背びれ
その青年は大海原に1人ポツンと浮かんでいた。
彼の乗っていた飛行機が空中でエンジントラブルを起こし、海に激突したのだ。
青年の周りには飛行機の残骸や荷物が浮かぶばかりで、助かったのは彼だけのようだ。
あの高度からの落下で大した傷もなく生きているのは奇跡としか言いようがない。
と言っても、あたりを見合わしても陸は見えず水平線が広がっているだけだったが。
「これは、困ったことになった。いつになったら救助は来るのだろうか…いや、今は命が助かったことを感謝すべきか。」
青年は浮かんできたスーツケースにしがみつきながら救助を待った。
そうしてしばらく待っていると、青年の目に何か動くものが映り込んだ。
「あれはなんだ…?動いている…背びれ、つまり、あ、あ、サメだ!」
海上に浮かぶ背びれはしばらく青年のまわりをうろついていたが、やがて青年を見つけたのか一直線に向かってきた。
「なんてことだ、ああ神よ、サメに喰われて死ぬくらいなら苦しみなく衝突で死ぬほうが良かった…」
と言っても諦めたわけではない、青年は大して信じていない神に祈りながら無我夢中で泳ぎ続けた。
人間火事場の馬鹿力、生きるか死ぬかとなると想像以上の力を発揮するものである。
つまり、あの憎々しい背びれから逃げ切れたのだ。
もっとも海流や波の影響もあったかもしれないが。
「いやまさか、2度も命の危機から脱するとは、私には神仏の加護といったものがあるのかも…」
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「で、例の飛行機事故の生存者の件はどうなりましたか?」
「うむ、誠に残念だがあの事故での生存者は確認できなかった、
と言っても、あの高度で起きた事故だ、仕方ないこと…」
「そんな、万が一生存者がいたらかわいそうですよ、もっと捜査を…」
「その点については心配いらない、人を見つけたら陸まで引っ張っていくように訓練されたイルカが落下地点を巡回して………」




