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007 プリクラ盛り盛り!

「ぷっ! アンタの目を大きくしたらめっちゃウケるんだけど!」

「何したんだ? っておいなんだ俺の目!」


 何回か撮った写真のうち1枚の俺が化け物みたいになっている。目が大きく、キラキラしているのだ。姉貴が持ってた少女漫画のキャラクターみたいだぜ。

 そんな俺の写真を見てリリアは大爆笑していやがる。面白いのはわかるが、そこまで爆笑するほどか?


「こんなにプリの盛りが似合わない人初めて!」

「悪かったな、似合わなくて」

「拗ねないの。ほら、アンタのギザ歯を治してあげたわ」

「マジか!? すげぇな!」


 盛る……ってやつはすげぇ! それだけはわかった。

 ギザ歯じゃない俺、意外といけているんじゃないか? へへ、隅に置けない男じゃねぇか。


「アンタ変なこと考えているでしょ」

「変なことなんて考えてねぇよ。客観的な事実を思っていただけだ」


 威圧感の正体はギザ歯だったんだな。ギャンブルで一攫千金に成功したら治療してやるぜ。


「さぁて、私はどんな風に盛ろうかなー」

「盛るってことはリリアの写真に加工を施すってことか?」

「もちろん。何か文句ある?」

「ある」

「え?」

「お前はそのままで果てしなく可愛いんだ。これ以上何をするってんだよ」

「なっ……ば、馬鹿! こういうのは盛るのが当たり前なの!」

「だからお前は盛らなくていいんだって」

「違うの! もう黙って見てなさい!」


 呆れたようにリリアは俺を突っぱねた。ここまで言われたら別に咎める理由もないから黙って見ているしかない。

 十数秒後、リリアは弾ける笑顔で俺に加工後の写真を見せてきた。


「ほらほら、こんな楽しみ方もあるのよ?」

「どれどれ……なっ、なに!?」


 その写真に写るリリアの頭には猫耳がついていた。そしてペンか何かで猫ひげが描かれている。

 クラっときた俺はよろめいてしまった。なるほど……可愛いリリアと可愛い猫をかけ合わされば当然のように可愛い生き物になるわけか。


「どう? 面白いでしょ?」

「これが盛るってやつか。舐めていたぜ」

「わかればいいのよわかれば。アンタにも猫耳生やしてあげる」

「ちょ、おい!」

「ぷっ、かーわい」


 俺の写真にも猫耳が生えてしまった。自分に猫耳が生えているのはなんだか滑稽だ。当然だがリリアのように可愛くもないし。


「何が可愛いだよ、リリアはともかく俺のは不気味だろ」

「そこがまたいいんじゃない。キモカワっていうか?」

「褒めてんのか貶してんのかどっちだよ……」


 キモいと可愛いは両立しないはずなんだがな。

 その後もリリアは好き放題時間いっぱいまで加工しまくった。俺の原型がほぼないじゃねぇかと突っ込みたくなるような加工もされたし、シンプルにリリアが可愛い加工もしていた。近く見ている分には楽しいかもな。


「まぁプリクラ初心者のアンタにはこれくらいで勘弁してあげるわ」

「やっと完成か。どれどれ……」


 リリアが作ったプリクラは思っていたよりシンプルで、俺とリリアの間にハートがつけられていた。青白くキラキラした文字で「好きピ」と書かれている。


「いいでしょ?」

「なんだこの好きピって」

「恋人らしくしてみてあげたの」

「はーん。今時の恋人はこんな感じなのか」


 よくわかんねぇ。けどまぁリリアの写真が手に入ったのならいいか。


「ほら、これシールになってるから。好きなところに貼りなさい」

「んー……じゃあ生徒手帳にでも貼っておくか」

「アンタ意外と勇気あるのね」

「どういう意味だ?」

「その……生徒手帳を落として誰かに拾われたりしたら見られちゃうでしょ?」

「へっ、いいんだよ」

「え?」

「こんなに可愛い彼女ができたんだぞ? 少しくらい自慢したいじゃねぇか。わざと落としてもいいくらいだぜ」

「ふ、ふん!」


 俺は生徒手帳の裏表紙にリリアとのプリクラ写真を貼り付けた。最初は疑問しかなかったプリクラだが、終わってみればいいものだった気がするな。


「よし、そろそろ帰るか。リリアの目的は達成できなかったみたいだが」

「もういいわよ。あれだけ攻めてダメだったんならもう少し作戦を変えるわ」

「怖い怖い。まぁやってみろよ。俺はこのギャンブルだけは絶対に負けねぇから」

「……アンタ、そんなに私のこと好きなの?」

「あぁ。惚れたからな」

「はっきり言うわね……」


 初めてリリアの照れ顔ってものを見られた気がする。プリクラの写真も良かったが、この照れ顔も撮っておきたかったぜ。

 ゲーセンから出ると辺りはもう暗くなっていた。はしゃぎすぎて時間を忘れちまっていたな。


「送っていく。家まで案内してくれ」

「しれっと家を突き止める気ね?」

「突き止めてどうするんだよ、ストーカーじゃあるまいし」

「話したこともないクラスメイトと付き合うギャンブルを持ちかけるのはストーカーじゃないとでも?」

「あぁ違うね。これはギャンブルだからな」

「狂人……」


 なんだかんだ言いつつも家まで送ることを許可してくれた。

 手でも握りたいんだが、流石にそこまでは飛ばし過ぎかと思ったので自重する。プラトニックを半年というのは俺自身にも十字架を背負わせてしまったかもしれないなと今更ながらに後悔した。

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