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黄泉の力は蜜の味  作者: ゆくりぷ
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開花編②

 俺たち2人は歩いて行く。学校まであまり近くない。ビルの間の暗い小道に入っていく。ここの道は学校に行くのによく利用する。6階ぐらいのビルが立ち並んでいる間なのでとても暗い。不気味な雰囲気がいつも漂っている。

「ったく。ここら辺って全くきらきらしてねえよな。廃れてるし、汚いビルばかりだし。ほんとに人があんのかよって話だよ。」

 俺たちはビルたちに縁取られたぐねぐねの道を歩いていく。

 ぶるっと体が身震いする。異質な空気に包まれる。悪寒なのだろうか。全くそんなことはなかった。急にあたりが凍てつく。まるで冷気のような霧が足元を覆う。

「なんか寒くね?」

 健も異変を感じていたようだ。俺も、と小さく言った。何かおかしい。体が重いよな、心臓が縮むような。一体なんなんだ。

「おい、ちょっと待て。見ろよあれ!」

 健が前を指さした。その手は、ぶるぶると震えていた。俺はその先を見た。見た瞬間、心の奥深くからぞくっと突き刺すような感覚に襲われた。怖い。俺たちの数メートル先には、得体の知れない誰かが突っ立っていた。。3メートル以上はあるだろうか。全身がどす黒く、顔が見えない。手足は長く、そして異常に細い。だがそいつが醸し出す異質さは何にも表現し難いほどだった。俺たちは直感した。逃げなければ、、、

「逃げよう。いや逃げなきゃ、、、」

 俺は言った。最後の言葉の続きは言うまでもなかっただろう。

「お、おう。」

 幸運なことにそいつは俺たちに気づいていないようだった。後ろに俺たちは後ろ歩きで恐る恐る歩いた。

「パキッ」

 全身に汗が吹き出る。しまった。木の幹を踏んでしまった。気づいていないか。俺はそいつを見た。すると今まで動いていなかったのに、急に体が動き出した。その動きはこの世のものとは思えなかった。突如顔が変形しだす。ぎょろっときみの悪い2つの目が飛び出てきた。ぐりっと俺たちの方を見る。その刹那、奇怪じみた声が耳の奥を掻き鳴らす。

「あ………ア……ああァぁァァぁァぁア!!!!!」

 そいつがついに俺たちの方へ動き出した。

「に、逃げるぞ!!」

 俺たちはそいつと反対方向に走り出そうとした。しかし出来なかった。細長い手が俺たちに槍の如く迫ったのだ。俺は必死で体をのけぞる。

「っっ!?」

 左腕を掠める。その衝撃で俺は転んだ。

「ぐはぁっ!!」

 健の声が聞こえた。俺はその態勢のまま健を見た。俺は目を疑った。そいつの鋭い手が健の胸を貫いていた。ああ、嘘だ。嘘だと言ってくれ。そいつは健から手を抜いた。そして、俺の方を見る。俺は察した。ああ、死ぬんだ。そいつが俺の方へ歩いてくる。そいつが手を振りかざした。



 かけたお守りがぼうっと一瞬、青く燃えた。



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