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思い出

作者: 秋月 周

二年ぶりにとある曲を聞いた。やはり彼が作る曲は常に界隈の最前線を征くような、そんな深く心に突き刺さる感動を与えてくれる。十数年前から活動を続けて潰れないのにも合点がいく。

しかし今日改めて聞いた時、二年ぶりという感覚はまったくなかった。時間の経過に気づいたときには、ハッと息を呑んだ。「あぁそうだ。私は既に、初めてこの曲を聞いてから二年以上も経っているのだ」そう思った。

とある曲が私の目の前に現れたその日、寝る間も惜しんで、親友と一緒にイラストを模写した。A4のコピー用紙に描いた。

下手な絵だった。今ならもう少し上手く描ける

二年前といえば、私は中学二年生だ。一つも、実感がない。なぜなのだろうか。やはりまだ、大人になりたくない、という子供じみた思想が、脳みその中に残っているのだろうか。

急に中学校に戻りたくなった。これがノスタルジックか。困ったものだ。

中学校巡りをするなら、まず初めに一年生教室に行きたい。その後に二年生教室、三年生。お昼ごはんもそこで食べたい。寝転がりたい。体育館で寝転がりたいな。あぁ、子供っぽい感情がどくどくと溢れてくる。ナイフで傷をつけられた心臓が血液を垂れ流すように、私の内側からも懐かしさが溢れる。

次第に涙も溢れてきた。ゆるりとダムが崩壊するように。私の眼球から涙が、一本の筋を描いて、机に垂直落下した。

あぁ、技術室にも行きたいな。一年の授業時では技術室に立ち入ることが多かったが、学年が一つ上がった途端にめっきり行かなくなってしまった。後悔している。もっと多くの場所に行けばよかった。物足りなさが拭えない。満たされない。あぁ。今すぐにここを飛び出してしまいたい。あぁ、悲しいな。嫌ではない。しかし、悲しいな。もうあの通学路を通ることもなくなるのかと考えると、胸が詰まる。

この感情はどう処理すれば良いのだろう。私は正解を知らない。いや、知っているかもしれない。けれどどうにも、やはり今の私には正解など分かりもしなかった。もしかすると、今中学生として生きる人なら分かるかもしれない。

そして、中学生の私なら、或いは。

修学旅行が恋しい。体育祭が恋しい。学校祭が恋しい。生徒会も、部活も、授業も、先生も、友達も、あの子の笑顔も。全部、全部全部全部、恋しい。

あぁ、私は恋い焦がれている。きっと私は、未熟な私は、思い出の中で燻ってしまっている。


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