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映画館に着き、チケットを発券し、ポップコーンと飲み物を買って席を探す。

「おっ、ここか。うん、結構いい位置だな」


座席は上から5列目ぐらいの中央付近。下過ぎないから見上げることもないし、見やすそうだ。

席に座り、少しすると本編が始まるまでのCMが流れ始める。


「映画って上映時間になっても本編始まらないのなんでなんだろうな」

「なんでだろうね〜? それにCMだいぶ長いし、最初から本編始まる時間を載せてて欲しいよね」


ふと、佳奈の方を見ると、画面を見ているが、映像は見ていない。そんな表情をしながらポップコーンを食べている。


「私、上映時間に間に合わないって思って、ポップコーン買わずに席に座ったけど、CMの時間で買えてた! って事が何回かあってその度に思っちゃう」

「あー、俺もあるなぁ。そう言えば、佳奈はこの映画はどういう系の話か知ってるのか?」

「えっ? ちょ、ちょっと分からないかな〜?」


観たい映画なのだから、概要くらいは聞こうかと思ったのだが、意外な返答だった。


「えっ?」

「あっ、えっとね、海外映画なんだけどね、有名な俳優が出てるらしくて、お兄ちゃんと観るのが、あっ、ちが……そ、そう私にオススメの内容って……えーっと、と、友達、友達が言ってたの!」


目をぐるぐるさせながら必死に説明してくれていると、ブーという音と共に、部屋が暗くなった。

「始まるみたいだね」


なんかヤケに慌てたような感じだったのが少し気になったが、本編が始まるのでそちらに集中することにした。


『Forbidden Love』の概要は最初は普通の兄妹なのだが、妹が兄への恋心を募らせていき、とある出来事をきっかけに妹の思いが兄に知られてしまう。

それから兄は兄妹でそれはおかしいと思いながら苦悩した日々を過ごしていき、段々と自分も妹のことが好きなんじゃないかと思うようになり、その仲は急激に進展していく。と言う感じである。


……で、まぁ海外映画なので刺激が強めなわけですよ。

今は兄妹でガッツリキスをしているシーンなのだが、こっちも兄妹なので流石に気まずくなる。

佳奈もきっと同じ感じだろうと横目で盗み見てみる。


(めっちゃ真剣に観てやがる!?!?)

予想とは裏腹に、それはもう食い入るかのように真剣に観ていた。

その姿を見て、俺も見習わなければと思う。これは作品であるのだ。兄妹だからと真剣に見ないのは製作者に対して失礼というもの。


流石に羞恥心を全く出さずに見るのは無理だったが、俺も真剣に見始めた。のだが……

(流石にこれは無理だろ!!)

数十分後、俺は再び先程と同じ状態に陥っていた。

なんとなく想像が付くかも知れないが、そう。濡れ場である。


これは気まずいなんてレベルじゃない。キスの時は佳奈の顔を見れるぐらいには余裕はあったが、今回は無理だ。


(すまん、佳奈。意気地無しな俺を許してくれ!)

とてもいたたまれなくなり、俺はトイレを理由にそっと離席してしまった。


トイレから戻ると流石に濡れ場は終わっており、普通のシーンになっていてほっとした。

その後はキスシーンはあったものの、濡れ場はなく映画は終わった。


時間を確認するとお昼を少し過ぎたぐらいだったので、そのまま飯に行くことになった。

「いらっしゃいませー! 2名様ですね、ご案内します」

俺たちが来たのは同じ建物内にある、学生の味方セイザリヤだ。


席を案内され、俺は佳奈の対面に座る。

「映画面白かったね」

「そ、そうだな」

メニューを広げながら、駄べり始める。

映画の内容は良かったが、正直兄妹で兄妹ものの濡れ場を観るってのが強すぎて、どうしてもそのシーンが頭をよぎり、ドギマギしてしまうし、変に佳奈を意識してしまう。


「もし私たちもあんな感じになったらどうしようね? お兄ちゃん」

「へ!? あ、あんな感じって……! あれはフィクションだし、俺らはならない……はず……だしょ」


あんな感じと言われ、俺は一瞬、あの濡れ場シーンに自分と佳奈を重ねてしまった。

すぐさまそのイメージを消し去り、その事を悟られない様に、否定する。


「もしもの話なんだけどなー」

だしょ? と首を傾げてから、頬を膨らませ、俺の返答にご不満な様子を醸し出す。

俺はその質問から逃れるように、定員呼び出しボタンを押す。


「お待たせしました。ご注文お伺いします――ってあれ、高田くんじゃん! もしかして彼女さんとデート!?」


店員さんがいきなり話しかけてきて、なんだ? と思い顔を向けるとそこに居たのは確か同じクラスになった……


「星乃さん?」

「正解っ! 星乃遥さんだぞっ!」

眩しい笑顔と共に改めて名乗る星乃さん。


「それでそれで? どうなの?」

女子が恋バナに飢えているって本当だったんだなぁ。と思いながらも彼女ではないと否定をする為に口を開く。


「あー、彼女じゃ――」

「はい、そうです。それと注文はドリア2つと青豆の温サラダ2つ、以上です」


佳奈が俺の声に被せて返事をし、注文を済ませる。心なしかちょっとピリついてる気がする。

「かしこまりました。高田くんと彼女さん邪魔しちゃってごめんね! 」


佳奈の雰囲気を感じ取ったのか、それ以上は何も聞かず、厨房の方へ歩いていった。


「良かったのか? 彼女って勘違いされてると思うけど」

「うん、あれでいいけど……お兄ちゃんさっきの人は? どういう関係性なの?」

「今年度からのクラスメイトだよ。だからよく知らないんだよな。名前もちょっと考えて出てきたって感じだし」


それを聞いた佳奈は若干ほっとした表情を浮かべ、さっきまで感じていたピリついた雰囲気が落ち着いた気がした。


「それより俺の注文……」

「いつも通りでよかったよね?」

「いやっ、あー、うん」


たまには違うやつを食べてみようかなと思っていたが、まあそんなのは些細なことだ。

しばらくすると星乃さんが注文の品を届けに来てくれた。今回は余計な話はせず、ごゆっくりどうぞ。とだけ添えて直ぐに戻って行った。


「お兄ちゃんの映画の良かった所ってどこだった? 私初キスのところが凄くいいなって思ったんだけど」


初キスのシーンは葛藤していた兄がようやく、唇に触れるだけのキスをすると、妹が「しちゃったね。兄妹なのに」と艶めかしく言うと、兄は今までの何かが切れたかのように、唇を啄む様に何度もキスをし、段々と激しくなっていくと言った感じだ。


星乃さんが話しかけてきた事で頭に浮かんでこなくなった映画の内容が、佳奈が再び話し出したことで、また浮かんできてしまう。


「俺もそこかな」

これ以上思い返さないようにと特に内容を振り返らず、佳奈と同じシーンを選択した。


佳奈は青豆の温サラダに乗ってる卵を崩し、とろけた黄身と青豆を口に入れる。黄身が唇に付き、それを舌で舐め取る。


キスシーンを思い出した事で唇に意識が行き、その何気ない行為が凄く艶めかしく感じてしまう。


「ってダメだろ!」

相手は妹だぞ! と頭を横に振って煩悩を振り払う。

「お、お兄ちゃん……?」

「大丈夫、なんでもない」

「ふふっ、変なお兄ちゃん」


結局、佳奈の映画トークによってほとんどの内容を振り返ってしまい、俺は煩悩に支配されないようにと1人自分と戦うというお昼をを過ごした。


その後はすぐ近くのカラオケに行き、3時間程度歌った後、特に目的がある訳では無いが、ショッピングモールはプラプラと回っている。

佳奈がアクセサリーコーナーに向かったので俺もついて行く。


「うーん、何か良い感じのないかな〜?」

アクセサリーは全く分からないが、佳奈は今のままで十分可愛いし、特に何かする必要ないと思うのだが、きっとそういう話では無いのだろう。


ただ一緒に歩いているだけだったが、ふと水色のヘアピンが俺の目についた。


「これとかどうだ?」

気がつくと俺はそのヘアピンを手にし、佳奈に提案していた。


「ヘアピン?」

「ここにこんな感じで」

普段サイドテールをしている反対の右耳に髪をかけ、そこにヘアピンを当てる。


「かわいい?」

「めちゃくちゃ」

即答すると、凄い笑顔になる。

「じゃあ買う!」


嬉しそうに俺が持っていたヘアピンを受け取ろうとするが、俺は渡さなかった。


「俺が買ってあげるよ。デートだしな」

「ほんと!? ありがとうお兄ちゃん、大好き!」

顔をほころばせ、心から嬉しがる佳奈を見て、俺も嬉しくなった。


店を出た後、早速ヘアピンを付け、そのまま俺たちは帰宅し、今日のデートを終えた。

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