一
チャイムが鳴り、先生が「では気を付けて帰るように」と言い終わり、教室内がガヤガヤと徐々に騒がしくなる。
「やっと終わった〜!」
俺は席を立ち大きく伸びをする。
生徒たちがどんどんと教室から出て行っている流れに乗り、俺も教室を出る。
教室を出たところで後ろから肩をトントンっと叩かれたので振り返るとそこには高校に入ってから出来た友人、西沢康太が立っていた。
「おいおい、1人で先に帰ろうとするなんてつれないな。一緒に帰ろうぜ」
「あぁ、悪い。昨日から妹が入学したから今日は一緒に帰ることになってるんだ。だからすまん!」
頭を下げながら手を合わせて謝罪をする。
それを聞いた康太は小さくため息を吐いた。
「そういう事は先に言っといてくれよな。ま、兄妹の仲は大切だしな。なら早く行ってあげろ」
「おう、ありがとう」
軽く返事をしたのち、俺は校門前に移動し、妹が出てくるのを待った。
校門前でスマホを触り始めて10分くらいが経過した頃、突如視界が塞がれた。
「だーれだ?」
聞き慣れた声。目を覆うために被せたであろう手の感触、サイズ。僅かに香る心地よい匂い。間違えるはずもなく。
「おっ、来たか。佳奈」
パッと目を覆っていた手が退けられて視界が戻ってくる。
振り返ると同時にそこにいた人物が勢いよく、けど柔らかくハグをしてきた。
えへへっ、正解!」
ハグしたまま笑顔を見せてくる佳奈に微笑みつつ、俺も佳奈の背中に手を回し軽く応える。
「おかえり。初日お疲れさん」
「ただいま〜。結構疲れちゃったよ〜」
ハグしていた手を解き、お互いに道を歩き始める。
「でも今日は自己紹介とか軽い感じしかやらなかったんじゃないか?」
俺が入学した時は確かそんな感じの一日だった覚えがある。あとは授業の必需品の確認等があった気もする。
「そうなんだけど、気疲れ? 知らない人ばかりだし初めての環境で軽く息が詰まっちゃって」
「あ〜、確かに俺も最初は似たような感じになってたな。近くの席の人と話したりはしなかったのか? 俺は隣の席のやつが話しかけてきてくれてだいぶ落ち着けたぞ」
ちなみにその隣の席のやつが先程の康太である。あの時に話しかけられてなかったら、今ほど仲良くはなっていなかったのでは無いかと思う。
「今日の所は本当に挨拶ぐらいだったかな。これからよろしくねって感じで」
「そっか。じゃあこれから仲良くなれるといいな。よし、なら今日は入学祝いも含めてお兄ちゃんがデザートを買ってあげよう!」
それを聞いた佳奈の顔が段々と笑顔になっていく。
「やった! ありがとう! お兄ちゃん大好き!」
その笑顔を見て俺は一日の疲れが消えていくのを実感する。妹の、佳奈の笑顔は何にも代えがたい俺の癒しだ。今ならなんでも出来る。そんな気分である。
頑張りますので、ぜひ応援よろしくお願いします。
出来れば週一以上のペースで上げていきたいと思っています。