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ミステリーテスト  作者: 如月いさみ


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2/4

禁じてミステリー 前編

 晴れ渡った青空に熱い風が流れていく。

 昨今の8月は35度越えでない日が無いというくらいに連日最高気温が35度から40度近くに上っている。


 それでも緑の木々が生い茂る山林の特に川や湖の近くでは涼やかな風が流れ都会とは3度から5度近くの気温差がある。


 その為、避暑地代わりに人々がパラパラと訪れる。


 田中和也が山間のポツンとロッジの前に車を止めると中から6名の人物が降り立った。


 ミステリーサークルのヒロイン坂口由紀。

「周りは本当に緑ね。まさにクローズドサークルの舞台ね」

 そう簡単の声を零した。


 続いて降り立ったのが同サークルのもう一人のヒロイン。と言うか本人は悪役令嬢と名乗っている野口美和。

「ここ見つけてきたの杉尾君でしょ? 何か企んでるんじゃないの?」

 笑ってカバンを肩にかけた。


 降りて直ぐに車の後ろに回りカバンを順にトランクから配り始めたのは柄本修で暗号小説を得意としている。

 もう一人同じように降り立って同じようにトランクからカバンを出し始めたのが杉尾伸一であった。

「おい、花畑。お前のカバン……ってちっさ!」


 花畑春貴は車から降り立つと頭を掻きながら笑って告げた。

「悪いね。私はミステリーサークルの部外者なので本当にノンビリしようと思ってきただけだから」

 そう告げて杉尾伸一から一泊分の下着だけが入っているカバンを受け取り運転席から降り立った田中和也を見た。


 彼はミステリーサークルのリーダーで東都大学法学部の2回生である。

 かくいう春貴を今回のミステリーサークル夏季合宿に誘った張本人でもある。


「全員荷物を出したら中に入ってくれ。花畑、お前も一緒にオリエンテーリングに参加してもらうからな」


 ビシッと言われて春貴は田中和也が先にロッジの管理小屋で受け取っておいた鍵で扉を開けるとぞろぞろと入っていく面々に続いて中へと入った。


 ロッジは二階建てで中に入ると左手直ぐに二階へ上がる階段がありその階段下にトイレや風呂場などの水回りがあった。

 そしてそこを含めて右手側が大きなLDKとなっていて大きな冷蔵庫があった。


 春貴は周囲を見回し、更に冷蔵庫の中を見た。

「昼はサンドイッチか。ちゃんと6人分ある。夜はバーベキューだな。肉も野菜も切ってある。しかも種類ごとに丁寧に並べて一つ一つジップロックを使ってズレなく並べているなんて几帳面な人だな」


 飲み物も揃っていてそれも一ミリの狂いもなく真四角に並べられていた。

 春貴がポロポロと見ていた時に咳払いと共に田中和也の声が響いた。


「おい、花畑。これから説明する」

 

 全員がLDKの中央にあるテーブルの周りに集まった。部屋の割り当ては田中和也がしていた。


「一階の奥にある101は杉尾。102は俺。二階の階段上がって直ぐの201は柄本、隣の202は花畑、お前な。横手の203は野口美和で204が坂口な」


 田中和也はLDKの時計を見ると

「じゃ、今が9時30分だからそれぞれ部屋に行って10時にここに集合」

 と告げた。


 それぞれが鍵を受け取り頷いた。

 春貴も荷物を持って二階へと上がり201号室の前を抜けて奥の202号室へと入った。


 その前を通って203号室と204号室へと続いていく。


 春貴はベッドの横にカバンを置いて窓を開けた。

「さてさて、田中は私に何をさせようと考えているのか」


 目の前には緑の木々が陽光に照らされて輝いている。白い雲はぽわぽわと浮かび流れていた。

 心地よい夏の朝である。


 10時になって部屋を出て階段を降りると杉尾伸一が先に姿を見せていて釣り竿と餌とバケツがそれぞれ3セットずつ置かれていた。


「これから2時間。夜の食材は自分で釣る。一応、直ぐに釣れるようにセットはしているけど糸が切れたり針が必要になったら俺に言ってくれ。予備は用意しているからな。針と糸は俺の自腹だから感謝してくれよ」


 春貴は竿を田中和也から受け取り釣り場へと向かった。

 田中和也と春貴。

 杉尾伸一と坂口由紀。

 柄本修と野口美和。

 その三組で釣りをすることであった。


 田中和也は川辺の砂地の岸に春貴を誘い周囲に誰もいなくなるのを見計らうと餌を付けて竿を渡した。


「実はさ、今日お前を誘ったのは俺だけミステリーサークルの恋愛部門からあぶれててさ。それで」


 春貴は「なるほど」と考えた。

「でも、ミステリーサークル恋愛夏季合宿なら同じ部外者の佐藤美由を誘えばよかったんじゃないか? フィーリングカップル3対3になるし」


 田中和也はハハハと笑った。

「まあ、ちょっと美由とはあってな。別れた……お前には話してないがな」

 瞳がゆるりと揺れた。


 確かに二人が別れたことを自分は知らなかった。だが、春貴は田中和也の様子から聞かない方が良いのだろうと考えた。

 竿を軽く振って針を川の中央へと投げた。


 流れに乗ってウキが下流へと移動していく。瞬間にクィーとウキが沈みながら下流へと移動した。


 春貴は思わず竿を引っ張り、パシャンと跳ねて抵抗するヤマメを釣り上げた。


 太陽はゆっくりと登り、少し離れた場所からも「魚が釣れた」や「逃げた」などの声が響いた。


 釣果は悪くなく夕食に魚を食い損ねる人間はいないようであった。

 昼は用意されていたサンドイッチを食べてゆっくりと午後のミステリーというドラマを午後2時まで見て野口美和と柄本修が立ち上がった。

 柄本修が全員を見回した。


「じゃあ、俺と美和は管理小屋に釣りの道具を返してくるよ。5時まで自由だろ?」


 それを合図のように田中和也と坂口由紀と杉尾伸一が立ち上がった。

 田中和也が笑むと

「ああ、柄本と野口。頼むな」

 と告げた。

「じゃあ、今から散策して5時にここへ集合な」


 春貴はフゥと息を吐き出すと

「なるほど、決まっているんだな」

 と心で呟きばらばらと出ていく面々と共にロッジの外へと出た。


 川はあるし、周囲には木々が茂る獣道もあって散策が出来るようになっていた。

 春貴は田中和也を見ると

「自由にしていていいんだな」

 と告げた。

 田中和也は頷くと

「ああ、5時までは本当の自由時間だ。俺も散策に行ってくる」

 と告げた。


 春貴は全員と別れて散策を始めた。

 気温が低いわけではないがそれでも獣道を歩いていると木々の枝葉が作る影の部分ではひんやりとしていた。

 ロッジの周辺を暫く歩いていると背後から声を掛けられた。


「一人? 散策?」


 釣竿を返しに行った野口美和が戻ってきていたのだ。

 春貴は彼女を見ると足を止めた。


「ええ、散策です。野口さんはもう返しに?」

 

 彼女は笑むと頷いた。

「そうよ。返してきて5時まではバラバラで散策しましょって歩いていたら花畑君がいたわけ」


 彼女は春貴の腕を掴むと

「ちょうど偶然だし、言いたいこともあるし……行きましょ」

 と歩き出した。


 春貴は歩きながら彼女に聞いた。

「私に言いたいことというのは?」


 それに彼女は足を止めると目を見開いた。そして向こうの河岸を指さした。

「あれ、田中君と坂口さんじゃない?」


 春貴は「え、ええ」と答えた。


 野口美和は目を細めると

「本当に泥棒って嫌ね」

 と告げた。

「杉尾君に言いつけてやろうかしら」


 春貴は慌ててとりなした。

「いや、一緒にいるだけではないかと思うんだけど」

 

 野口美和はそれに口角を上げて

「でも杉尾君の彼女とあんなことしてたらね~」

 と指さした。


 春貴は肩越しに木々の向こうの田中和也と坂口由紀を見て目を見開いた。


 田中和也が坂口由紀を抱きしめていたのだ。


 ……。

 ……。

 え? ええ――? と心で叫び慌てて野口美和の手を掴んで足早くロッジへと戻った。


 そこには柄本修と杉尾伸一が腕を組んで立っていた。


 問題は5時になって外でバーベキューを始めて半ばくらいになった時であった。


 野口美和が田中和也と坂口美紀を見ながら

「泥棒って嫌よね~、人のモノを取るんだもの。私も取られないように気を付けなきゃ」

 と言い始めたのである。


 全員が固まって彼女を見る中で春貴と柄本修だけは慌てて

「今言うことじゃないと思うだけど」

「美和、まだ分からないだろ?」

 と告げた。


 野口美和はフフッと笑って一瞬険しい顔をした田中和也と坂口由紀を一瞥して

「コソ泥がいるから皆も取られないように気を付けなさいよ」

 と告げた。


 静寂が広がり雰囲気の悪いバーベキューとなった。それでも夕食だけは終えて、早々に部屋へと戻った。


 春貴は田中和也に誘われてロッジの中の点検を行った。窓の全ての鍵を締め、戸の鍵もきっちりと閉めた。


 その後、自室へと戻ったのだ。

 時刻は午後10時。


 春貴は小さく欠伸をすると

「流石に疲れた」

 とぼやきベッドに身体を横たえると数分後には寝息を立て始めた。


 そんな安眠を土台から突き破ったのが野口美和の悲鳴であった。彼女の部屋は203号室。


 春貴は驚きながらもベッドを降り立つと彼女の部屋へと急いだ。扉を開けて真っ直ぐ4歩ほどだ。

 同じように204号室の坂口由紀も飛び出して姿を見せた。

「花畑君」

 

 彼女はそう春貴に呼びかけノブに手をかけた。

 ガチャガチャと音はするが扉は開く様子がない。恐らく鍵をかけているのだろうと判断できた。


 春貴は踵を返すと自室に戻り鍵を手に戻ると扉を開けようと鍵穴に挿して回した。

 が、開かなかった。


「一部屋一部屋鍵が違うのか?」


 坂口由紀は「私のも試してみるわ」と自室へと戻ると鍵を持って姿を見せ回した。


 だが開く様子はない。

 しかしこのままと言う訳には行かず春貴は一旦冷静に戻ると

「坂口さんは一階の田中と杉尾さんに情報を話して管理小屋へ連絡するように言ってください。それから部屋を利用させていただいても良いですか?」

 と告げた。


 坂口由紀は不思議そうに首を傾げ

「え、ええ」

 と答えた。


 春貴は頷くと

「窓から挑戦してみようと思います」

 と告げた。


 彼女はハッとすると

「あ、わかりました。どうぞ。私、二人を呼んできます」

 と走って階段を駆け下りた。


 春貴はそれを見送ってから坂口由紀の部屋に入り彼女の部屋の窓辺を丹念に調べて目を細めた。

「こういう性格が時々私はいやになるね」


 思わず呟きながら隣の野口美和の窓をみて、ハッとすると真下の地面に目を向け

「これは後で調べないとだな」

 と部屋を出てちょうど扉の前に集まっている田中和也と杉尾伸一と坂口由紀を見た。


 ただ、一人足りない。


 春貴は田中和也に目を向けた。

「そう言えば柄本さんは? これだけの騒ぎで起きてきていないって……」


 全員が視線を交わした。


 田中和也は踵を返すと201号室の扉を叩き反応がないのに顔を顰めた。

「反応がない」

 そう言って舌打ちした。

「ここは携帯も繋がらないし……管理小屋に連絡を入れようとしたら電話が繋がらなかった。恐らく電話線が切られているんだと思う」


 全員が顔を見合わせた。瞬間に杉尾伸一が蒼褪めながら唇を開いた。

「どうするんだ? まだ午前1時だし……外は真っ暗だ」


 歩いていくのは無理である。

 春貴は息を一つついて

「坂口さん、自撮り棒もってましたよね? それをお借りして良いですか?」

 と告げた。


 坂口由紀は頷いて部屋から自撮り棒を持って現れた。春貴は自身の携帯を付けると動画にして自撮り棒を使って坂口由紀の部屋からは野口美和、そして自身の部屋から柄本修の部屋を取った。


 隣の部屋の窓までは遠くかといって足をかける場所もないので飛び移ることは不可能だったからである。


 だが。

 全員で一階のLDKで動画を確認し息を飲み込んだ。


 野口美和と柄本修がナイフで胸を突かれてベッドの上で倒れている姿が映っていた。


 窓のロックは掛かっていなかったが到底飛び移つれる距離ではなく状態でもなかった。

 部屋はどちらも鍵が掛かっており……まさに密室であった。


 春貴は一階のリビングダイニングで集まっている面々を見回した。

 田中和也。

 杉尾伸一。

 坂口由紀。

 そして自分の4人だ。


 静寂が広がる中で最初に唇を開いたのは春貴だった。

「とにかく管理小屋に車で向かった方が良い。一刻も早く警察と救急に知らせなければ」


 だが誰が残り、誰が行くのかと顔を見合わせた。

 誰もが疑心暗鬼なのだ。犯人が分からないのだ。


 春貴は全員を見つめた。

 可能性として春貴が思い当たるのは野口美和が田中和也と坂口由紀が抱き合っているのを見たことだ。


 挑発するように夕食で人のモノを取らないようにと言っていた。

 坂口由紀だとすれば女性同士で野口美和の部屋に入り彼女を殺害し窓から誰かが侵入したように見せかけるためにロックを解除し鍵をかけて中へ入るということは出来た。


 だとすれば彼女は今も野口美和の部屋の鍵を持っているはずである。


 同じ手で柄本修も同じように殺すことが出来る。


 春貴は自らの携帯を手にしてもう一度二人の部屋の様子をじっくりと見た。


 瞬間に目を見開くと全員を見回した。

 柄本修の部屋には机の上に鍵があるのが映っている。


 春貴は立ち上がると

「田中、お前と行こう。杉尾さんと坂口さんは二人でここにいてください」

 と告げて

「その前に俺の部屋に」

 と階段を上がった。


 杉尾伸一と坂口由紀は共に顔を上に向けて腰を浮かした。

 春貴は再度柄本修の201号室の部屋が閉まっていることを確認し自室の窓から隣を見て地面も見た。


 田中和也は俯き加減に

「花畑、何か……わかったのか?」

 と聞いた。


 低い何処か探るような口調に春貴は冷静に

「いや、野口さんの部屋も柄本さんの部屋も完全な密室だって事だけは分かった」

 と告げた。

「とにかく、お前には今回参加した人の人間関係を聞きたい。それとお前と佐藤さんが別れた理由もな」


 そう言って春貴は階段を降りて闇が広がる中を田中和也と車に乗り込み管理小屋へと向かった。


 春貴は真の闇の中に溶けていくロッジの明りをバックミラーで見ながら息を吐き出した。


「全てが、完璧すぎるんだよな」


 密室にしても。

 野口美和と柄本修が何故狙われたのかと言う理由の混迷も。


 柄本修の部屋には鍵があった。

 しかも窓はどの部屋からも入れない位置にある。

 しかも二階で飛び降りるには高すぎるし、壁に足跡などはなかった。


「ロープで降りたとしてもロープを窓で挟んだとしても開いていなければならない僅かな窓の隙間もない」


 正に不可能犯罪だ。


 運転しながら田中和也は思案する春貴を横目に

「人間関係で言うと全員がミステリーサークルのメンバーだ。野口美和と柄本修はまあ恋人同士だな。杉尾伸一と坂口由紀も同じだ。それで美由は今は名前だけになっているがミステリーサークルに所属しているんだ。あいつお前も誘えってうるさかったんだぜ」

 と小さく笑って

「けど、柄本がさ坂口さんと俺が杉尾と美由を影で裏切って付き合ってるって噂をして喧嘩になって別れたんだ」

 と息を吐き出した。

「本当はさ、お前の前に美由を誘ったんだが美由はお前を誘えばって断られたんだ」


 春貴は驚いて横目で田中和也を見た。

 つまり、田中和也には二人を恨んでいる理由があったのだ。


「だが、そんな理由で殺人をするか? 田中の性格からしないだろう」


 春貴は疑惑を払いつつ

「けどお前、散策の時に坂口さんと川辺でいただろ?」

 と告げた。


 田中和也は思わずブレーキを踏むと

「アレは偶々出会って歩いていたんだ。お前達と一緒だ。それで彼女の肩に虫がいたから」

 と息を吐き出して、前のめりになった春貴を見て

「あ、悪い。思わず」

 と車を走らせた。


 木々が作る深い闇の向こうに時折夜空が垣間見えた。

 蛇行した山道を車のヘッドライトが一部だけ明るく照らし余計に周囲の闇を際立たせた。


 杉尾伸一については坂口由紀が浮気をしている。そして、相手は田中和也という二人を差し置いて野口美和と柄本修を殺す理由がない。


 春貴は少し考えて

「杉尾さんに野口さんと柄本さんに関するトラブルとかは?」

 と聞いた。


 田中和也は考えながら

「んー、まあ……俺のことを含めて彼女の坂口さんの変な噂を二人が広げているって言うことぐらいかな」

 とぼやいた。

「けど、坂口さんとの仲は悪くないからなぁ。坂口さんは根も葉もない噂を立てられて怒っているけど、野口さんとは小学校からの無二の親友だから……まさか」


 春貴は腕を組んで

「そうか」

 と呟いた。


 少し視界が広がりその向こうに管理小屋の明りが見えた。この時間でも万一の時の為に起きているのだろう。大変な仕事である。


 春貴は田中和也と共に中に入り壁にキチンとかかったそれぞれのロッジのスペアキーの束とその前に立つ男性とカウンターを見た。


 男性は驚いた表情で

「あの、何かあったんですか?」

 と聞いた。


 田中和也が春貴の後ろから小屋に入りながら

「実はロッジでサークル仲間の2人がナイフで刺されて部屋の中で倒れているんです。鍵も掛かっていて……スペアーキーをお借りできますか?」

 と告げた。


 男性は驚いて頷くと

「は、はい」

 と答え

「これですね」

 と無造作に掛かっている自分たちが使っているロッジの鍵の束を男性が丁寧に直しておいた。


 春貴はそれを受け取り田中和也に渡しながら

「それから救急と警察への連絡もお願いします」

 と告げた。


 男性は慌てて

「は、はい。わかりました」

 と答えて電話の受話器に触れた瞬間に響いた他のロッジからの内線に

「あ、もう今日はひっきりなしに電話があって……直ぐにかけておきます」

 と告げた。


 春貴はハッとして

「すみません電話の履歴を見れますか?」

 と聞いた。


 男性は受け答えをして

「わかりました」

 と答えると電話を切って戸惑いながら履歴を印刷して出した。

「どうぞ」


 春貴はそれを見て目を細めた。

 確かに電話は掛かっていた。

 野口美和の悲鳴のあった午前0時頃にも、その前後20分にも他のロッジからの電話が掛かり応答に出ている。


 田中和也は春貴の腕を掴むと

「花畑、取りあえずロッジに急ごう。杉尾と坂口さんが心配だ」

 と告げた。

「それにこれがあれば中を調べられる」


 春貴は「あ」と声を零して踵を返すと

「わかった」

 と小屋を出て車でロッジへと戻った。


 そしてその途中で春貴はこれまでの出来事を脳内でリバースし不意に目を見開くと冷静に唇を開いた。

「田中、今回の犯人が誰か分かった」


 それに田中和也は驚くと

「え!?」

 と彼を見た。


 春貴は不敵な笑みを見せると

「ロッジについたら今回の二つの事件の全容を話する」

 と告げた。


 田中和也は驚いて横目で春貴を見た。


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