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009 電話越しに聞く女子の声やばい

「まぁアレだ、その女の子は俺の……彼女ってやつだ」

「きゃーっ! 大将もそんな歳になったのねぇ!」

「姉貴きゃんきゃんうるせぇよ……」

「それでそれで? どんな子なの? 写真ある? 私より可愛くないと許さないわよ?」

「うぜぇ……」


 悪酔いしているのか素でこうなのかは知らんが、とにかくウザい。そういえば姉貴が家を出る前も恋バナに繋がりそうなことになったら食いついてきたっけか。


「んでどうなの? 写真あるの?」

「……ほれ」


 あんまり見せたくはなかったが姉貴は見ると決めたら簡単には折れない女だ。ここで出し渋ると最悪リリアの家まで行くぞ! と言いかねない。

 生徒手帳を姉貴に手渡して、リリアの写真を見せてやった。まぁ実は俺も可愛い彼女を自慢したい気持ちがないわけではないんだがな。


「うっそ……かっわいい! この子が大将みたいな威圧感マシマシのヤンキーと付き合ってくれたの!?」

「誰がヤンキーだ。荒っぽいだけでヤンキーではねぇよ」

「父さんにも見せてくれ。うはぁー、こりゃ随分なべっぴんさんだなぁ」


 姉貴は発狂し、親父は驚いている。素直にリリアを褒められるかと思ったが、この反応だと俺には釣り合わないと言われているようなものだ。期待していた反応とはだいぶ方向性が違う。

 でもまぁ無理もないか。リリアの飛び抜けた可愛さを見れば俺と付き合っているという事実に驚くのは当然だ。姉貴がアイドルと付き合うみたいなものだからな。俺だって驚く。


「あんたよくこんな子ゲットできたわねぇ」

「まぁ色々あってな」

「ただのギャンブル狂いかと思っていてけど、ちゃんと青春もしてるんだ」


 ……まぁギャンブルの過程でリリアと付き合っているんだけどな。それは言わなくていいか。

 親父と姉貴がリリアの写真に夢中になっている中、格安スマホが震えた。

 何だ? と思ったら電話で、しかもリリアからの電話だった。

 心臓は一気に跳ね上がり、ドクンドクンと脈打つのを感じた。姉貴と親父はもうしばらく写真に釘付けになっているだろうな。よし……

 俺は極端に狭いベランダに出て電話に出た。


「も、もしもしリリアか?」

『遅い! 彼女からの電話には3コール以内に出る!』

「わ、悪いな。ちょっと家族がわちゃわちゃしていてよ」

『言い訳はいらないわ』

「……で? 何の用事だ?」


 むやみやたらに連絡をするなと言ったリリアの方から電話をかけてきたのだ。おそらく大きな意味があるのだろう。


『別に。ただ何となくよ? か、勘違いしないでよ? 別に寂しくなったからとかそんな理由じゃないからね!?』

「え? あぁ、わかってるけど」


 あんな立派な家に住んでいるんだ、孤独や寂しさとは無縁の生活を送っているのだろう。

 俺があっけらかんと答えるとリリアは口籠ってしまった。なんなんだ?


『……改めてアンタ本気なの? その……ギャンブルのこともだし、私に惚れたことも』

「あぁ、本気だ」

『即答ね……なんだか恥ずかしいわ』

「なんだよリリア、お前くらいの美少女なら惚れられたことくらい何度でもあるだろ」

『もちろんあるけど……アンタみたいな真っ直ぐに惚れてくる人なんていなかったわ』

「んー……よくわかんねぇけどそうか。まぁ俺の気持ちは本気だ。それよりお前もいいのか? この賭崎大将さまの賭けに乗っちゃってよ」

『ふん、馬鹿にしないでよね。私が勝って、アンタの精気をすべて吸い尽くしてあげるわ』


 末恐ろしいやつだ。だからこそ、燃えるというもの。

 この命懸けのギャンブルに勝ち、俺はリリアを手に入れる。


「なぁ、ふと気になったんだが精気ってどうやって吸い取るんだ?」

『えっ!? そ、それはそりゃ……口吸いやえっちで……』

「あ、そう。なんかすまん」

『じゃあ聞くな!! ノーデリカシー男!』


 叫ばれた後にすぐ電話を切られてしまった。うん、今のは俺が悪いな。


「おーい大将、誰と電話してんだ? おっ、まさかこの子か?」

「違ぇよ。高校の悪友だ」


 リリアと電話していたことがバレると面倒だ。壁に張り付けられて尋問されるのが目に見える。


「おい大将、明日この子連れてこいよ」

「あぁ? できるわけねぇだろそんなの」

「お姉さまの命令を聞けねぇってのかあぁん!?」

「付き合って数日で家に連れ込むほど俺も節操なしじゃねぇんだって言いたいんだが文句あるかぁ!?」

「こらこら、やめなさい」


 親父に諭されて、一触即発のムードも消え去った。

 俺はこれ以上姉貴といると気分を害されると確信したため、さっさと共同部屋に入って仕切り代わりのカーテンを閉めた。


「チッ、相変わらずうるせぇ姉だ」


 それにしても精気を吸い取るのは口吸いとえっちか。……ってなに考えていやがる! プラトニックな付き合いをするのが俺の勝利条件だろうが!

 危ねぇ危ねぇ。これもサキュバスの能力の一つか。……いや、思春期男子の勝手な妄想力だな。

 勝手な煩悩に負けていてはリリアを目の前にしたら敗北が見えてしまう。俺は頭を冷やすために風呂で冷水を浴びて、速攻で寝床についた。

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