痩躯の男子
第五十四章~通称「リカちゃん軍団」だぜ! の巻
コツコツと保健室ドアがノックされる。露草氏が「空いとるでー」と返事をすると、どっと人が押し寄せた。
女子が二人に男子が三人、広くはない保健室はもう満杯である。
「アヤ、そちらの方が噂の?」
黒いロングヘアの、整った顔立ちの女子がアヤちゃんに尋ねる。
「そう! 超探偵の少尉!」
「少尉?」
尋ねたのは男子の一人、痩躯ながら長身で切れ長の目をした生徒だった。
「ひょっとして、自衛官とかですか? そちらの少尉さんとやらは」
もう一人の男子、痩躯な生徒よりやや柔らかい印象の高等部一年らしきが質問する。
「男子よ、吾輩は自衛官ではなく、故に少尉とは昔の経歴の名残りである」
「久作です、速川久作{はやかわ・きゅうさく}と言います、少尉さん。さっきの男は須賀、須賀恭介{すが・きょうすけ}で――」
「どうも」
「後ろの背の高い奴は方城護{ほうじょう・まもる}です。バスケ部のエースなんですよ、彼は」
「おっす」
須賀恭介、速川久作、方城護、丁寧に紹介されたが、正直混乱してくる。きっと大道少尉もだろうと思ったが、少し違った。
「男子らよ――」
最初から覚える気などないようである、全くこの人は。
「――改めて! 我がカイザー――」
「ストーップ! 少尉! まだリカちゃんとレーコが挨拶してない!」
アヤちゃんが強引に大道少尉を止めて、先の黒いロングヘアの女子と、もう一人の女子に手招きする。
「あ、あの、橋井利佳子{はしい・りかこ}です。リカ、でいいです、少尉さん」
「私はレーコ! うん? ああ、加嶋玲子{かしま・れいこ}でーす!」
加嶋玲子と名乗った女子はちょっと跳ねたショートボブで、なんだかやたらとプロポーションが良かった。
橋井利佳子のほうも読者モデルで通用しそうなルックスだった。
そこにアヤこと橘綾を加えると……。
「あたしら三人、通称「リカちゃん軍団」だぜ! よろしくベイビー!」
「だからアヤ! 初対面の方にそういうのよしてよね。リーダーはあなたなんだから」
アヤちゃんの宣言をリカちゃんとやらが制する。と、男子の一人が付け加えるように、やや眠そうな口調で言う。
「アヤくんやリカくん、レイコくんはこの桜桃{おうとう}学園ではちょっとした有名人でしてね。俺……失敬、僕らはそのボディガードをさせられているんですよ」
確か、須賀恭介と紹介された痩躯の男子が説明した。
色々あるのだな、と、色々なかった高校生活を振り返り、僕は頷いた。




