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東方project二次創作小説 幻想郷支配論  作者: ディグ
第1章 妖怪の山
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第15話 飯綱丸、遂に前線へ──!?

一夜開けた。


どこかおかしい大天狗会議。


飯綱丸は衝撃的な天魔令を受け取る。

そこには、知らない大天狗の名前があった。

深夜。天魔邸。

夜深くともなれば、流石に敵の砲撃も止み、夜風に乗り漂ってくる音は虫の声だけとなった。


昼間とは打って変わって静かな天魔邸・大広間。

そんな部屋には似つかわしくない弱々しい蝋燭の火を頼りに、2人の天狗が向かい合っていた。


「…本当に、お前がやるのか…?」


「はい。今こそ、天魔様に恩返しすべき時にあります。」


夜闇に蝋燭の火で照らされ、微かに見える初老の天狗の目をまっすぐと見つめ、天狗の青年は言い切った。


「こんな事を言うのも彼に悪いが、大山殿の代わりはいくらでもいる。銃後で指揮をとっている葛城殿や飯綱丸殿、白狼天狗団長など…。」


「それでも……それでもやはり私がやります。私の、そして私の一族の過去を詳しく知っているのは大天狗の中では一番年配の大山大天狗だけですし、少年期には世話もよくしてくれました。天魔様に恩を返すと共に、私は大山大天狗にも恩返しがしたいのです。」


「しかし…大天狗代理ともなれば………その名前で勤めることはできまい。お前が必死に辿り着いたこの地位や、手に入れた信頼を失うことになるやもしれんぞ。」


「覚悟の上であります…。大天狗代理として、紺碧の頭襟を賜った際には、もう”楓間”とは名乗りません。我が一族の名で……それがどれだけ不名誉なものであっても…。」


静かな大広間に、青年の決意の声が響いた。




夜が明け、妖怪の山は新たな一日を迎える。

気づけば、山に響くのは虫の声から鳥の囀りに変わっており、麓付近に反天狗同盟が陣を展開している以外はいつもと変わらぬ朝である。


飯綱丸は意外と朝が弱い。典に起こしてもらう時もあるほどだ。しかしこのご時世、悠長に朝寝坊などしていられぬ。

恐らく今日も大天狗会議の召集がかかるだろう。

せめて天気だけでも…と飯綱丸は外に出た。


外は見事な快晴であったが、飯綱丸の視線は地面にあった。そこにはいかにも重要そうな感じを醸し出している書簡が無造作に放ってあった。


不用心な…。飯綱丸は顔を顰めつつ書簡の土を払い、部屋へ持ち帰った。


射命丸とか平の天狗だったら三脚だな……。


そんな事を考えるも束の間、書簡にはとんでも無いことが書かれており、飯綱丸は危うくひっくり返るところであった。




飯綱丸 龍 殿


詳しくは本日の大天狗会議にて聞くことになるだろうが、先日の激戦において、大山大天狗が負傷され今後の指揮継続は困難だと医療部が判断した。後任は私が勤める。他大天狗殿にも御協力を仰ぐが、飯綱丸殿にも御援助頂くとこの上なき幸いである。



送り主の名前は書いていなかった。

しかし、筆跡や書簡をぶっきらぼうに放置していることなどから、恐らく送り主は楓間だろうと判断した。


───大山大天狗が負傷、か。楓間殿が後任を勤めるとしても───


私が前線で指揮を取るのもそう遠くはないのかな。


「おはようございます。」


飯綱丸が物思いに耽っていると、後ろから声が聞こえた。昨日泊めた川美である。飯綱丸は反射的に書簡を隠した。


「おはようございます、どれ、私は朝食でも作りますかな。普段は典が作っていますが、昨日あんな事もあったし…ね。川美殿も食べて行って下さい是非。」


「それでは、お言葉に甘えるとしましょうか。」


川美は笑顔を崩さなかったが、元敵のトップということもあってか、飯綱丸は本能的な不気味さを感じた。


「期待はしないでください…。簡単なものですからね。」


そう言いながら飯綱丸は部屋を出た。

川美は飯綱丸の書簡に気がついたようだが、特に何も追及してこなかった。


朝食の際も典は相変わらずであった。

普段自分が作っている朝食が並んでいることに驚きつつも、不貞腐れた目で麦飯のおにぎりに手を伸ばす。


典は紛れもなく、やり手の策士であり、飯綱丸の一番の右腕である。

飯綱丸本人も何故かはよく分かっていないが、今の典のようなどこか幼げな様子を残す典が、飯綱丸に安らぎを与えていた。


しかし飯綱丸は朝食を悠長にとっている暇はなかった。一刻も早く天魔邸に向かわねばならぬ。


典と川美の二人だけを残していくのは些か不安ではあったが、流石に川美も典を襲ったりはしないだろう。

……ちょっかいはかけるかもしれないが。


天魔邸付近は飯綱丸の予想に反して静かであった。

そして大天狗会議も、書簡の通り大山大天狗の代わりにいつもと違う頭襟を被った楓間がいる以外は特に変わり無かった。


しかしながら────

大山大天狗の負傷や楓間大天狗の件に関しては恐ろしい程に触れられず、まるで大山大天狗がそこにいるかのようであった。

大天狗一同は困惑を隠せていなかった。


無論飯綱丸も例外ではない。

普通、代理であっても大天狗が誕生する際には数日間に及ぶ儀式が執り行われる。そして、その儀式の最後に、天魔から頭襟を授かる。

それほど天狗にとって頭襟とは神聖な物なのである。


楓間大天狗は、それらを全てすっ飛ばして紺色の頭襟を身に付けている────。

仮に有事の際であっても、伝統を重んじる天狗社会でそのような事が有り得るのか?


飯綱丸がそんな事をぼんやりと考えていたが、天魔の


「散!」


という声で我に返った。

散、とはそれ即ち大天狗会議の終了を意味する。


しまった、色々と聞きそびれた、と思ったが時すでに遅し。


仕方がないと去ろうとする飯綱丸を、天魔は呼び止めた。もしや会議を聞いていなかったことがバレたかと飯綱丸の背中に冷たいものが走る。


「……何でございましょう……?」


「……天魔令だ、よろしく頼む。」


叱られるだろうと身構えていた飯綱丸に紙を手渡す。


「……拝見致します……」


その紙には天魔令、と書かれた後に、次のようなことが書かれていた。




一、飯綱丸大天狗ハ、大山大天狗ノ代理ナル鞍馬大天狗ト共同シ、玄武ノ沢ニ広メタル白狼天狗団及ヒ大山大天狗団ヲ率ヰヨ

二、飯綱丸大天狗団ハ、山腹に防衛戦ヲ形成セヨ



「………な!?これは…………!」


白狼天狗団・大山大天狗団を指揮するというのは、前線に出ることを意味する。

そして、鞍馬大天狗とは─────?


振り返ると、楓間がバツの悪そうな顔で立っていた。

───以下新聞記者達のおはなし────

姫海棠はたて:ここ最近はホント大変だわ。上からの検閲も厳しいし。


射命丸文:それは私への嫌味と見てよろしいでしょうか?


姫:おっと、文々。新聞の記者さんじゃないですかー。あれ、お宅の新聞って…今どうなんでしたっけ?


射:分かってて言ってますね…。ええ発禁処分赤信号ですよ!!私、何もしてないのに……。


姫:日頃の内容見てでしょ。この調子で発禁処分になってくれたら嬉しいんだけどね!


射:ぐぬぬ…。


文とはたての新聞争いはまだまだ続く。

以下は、本日の文々。新聞(発禁間近)の記事(一部抜粋)である。



激動の一日、一夜開く

反天狗同盟はいよいよ暴挙にいでき。我ら天狗に向け刃を向けけり。我ら天狗は果敢に挙兵し、蛮族共に対し鉄槌を下しに山を下りき。

その差歴然に、白狼天狗団、大天狗団共に連戦連勝、敵鎮圧は目前なり。



───作者後記───

夏休みですね!模試ってなんですか?

今更すぎますが、執筆初心者の拙い文章を毎度読んでくれてホントありがとうございます!

今後も読みやすく、今迄の設定が消え去らないような文章を書けるようがんばりますー!

それではまた次回。


楓間一族に隠された過去とは一体…………?

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