フレディ・スペンサーくん
第五十八章~二日足らずで六百万円を稼いだことになるの巻
昼間の佐久間という学生のことや、タロンのことなどを語っていると二時間はあっという間だった。
「さて」
言いつつ露草氏はパソコンの電源を落として、白衣を脱いだ。目のやり場に困るほどの露出度とプロポーションがそこにあったが、当人は意に関せずといった風で、そのまま骨格標本に向かう。
「ジャケット貰うで、フレディくん」
ライダースジャケットを着た骨格標本に何事か告げ、露草氏はいきなり上下を脱いだ。
僕がわあわあと慌てている間に、露草氏は上下揃いのライダースジャケット姿に変わっていた。
「なんや? フレディくんがそないに珍しいんか? こいつな、フレディ・スペンサーくん言うねん、よろしゅうな」
論点が全く違うが、まあ本人が気にしていないのなら、ラッキーだったと胸の内に刻むことにした。
「さてと、うちはお家に帰るけど、二人、三人か、はどないするんや?」
「……ふおっ! 瞑想しておったわい。吾輩は――」
絶対にうたた寝だろう、と内心で突っ込む。
「――資金が乏しいが故、牛丼でも食いに行くとするかのう」
「僕は、えーと、美咲さんを事務所に送ってから帰宅、ですかね?」
そして空調の効いた部屋でカップ麺でも食べつつ『フォートギルド』、とは言わずもがな。
「なんや、少尉は今日もタロンを退治したんやろ? せやったら蘭子{らんこ}んところから大金がもらえるんちゃうの?」
失念していたが、鳳{おおとり}氏からのタロン一匹の討伐報酬は三百万円! 昨晩と合わせると大道少尉は二日足らずで六百万円を稼いだことになる。これはもうちょっとした年収に近い。が……。
「鳳のところからの支払いは後日になるらしいが故、露草、貴様から頂いた五千円の残りが吾輩の全財産なのだ。ははは」
どこが笑うところなのか不明だが、大道少尉は言って笑った。
「せやったら……」
フルフェイスを手に取り、露草氏は言う。
「美咲も連れてうちんとこ来るか? そないに大したもんは出せんけど、牛丼よりはマシやで?」
「なんと! ちなみに露草よ、エアコンはあるのか?」
「は? 当たり前やん。こないな猛暑が続く夏にエアコンなかったら死んでまうわ」
露草氏の申し出は願ったり叶ったりだった。念のために僕は聞く。
「露草さんのお宅にはゲーム機とか、あります?」
「うちはせえへんけど、ダンナが好きやから、なんや、いろんなのがあるけど?」
僕は思わずガッツポーズをした。エアコン完備、ゲーム機、おそらくオンライン対応ならば『フォートギルド』をダウンロードしても問題ないだろう。基本無料ゲームなので。
加えて露草氏の手料理とくれば断る方がおかしいと言うもの。
露草氏、僕は続いて、大道少尉は未だ熟睡中の美咲氏を抱えて、保健室を後にした。
「んー、むにゃ……」




