桜桃新聞
第五十六章~カウンター・タロン・ユニットの巻
桜桃{おうとう}新聞、オンライン配布されているそれはかなりの出来だった。
学園広報部は、いや、奈々岡鈴{ななおか・すず}さんと言ったかは、かなり達者らしいと伺{うかが}える。
写真部分はクリック・タップすると動画になっており、先のカッターナイフと怪物{タロン}事件はその動画付きでかなり詳細に書かれていた。
当然ながら大道少尉の写真もかなり大きく掲載されていた。
「お兄さんは何見てんの?」
アヤちゃんが聞くので、僕はスマホを見せた。
「ああ! リンリンの新聞ね? もうアップしてんのかー、仕事早いなぁー」
言いつつアヤちゃんは僕のスマホを覗き込む。
桜桃ブレザーの襟からうなじが見え、ほのかに香水の香りもして、僕はこの金髪ツインテールの女子高生にどぎまぎしてしまった。
「アヤ! その方に失礼でしょう! 自分の端末で見なさいな」
橋井利佳子{はしい・りかこ}、リカちゃんが少し声を荒げる。
どうやらリカちゃんはリーダー気質らしい、想像だがそう見えた。だから「リカちゃん軍団」なのだろうな、とも。
僕と大道少尉、そして男女合計六名はそれぞれ奈々岡という彼女が作ったらしき桜桃新聞を読んでいた。唯一例外は露草氏。
相変わらずラッキーストライクを咥えて窓の外、まだ明るいそれを見ていた。
と、方城護{ほうじょう・まもる}くんが挙手した。
「どうした? 男子よ?」
「このタロンとかっていう奴、俺の蹴りでは倒せないんっすかね? 足腰には自信あるんすけど」
「ふーむ。憑依された相手になら有効だが、残念ながらタロンに効くのは純銀。もしくは聖水、儀式礼式を施した武具のみとなる」
「俺のバッシュにその聖水? それかけて貰うとかは?」
僕は、なるほど、と頷いた。
高校一年生ながらバスケ部エースならば運動神経は相当だろうし、その蹴りにも威力はあるだろうから、方城くんの申し出は利にかなっているな、と。
「二度あることは、か? 方城。あんな化物がまたこの学園に現れるとは思わないんだがな、俺は。しかしまあ、そちらの少尉さんの口添えで聖水だか儀式だかでバッシュを清めれば、桜桃のスコアリングマシーンに加護はあるかもな」
肯定しているのか否定しているのか不明な長い科白は須賀恭介{すが・きょうすけ}くんからだった。
「アヤとかリカ、レイコに何かあったら洒落になんねーからな? どうすか、少尉さん?」
「良かろう。鳳{おおとり}に話を通しておくが故、しばし待つが良い」
「オオトリ?」
聞き返したのは、あの羨ましい高校生、久作くんだった。
「鳳蘭子{おおとり・らんこ}はCTU、カウンター・タロン・ユニット、対タロン組織のブレインである。奴に任せれば聖水アンプルくらい用意するだろうよ」
それでは丸投げだ、思ったが当然口には出さない。
また一つ鳳氏の仕事が増えたなあ、とも。




