既に大学を卒業していて
第五十三章~アメリカ生まれのアメリカ育ちの巻
「私立探偵って殺人事件とか解決するあれだよね? でもってタロン? 怪物も退治するとか、少尉イカすじゃーん!」
前半部分にかなり間違いがあったが、誰も指摘しなかったので僕も大道少尉に任せることにした。
「ははは! タチバナは解っておるのう。吾輩、県警捜査一課には顔パスが故、事件現場に立ち入ることなぞ造作もない! 変死事件、トリック殺人、密室殺人から犯人追跡まで全てをこなしてこその超探偵! そして! ひとたびタロンが現れれば、このカイザーナックルが唸るのである!」
女子高生相手に何故か饒舌な大道少尉。褒められて気分がいいのだろう、きっと。簡単な方だな。
「そして! 真・カイザー――」
「あ、ごめん、ちょい待って……うん、うん、今、葵{あおい}ちゃんのとこ。うん、じゃあ待ってるね、バーイ」
スマホを伏せた橘綾{たちばな・あや}が話を続ける。
「話のいいところだけど、ちょい待って。すぐにクラスメイトが来るから、一緒に聴かせてやりたいんだけど、いいよね?」
「うむ、良かろう。ならばそれまで吾輩から質問でもするか。タチバナよ、アヤと言ったか? お主、高等部か?」
「そだよ、一年。高校になってからの編入組なのよ、あたしは。それまではずっとアメリカ暮らし」
僕が、え? とちょっと驚いた風だったのでアヤはこちらに目くばせを一つ、続けた。
「父親がアメリカ人でね、アメリカ生まれのアメリカ育ち。あっちで飛び級してたら大学卒業しちゃってさ、遊び相手欲しくて無理言って日本に来たのよ。母親が日本国籍だからね。んで、改めて高校生活をエンジョイしてると、そういう事。オーライ?」
見た目中学生、実際は高校一年生らしいアヤちゃんはどうやらかなりの頭脳の持ち主らしい、とだけ分かった。既に大学を卒業していて、遊び相手欲しさに日本の県内随一の進学校に編入とは、なんだか凄そうな経歴だ。
どうにか二流大学に通っている僕とは頭の作りが根本から違うのだろう、とも。
「ふむ、大体解った。タチバナは遊びたくてここにおるのだな?」
僕は、は? と口から出そうになった、が、アヤちゃんの返事は、
「そだねー。試験はどうにでもなるし授業は全部寝ててOKだから、休み時間と放課後、休日こそ、あたしのゴールデンタイムって奴ね?」
「吾輩は毎日がゴールデンタイムであるが、話はまあ解った。満喫するが良いぞ、タチバナよ」
言われたアヤは満面の笑みでブイサイン。
超探偵に負けず劣らずの超女子高生といったところだろうか。




