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東方project二次創作小説 幻想郷支配論  作者: ディグ
第1章 妖怪の山
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第9話 五人の大天狗

天魔邸に辿り着いた飯綱丸。

天魔は日にちを繰り上げて今日大天狗会議を行うという。

「飯綱丸龍、ただいま戻りました。職務中に職場を離れたこと、そして何よりお騒がせしまったこと、深く反省しております。申し訳ございませんでした。」


 天魔邸に到着し、天魔のいる部屋に入るなり開口一番、飯綱丸は謝罪をした。

 飯綱丸は天魔からの叱責、最悪の場合大天狗位の剥奪も覚悟していたが、意外にも天魔は穏やかだった。


「無事で何よりだよ、龍。楓間から君の怪我の話を聞いた時は心配したが、やはり杞憂だったようだね。手当は済んでいるようだが……。」


 飯綱丸は言葉を詰まらせた。怪我のことが天魔様の耳に入っているということは、恐らく永遠亭に行っていないことも同様に耳に入っているだろう。しかし、反天狗同盟と会っている、などと言えるわけもない…。


 そう、飯綱丸は未だ自身と反天狗同盟との関係がバレていないと思っていたのである。

 そんな飯綱丸の態度を見て確信を得たのか、天魔は爆弾を投下する。


「川美君との会談はどうだったかい。」


 飯綱丸は耳を疑った。天魔の口から出て来たのは、つい先程まで飯綱丸と会っていた、反天狗同盟のトップ・川美の名前だったからである。


「も、もしや天魔様は全てを既にお知りになっているのですか……?」


 飯綱丸は絶望的な表情で聞く。

 信頼関係や義、というものを重視する山の規律において、嘘や欺きといった行為は1番重い罪である。まして、天魔や山に対して嘘や欺きを働くというのはかなりの大罪である。飯綱丸は衝撃のあまり座ることも忘れていた。

 飯綱丸は大天狗の象徴ともいえる濃紺色の頭襟を手に取り握りしめる。


「ああ知っているとも。しかし私は君に対して罰を与えたりはしないさ。寧ろ1番に山の事を考えて危険を省みず動いてくれたことに対して感謝さえしている。」


 天魔の言葉を受け、飯綱丸は安堵の表情を見せる。気がつけば頭襟も元に戻っている。


「さて、君から聞きたいことは山ほどあるが、取り敢えず大天狗を集めよう。楓間達には明日と言ったが、繰り上げる。今から大天狗会議を行う。」


 事態は飯綱丸が思っているよりも、遥かに重大であった。

 

「他の大天狗が来るまで、君は少し休むといい。これからは今まで以上に忙しくなるからな。」


 天魔はそう言い、自らはやる事があると言って部屋を出ていった。

 広い部屋には飯綱丸、一人。飯綱丸はやっと一息つくのであった。


 程なくして、飯綱丸を含む五人の大天狗が一堂に会した。

 

 次期天魔の最有力候補──

 一騎当千の大天狗・大山義郎


 知能において彼の右に出る者はいない──

 神算鬼謀の大天狗・白峯櫻一


 天魔に続く天狗の顔──

 八面玲瓏の大天狗・葛城和泉


 天狗の力を司る武闘派──

 疾風迅雷の大天狗・初瀬旭日


 そして、

 誰よりも天狗を、山を愛する──

 高潔無比の大天狗・飯綱丸龍


 彼ら五人の大天狗達は、それぞれが個性、強みを持っており、それらを活かして天魔率いる妖怪の山を支えていた。

 天魔は彼らを信頼しており、妖怪の山の支配権などを一部大天狗に与えたりしている。

 しかし、後に天魔は語った。

 これが失策であったと。

 天魔の権限を大天狗に譲渡する、という事が発生したせいで大天狗の中に”序列”が生まれた。

 それにより大天狗同士の亀裂は更に深いものとなり、”大天狗が協力して山を守っていく”という体制そのものの地盤を揺るがしかねない事態となりつつあった。


 同室に集められた大天狗達が和やかな雰囲気になるはずもなく、部屋にはピリピリとした空気で張り詰めていた。

 しかし、そんな空気も外にいる天魔側近の掛け声によって一掃される。

 

「天魔様が入り給はるぞ。大天狗一同、畏まり給へよ。」


 と同時に、戸が開かれ、天魔が部屋に入ってくる。


 天魔は、大天狗一人一人眺めて、集まってくれたことに対し謝意を述べる。


「諸君らも忙しい中だと思うが、急な要請に応えてくれて有難く思うぞ。妖怪の山の歴史上類を見ない程の危機が迫っている。今一度我らの結束を確認し、総力を挙げてこの未曾有の危機を乗り越えようではないか。」


天魔はそう言い、臨時の大天狗会議の開始を宣言した。

 

「しかし天魔様、我が精鋭なる近衛天狗団、白狼天狗団の手にかかれば、ふざけた暴徒などすぐに鎮圧できましょう。」

 

 口火を切ったのは初瀬大天狗であった。いかにも武闘派の彼らしい意見である。


「初瀬殿の言う通りですぞ、天魔様。しかし猪突猛進に突っ込んでは無駄な犠牲を増やすだけだ。緻密に計画を練らねばならぬ。戦とは力だけではないのだぞ、初瀬殿。」


 白峯大天狗が初瀬の意見に同調する。しかし、一言余計に彼を挑発することからも、大天狗同士の仲の悪さを物語っていた。

 天魔は黙って彼らの意見を聞いていた。すると天魔は、川美との話の内容を話せと言わんばかりに飯綱丸に対し目配せをして来た。


「まあまあお二方。軍事力を持って暴徒を制圧するのは我ら天狗の得意技とは言えども、少々お待ちいただきたい。実は私は暴徒、即ち反天狗同盟の同盟長と話をして来ましてな。そこで私は彼らの技術を目の当たりにしたわけですよ。彼らの使用している武器はどれも目を見張るものでした。個人同士の力比べでは勝っても、組織同士の力比べでは向こうに軍牌が上がるでしょう。」


 飯綱丸と反天狗同盟との関わりなどつゆも知らない大天狗達は目を丸くした。 

 しかし、熱血・初瀬大天狗から反論が飛ぶ。


「我ら天狗は鬼に次ぐ種族である。更に精錬された天狗団。所詮は低俗妖怪の寄せ集めの軍など、いかなる武器を使おうと我らには敵うまい。さては飯綱丸殿、命惜しさに怖気付いたのかね?」


「何を……!」


 飯綱丸が言い返そうとすると、彼女の隣からのんびりとした声がそれを遮った。葛城大天狗である。


「まあ争いはせずに越した事はないわね。余計な血など見たくはないわ。龍殿も言った通り、反天狗同盟に属する河童の技術は天狗よりも勝っていることは認めざるを得ないわ。対話で終われば1番良いのだけれど……。」


「では彼らの要求を全面的に飲むという事か?低俗妖怪の言いなりになるということだぞ。天下の天狗の威厳は地に落ちる。」


「何も全面的に意見を飲むなど言っておりません。あくまで対話して、そこで決めるのです。聡明な白峯殿ならば相手を言いくるめるなど容易い事なのでは?」


 山の存続をかけた危機になってまでも、大天狗はまとまらない。天魔は黙ってやり取りを見てはいるものの、内心頭を抱えていた。

 

 これはまた徹夜コースか。

 やれやれ。老体に徹夜は堪える。


 大天狗が論争を繰り広げている中、廊下を何者かが走る音が聞こえて来た。


「天魔様のお屋敷で走るなど、無礼な奴だ…。」


 白峯が呟く。

 やがてその足音は彼らのいる部屋の前で止まった。


「白狼天狗団第一大隊配下、月華小隊隊長、犬走椛であります!」


 犬走椛と名乗る白狼天狗は驚くべき情報を告げた。


 「玄武方面の防衛部隊からの緊急伝令!反天狗同盟と玄武方面の防衛を担う時雨(しぐれ)小隊が戦闘状態に入った模様です!」

意見がまとまらない大天狗会議。

そんな中、とんでもない伝令が飛び込んでくる。

天魔、大天狗達はどのように対処していくのか…?

──作者後記──

今回の第9話、ほぼオリキャラでした……。オリキャラの大天狗達は、初瀬大天狗を除いて、名字は日本に伝説の残る大天狗達から拝借しております。飯綱丸様と同じ感じですね。

ついに戦闘が始まった模様。平和的解決はできるのでしょうか。

楓間達3人組?

彼らは何も報告が来ていないので、大天狗会議が開かれていることなど知るはずもなく、まだ飯綱丸捜索を続けていると思いますよ。

もう少し読みやすい文章を書きたいものです。

それではまた次回。

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