのは坂口由紀であった。

「わ、私じゃないわ! 確かに色々言われてイヤな思いもしたけど……でも、殺しをするほどじゃないもの! それに美和は友達よ!」


 確かに彼女は一番怪しいが彼女の部屋から二人の部屋に乗り移ることは出来ない。例えば野口美和に関しては殺してから鍵を手にして部屋に戻って次に入る時に置くという手があるかもしれない。

 それは現在彼女の部屋の鍵が動画のどこにも映っていないからの推測である。


 だが、柄本修に関しては無理である。

 動画には鍵がちゃんと映っていたのだ。

 しかも二階である。よじ登った形跡もその下に足跡もない。


 正に空中トリックだ。

 だからと言って滑車を利用した跡も動画には映っていなかった。


「そう、柄本修に関してはここにいる全員が使うことのできないパーフェクトクライム。完璧な密室トリックなんだ」


 春貴はそう心で呟いた。

「でも管理小屋の男性も無理だ。あれだけの電話が掛かってきていたら対応しながらここに来て殺しをする時間はない」


 杉尾伸一も視線を動かしながら

「俺だって由紀のことを言われて腹が立ったが俺は由紀を信じている。だからそんな二人の言葉を真に受けて殺したりなんかしない」

 と胸を張って坂口由紀と顔を見合わせて笑みを交わした。


 田中和也は沈黙を守って春貴を見つめていた。


 春貴は全員を見回して息を吐き出した。

「犯人は……このストーリーで唯一出てきていない第8の人物。名無しの権平だね」


 全員が顔を見合わせた。


 田中和也は驚いて

「え!? は? それは本気で言っているのか?」

 と声を零した。


 春貴は冷静に頷いた。

「ああ、正に禁じてミステリーだね。ロナルド・ノックスの禁じての一つに犯人は序盤に登場していなければならない。最後にポッとではならないとある。恐らくそれを使ったんだと思う」


 全員が視線を交わした。


 春貴はゆっくり足を進めながら

「先ず野口美和については動画の中で鍵を確認できていないから彼女が安心して中へ入れることが出来る坂口美紀、もしくは柄本修なら彼女を殺して鍵を持って出て鍵をかけ、第一発見者として中に入った時に何処かへ置いておくというトリックは可能だ。だが、柄本修は同じように殺されている。しかも柄本修に関しては完全な密室になっている。鍵もあったし、隣の部屋は私の部屋なので私が犯人でないと成り立たないし、まして、私の部屋からも外から乗り移ることは出来ない」

 と告げた。

「滑車や外へ糸を出した様子もなく足跡が何処にもない」


 全員が固唾を飲み込んだ。

 田中和也は息を吸い込み

「だとしたら」

 と聞いた。


 春貴は笑むと

「犯人は管理小屋のスペアを使って中に入り二人を殺害して逃げた。そして電話線を切って逃走した」

 と告げた。


 田中和也は首を振ると

「だが管理小屋の人は電話がひっきりなしにかかっていてそんな時間はなかったはずだ。それは電話の履歴でも確認できた。それに理由がないだろ?」

 と告げた。


 春貴は笑むと

「実はこのストーリーには姿を見せない第8番目の人間がいる」

 と答えた。

「野口美和が言っていた泥棒だ」


 全員が目を見開いた。


 坂口由紀は驚き

「それは、私と田中君のことじゃないの?」

 と聞いた。


 春貴はふっと笑うと

「確かにそう匂わせる話だったが、彼女が田中と貴方が川辺でいたのを見た時に一緒にいたのは私だった。だが、彼女が泥棒の話をした時に止めたのは私と、柄本さん。そう考えると可能性として彼女と柄本さんが釣竿を返しに行った時に『本当の泥棒』を見たのではないかと言うこと。その泥棒が今回の実行犯」

 と告げた。

「その泥棒は管理小屋からスペアを持ち出してロッジからモノを盗んでいた。その現場を見たんじゃないかと……同時にその泥棒は管理小屋の人と繋がっていて言わば共犯関係にあった」


 田中和也は蒼褪めて「何故?」と聞いた。


 春貴は彼らを見て

「管理小屋の人はかなり几帳面な性格で冷蔵庫の中の野菜にしても飲み物など1mmの狂いもなく並べていたほど細やかだ。ロッジのスペアーキーにしても他のロッジの鍵は綺麗になっていた。なのに、手渡してくれたキーは無造作にかけられていて丁寧に整えながら出していた。つまり、スペアーキーは『管理小屋の人以外の人が使っていた』と言うことになる。しかもその事を一言も驚きもせずに出したということは彼は知っていたことになる」

 と説明した。

「犯行の理由はスペアーキーを使った盗みを知られたこと。公にされたらこのロッジは大変なことになるからね」


 ……というミステリーストーリーだね……

「田中、私を試した?」


 全員が罰が悪そうに顔を見合わせた。


 春貴は息を吐き出し

「序でに言うと警察は来ないし救急も来ない。いま様子を見るために階段のところで野口さんと柄本さん、予測が当たっていたら佐藤さんがいるのかな?」

 と告げた。


 田中和也はクゥと嘆くと

「何故?」

 と春貴を見た。


 春貴は目を細めながら笑みを浮かべ

「お前、私に言っただろ。坂口さんと一緒にいた時の話をした時に『アレは偶々出会って歩いていたんだ。お前達と一緒だ』って。野口さんが誘導してお前と坂口さんがタイミングを見計らって演じたんだろ?」

 とさっぱりと告げた。


 階段からケチャップで服を汚したままの野口美和と柄本修と佐藤美由が姿を見せた。


 春貴は息を吐き出して

「管理人さんを巻き込んで……ったく」

 と告げた。

「でも私も今回は考えさせられたので楽しめたよ」


 それに佐藤美由が笑顔を見せた。

「じゃあ、ミステリーサークルに入る?」


 春貴は笑むと

「申し訳ないけど、ミステリーは好きじゃないんだ」

 と答えた。


 ……本当のミステリーはもっと悲しい理由が奥にあるからね……


 田中和也も佐藤美由も

「「入れ―――」」

 と叫んだ。


 外では夜の闇はゆっくりと白み、夜明けを知らせようとしていた。


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