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黄泉の力は蜜の味  作者: ゆくりぷ
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開花編①

「ううっ」

俺は目を開けた。スマホのアラームが鳴っている。

「ハァハァハァ」

 まただ。最近こんな悪夢によく襲われる。高校生にもなってこんな夢を見ようとは。汗だくになった顔を落ちているタオルで乱暴に拭き取る。

「護、そろそろ起きなさい。」

声が聞こえた。分かったーと平らな返事をした。タオルを放り投げ部屋から出る。階段を降りると秋刀魚の香ばしい香りがすぅと鼻の奥まで漂ってくる。悪夢にうなされてただろうか。お腹がぐぅっと音を鳴らす。食卓に置かれた和食の品々に思わずよだれを垂らす。

「さあ食べましょうか。今日は長芋をすってみたの。」

 全くうちには洋の文化がまるでない。間髪入れずそれもそうかと納得する。俺は、祖母と二人暮らしをしている。うちは代々継がれる神社の家系でその歴史は1000年以上も続いているらしい。

「ここも古くなったわね。やはり歴史を感じるわ。そうだ、あなたのおじいちゃん、全国でも名の知れた霊媒師だったのよ。札を片手に何か唱えるの、それはもうー。」

また始まった。おばあちゃんはきっとボケてるのではないか。毎日同じ話しばかりする。でも身の回りのことはきっちりやるし、85歳なのに車で運転してヨガまでしにいっちゃうし。もうボケてるのか分からない。俺は急いでお米を口にかき入れる。

「ごちそうさま!」

  話しがまた長くなりそうだったので早めに食事を済ませ、制服に着替える。着替えも済ませ玄関に行く。

「それじゃ行ってくるわ。」

 いつもだが遅刻ぎみなので慌てて玄関を出ようとする。

「お守りは首にかけたのかい」

 玄関まで見送りに来たおばあちゃんは言った。

「ほらかけてるよ」

 ワイシャツの下から気だるそうに取り出す。これは我が家特製らしい。なにやらおじいちゃんが作ったものだとか。まーこんなもん何に役立つんだと思いながらもおばあちゃんが頑なにかけさせるので渋々かけている。 

 家から出て道に出ると後ろから、

「おーい。護ーー」

 と聞こえてきた。

 「なんだよ、健かよ」

 俺は言った。健とは小学校からの付き合いで、高校に入ってからもずっと一緒にいる。

「しっかしやっぱでけえよな。お前ん家。何千坪あんだよ」

「何千もねえって。そりゃ神社の敷地内なんだからこんぐらいあるだろ」

 全く。神社なんだからこんぐらいあるのは当然だろう。そんなことを思いながら今日もたわいない話で盛り上がる。

すーー、とん。襖の開く音がした。

 

 



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