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東方project二次創作小説 幻想郷支配論  作者: ディグ
第1章 妖怪の山
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第4話 飯綱丸に忍び寄る2つの危険

天魔、楓間、典の話し合いはまだ続く。

天魔曰く、飯綱丸には危険が迫っているとのことだ。

どうやらその「危険」には、「外側からの危険」と「内側からの危険」の2種類あるらしい。

 「平和的解決、ねぇ…」

 天魔が呟いた。


 「典。君には悪いが、私は飯綱丸が彼等(反天狗同盟)と関わっている、という点についてはほぼ間違いないと思っている。しかし、私は彼女のことを責めようとは思わない。おそらく彼女の行動は典、君が言った通り、現在の山の混乱をなんとか平和的に解決しようとしてのことだったのだろう。」


 典の顔が見違えるほどに明るくなる。楓間の顔も心なしか安心したかのような表情になった。


「じゃ、じゃあ飯綱丸様は大丈夫なのですね⁉これまで通り大天狗として…」


 いや、待て。典は話している最中に突然黙りこくり、考え始めた。

 飯綱丸様が今まで通りに過ごせる、ということはそれ即ち私も今まで通りに過ごせる、というわけだ。

 つまり、私がこの件を知っていようと知っていまいと現在の山やこの情勢は何ら変わらない。

 それなのにわざわざ私に主である飯綱丸様が敵対勢力である奴らと関わっている、なんてこと伝える必要あったのか?できればそんなこと、知りたくはなかった。

 まあ、おそらくただの事後報告だろう…

 典はそう結論付け、思考に終止符を打った。

 気づけば二人は心配そうな顔をこちらに向けている。


「すいません。急に黙ってしまって。それで…」


 またも典は最後まで話せなかった。しかし今度は自分ではなく天魔によって遮られたのだ。


 「典、遮ってしまってすまない。君は今恐らくなぜ、わざわざ自分にこんなことを伝えたのだろうと。自分に言ったところでどうにもならないのに。そう思わなかったかい?」


 いやはや恐るべし。手紙を渡しに来た時の楓間といい、今の天魔といい。天狗というのは相手の思考を読むことができるのだろうか。まるで覚り妖怪の如しだ。


 「は、はい、仰る通りです。でもただの事後報告かなって…」


 天魔は目を瞑り、大きく息を吐いた。


 「よく聞きなさい。典。君の主は今、物凄く危険な状況にある。」


 危険な状況…飯綱丸様が…?


 「反天狗同盟。名前の通り、“天狗”に“反抗”する組織だ。つまり、天狗を敵対視している、ということになる。そして、理由はどうであれ“大天狗”という天狗組織の上層部である彼女がそいつらと接触する、ということになると…」


 恐らく典も楓間も同じ思考回路に至ったのだろう。両者共に顔が見る見る青ざめていった。

 さらに追い打ちをかけるかのように天魔は続ける。


 「例えば天狗の情報を奴らに教える、など少なからず彼らにとって飯綱丸が有益な場合は安全だろう。しかしながら全て準備が完了したとき。即ち、飯綱丸が必要なくなったとき、真っ先に首を斬られるのは飯綱丸だとは思わんかね?」


 その通りだと典は思った。情報を絞れるだけ搾り取る。必要なくなったら躊躇なく切り捨てる。まさに典の常套手段であった。尤も、管狐である彼女の場合、相手に待っているのは死ではなく破滅だが。


 「おそらく奴らは平和的に解決しよう、などとは思ってないはずだ。もしかしたら表向きは交渉に臨む姿勢で、本当は天魔様の通り飯綱丸をただの道具としか思ってない可能性も…」


 楓間が叫びに近い声を上げる。


 「有り得なくはないな。少々意見が飛躍しすぎな気もするが。しかし彼等も馬鹿ではないだろうから、天狗の重役である飯綱丸を殺したら天狗全体が総力を挙げて潰しにくることなど安易に予想できるはずだかね。…まあ少なくとも、全面衝突に至っていない今のうちは、恐らく手出しはしないと思うよ。」

 

 天魔が自論を述べた。しかし本人にも自信がないのか少々躊躇いながらの物言いだった。


 「まあ、飯綱丸を同盟に近寄らせない方がいいのには違いないですよね。早速大天狗会議を開き………」

 

 楓間は立ち上がりながら意見を述べたが、天魔がそれを遮った。


 「待て。大天狗会議は開かん。」


 楓間も典も思わず驚きの声を上げた。


 「な、何故です…飯綱丸に危険が迫ってるかもしれない、ってことを共有しないと。大天狗総出でかかれば、飯綱丸にもしものことがあった時に対処しやすいと思うのですが……。」


 典もそうだと頷く。

 天魔は心なしか残念そうな表情を見せ、楓間らではないどこか遠くを見ながら言った。


 「楓間よ。お前は大天狗、と言うよりかは私に付きっきりだから知らぬかもしれんが、大天狗というのはそんな綺麗な絆で結ばれてはいないよ。先程彼女に危険が迫ってる、と言ったが、それは反天狗同盟による”外側からの危険”だけでなく、他の大天狗らによる”内側からの危険”も含めているのだ。」


 典には分かる気がした。飯綱丸はあまり他の大天狗の話はしなかったし、大天狗会議や大天狗同士の会談のあとはいつも機嫌が良くないような感じがしていたからだ。

 

 「内側からの危険…………」


 楓間は分からないという風に呟いた。


 「山の為に天狗の代表である大天狗は結束しないといけないのに、大天狗同士の仲が悪い…?」


 信じられないと楓間は首を振る。


 「もっともだ。もっともだよ、楓間!大天狗は協力し合わなければならない。しかし見ているのは出世、保身だけ。此度の飯綱丸の行動が他の大天狗に知れ渡れば、ここぞとばかりに飯綱丸を大天狗の座から引き摺り下ろそうとするだろう。ライバルが減るわけだからな。それが”内側からの危険”だ。だからこのことはくれぐれも内密に頼む。」


 さてと、と天魔は立ち上がった。


 「それから、何度も言ってるが今回の話のこと、また話の場があったということ、くれぐれも飯綱丸に知られるなよ。そうすれば、我々は知らなかった、という事ができ、今回の飯綱丸の行動は彼女の独断でやった、という事になる。しかし一度知られてしまうと、今回の反天狗同盟との接触と、私との繋がりができてしまう。そうなると、実は天魔の差金なのでは、など彼女にも危険が及ぶし、双方デメリットが生じるでな。天魔が関わった、関わってない、というのは非常に重要なのだ。」


 典は思った。今の天魔様のセリフ…。本当に飯綱丸様のことを思っての発言なのだろうか。それとも……自身の保身のための発言なのだろうか。

 何はともあれ、これで天魔様が飯綱丸様には内密にしろ、と拘った理由が分かった。  


 「悪いが2人とも。わたしはこの後執務が残ってるので、これで失礼するよ。楓間、典を送ってやりなさい。」


 と言い残し、天魔は部屋を去って行った。



 行きと同じ廊下を通り、天魔邸、玄関。


 「典。頼むぞ、何があっても飯綱丸のことを守れよ。あ、内密に、というのは忘れずにな。それから、何かあれば俺の所なくればいいよ。きっと力になる。」


 楓間は典の肩をたたき、そう言って典を送り出した。

 飯綱丸の家まで行こうか、と楓間は申し出たのだが、典が断ったのだ。

 帰りながら考えたいことは山ほどある。


 天魔邸に到着し、実に1時間弱。

 典は、帰路に就くのであった。

典は飯綱丸の安全を託され、天魔邸を後にした。

今後、飯綱丸には「外側からの危険」と「内側からの危険」が降り注いでしまうのか…?


──作者後記──

今回は天魔様の発言メインだった気がします。

東方projectの二次創作の小説なのに、東方キャラが飯綱丸様と典しか出てきていませんね。

これは由々しき事態です。

次回はこの2人以外も登場するかも……?

(前回の投稿に誤字があったみたいです。指摘してくれた方、ありがとうございました。)

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