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【コミカライズ】婚約の条件を『犬耳と尻尾あり』にしたところ、呪われた騎士団長様が名乗りを上げてきました  作者: 氷雨そら


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看病と告白 4


 ***


「あの……。本当に大丈夫ですから」

「……君みたいな華奢で可憐な人が、病に倒れたら、目を離せないに決まっている!!」

「……えぇ」


 私は中肉中背で、華奢ではないし、ましてや可憐とはほど遠い。

 騎士団長様が、私を余命幾ばくもない重病人のように扱い過保護すぎるから、お手洗い一つ行くにも難儀しているのだけれど……。


 ――耳が完全にペチャンコだし、尻尾も完全に垂れ下がってしまっている。


 こんな姿を見て、むげにできる犬好きなどいるだろうか。答えは、いない、それしかない。


「……喉が渇きました」


 先ほどから、こちらをチラチラ見ながらうろうろしているので落ち着かない。

 仕方がないので、お願いごとをしてみることにした。


「わかった! そうだ、霊峰シルビーティアの湧き水と氷を!」

「待って!! 私は、王都の普通のお水が大好きですし、あまり冷たいのは身体を冷やしますし」

「そ、そうか……。それもそうだな」


 ……危ないところだった。霊峰シルビーティアといえば、北端にある高山で、その場所の湧き水は聖水の原料になる。


 資料によれば、フェンリス狼はその山に生息するという。


「……また、騎士団長様が三ヵ月近く王都を不在にするところだったわ……」


 騎士団長様が持ってきてくれたお水は、ものすごく高価そうなクリスタルの器に入っていて、手が震える。

 こんなものを何気なく出してくるあたり、本当に彼は侯爵家のお方なのだと再認識する。


「……美しいグラスですね」

「ああ、初代国王が最愛の王妃に贈った器らしいな」


 なるほど……。そう言われれば、文献で見たことがあるかもしれない。ずいぶん精巧なレプリカだ。……レプリカだよね?


「あの、騎士団長様こそ体調は」

「問題ない」

「……嘘つきですね」

「え?」


 私はこの三日間過保護すぎる看病を受けて、熱も下がって元気だ。

 けれど、日に日に騎士団長様は、憔悴していっている。無理をしているのは明らかだ。


「眠れないのですか?」

「……この姿になってから、君が恋しくてしかたがないんだ」

「え?」


 そういえば、私を抱きしめて眠って以降、騎士団長様は夜は別室に行く。

 ちゃんと眠れていないのだろうか、色濃く浮かんだ隈をそっとなぞる。


「……狼の魔獣は、生涯番とともに暮らすらしいですね」

「……らしいな」


 自分にとって唯一の存在を愛し、そばにいて、いなくなれば片割れも命を失う。

 ずいぶんロマンチックなのだな、と思っていたけれど……。


 ――狼耳と尻尾、そして八重歯に嗅覚。呪いは騎士団長様を作り替えてしまった。……そして。


「……本当に、なぜそこまで」


 魔獣がかける呪いの存在を私は資料から知っているだけだけれど、騎士団長様は本物を目にしてきたはずだ。

 だから、耳と尻尾だけのはずがないなんて、もちろん理解していただろう……。


「寒いです」

「えっ!? 今すぐ暖炉を最高の火力に!! いや、暖かい服と布団を用意……。え?」


 引き寄せて、抱きしめれば、屈強な騎士団長様は、あっけなく私のなすがままになって、ベッドに倒れ込んだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] クリスタルの器!もしやホンモノ?!手がプルプルしそうです(^◇^;) それにしても、騎士団長様はものすごくかわいいですね♪
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