Kenta@Police
第五十九章~思わぬところでライバル発見の巻
露草氏のカフェレーサー、七百五十CCのラベルダSFCに続いて僕はサンバーバンを走らせていた。
横には未だ眠るミサキ氏で後部座席に大道少尉と彼のバイク、カブを搭載して。
日が落ちるとエアコンなしでも割と快適な道中だった。四十五分ほど経過しただろうか、露草氏の自宅に到着した。
小さな、しかし見た目、凝った造りの一軒家だった。駐車スペースは空だった。旦那さんとやらは仕事中らしい。露草氏はラベルダSFCを止め、盗難防止のチェーンロックを巻いてからフルフェイスを取り、僕らを手招きした。
「車はその辺に止めときぃ。パトの巡回もあらへんからな」
言いつつ露草氏はライダースジャケットの上を脱いで、腰で巻く。
僕と、寝ているミサキ氏を抱えた大道少尉は手招きに従って露草邸へと向かった。
小さなドアをくぐると、室内はかなり広かった。短い廊下から繋がるリビングダイニングは来客を想定した広さで、大きなモニターと凝ったオーディオ機器もあった。
「まあその辺に座っとき。ああ、ゲームはそこにある筈やから、適当に遊んでていいで。うちはちょちょいとつまみでも作っとくわ」
言われた僕は早速ゲーム機を発見。自宅にあるものの倍ほどのモニターで『フォートギルド』を、と思ったら、既にダウンロード済みだった。
初期装備がかなりのもので、これはかなり課金しているな、と伺えた。思わぬところでライバル発見である。名前を見ると「Kenta@Police」と表示されていた。
「旦那さんの名前、もしかしてケンタさんって言うんですか?」
僕が大声で尋ねると「せやで」と露草氏。
「なんや、知り合いかいな?」
手を休めて露草氏がエプロン姿で戻ってきた。僕はゲーム画面を指差して「ここに」と説明する。
「ああ、そういうことかいな。オンラインて本名あかんのやろ? これ、大丈夫なんかいな?」
「偽名か記号にしてる人が殆どですけど、まあ大丈夫でしょう。ちなみに職業は警察官だったりします?」
「なんや、それもバレとるんかいな。ほんまにあいつはもう……」
「まあ逆に本気にする人は少ないでしょうから、安心していいと思いますよ。ちなみに僕のキャラはこれです」
言いつつ自分のアカウントからキャラを引っ張ってくる。「Mr.A@Misaki.DO」、ミサキ探偵事務所のミスターAという意味だ。
「へぇ。器用なもんやな。まあ、がんばりぃや」
言い残して露草氏はダイニングへと戻った。
さて、ケンタ氏がどれほどの腕前か知らないが、僕がハイスコアを叩き出してやろう、と鼻息荒く『フォートギルド』開始である。




