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003 サキュバスはクラスメイト

 朝、目が覚めてふと思った。あれ? 俺リリアの連絡先とか知らなくね? と。

 昨日は興奮とフェロモンにあてられ理性が飛びそうだったのですぐ逃げてしまったが、これでは連絡の取りようがない。出会う手段もない。


「まいったな」


 せっかくどストライクな女と付き合えたというのに次に会う口実を無くしてしまった。まぁでもリリアの方も俺の精気を欲しがっているんだ、いつか来るだろう。

 楽観的に考えて学校に到着して席に座ると、隣の席のやつからペンか何かで二の腕を突かれた。こんなことは初めてなので困惑して隣を見ると、そこには見たことのある顔が座っていた。


「あっ……リリむぐっ」

「その名で呼ばないでくれるかな!?」


 リリアの名を口にしようとした瞬間、口を塞がれてしまった。昨日と変わらない金髪のツーサイドアップに少し幼いながらも美しいかんばせ。間違いなくリリアだ。

 クラスメイトに興味がない俺だが、まさか隣の席の生徒がリリアだったとはな。もう少し視野を広げるべきだったぜ。

 ……あれ? クラス名簿に一回だけ目を通したことがあるがリリアなんて洋風な名前のやつなんていたか?

 解放された俺はすぐにリリアに質問をぶつけた。


「なんで名前で呼んじゃダメなんだよ」

「私の名前、本名使ってないでしょ?」

「……あ? どういうことだ?」

「だーかーらー、仮名として月姫莉里(つきひめりり)って名乗ってるでしょ?」


 あぁすまん。全然知らんわ。なんて言ったら殺されそうだったので黙っておいた。

 そうか、リリア・ルナフェリスなんて目立つ名前は使っていなかったんだな。っていうか……


「同じクラスだったのか……」

「なんか言った?」

「いや、何でもない」


 小声にしておいてよかった。

 それにしてもこんなマブい女が隣にいたのに気が付かないなんて、俺はどれだけギャンブル馬鹿なのだろうか。


「隣の席で助かったわ。これでいくらでも誘惑できちゃうわね」

「ハッ! そう簡単に俺が負けるかよ」

「自信満々って感じ。そんなにギャンブル強いわけ?」

「試してみるか?」

「えっ?」


 俺はクラスの後方のドアを指さした。


「あのドアから入ってくる生徒。次は男か女か当てようぜ」

「何それ……ただの運ゲーじゃない」

「そうか? そう思うなら俺が選ばせてもらう。俺が外し、莉里(りり)が勝ったら俺の放課後の時間をくれてやる」

「なるほど、今日でアンタの精気をもらえそうね」

「そっちこそ自信がおありのようで。そうだな……次に来るのは女だ」

「ふっ、甘いわね。このクラスは男子17人、女子13人。女子のほうが確率は低いわよ」

「さぁ、答えの入場だぜ」


 俺とリリアが注視するドアから入ってきたのは、スカートを靡かせる女子生徒だった。


「な、なんで……」


 リリアはありえないとばかりに驚愕していた。まぁたまたまだったとしても別にありえない確率ではないんだが、自分の方が高い確率を握っていると裏切られた時のショックはデカいわな。


「まぁ莉里の発想は悪くない。このクラスは男子17人、女子13人で男子の方が多いという目の付け所はいい。だがな……この朝の登校時間を見てみろ。どう見ても男子の方が早く登校しているだろ?」

「た、たしかに……」


 今クラスにいるのは男子13人と、先ほど来た生徒は含めず女子4人。残りの数としては男子4人、女子9人で勝負していたわけだ。


「女子の生態には詳しくねぇが、他のクラスにダチがいる。もしくは化粧で忙しくて登校時間がギリギリになる。そんなところか」

「クラスメイトのこと、把握していないようでしているのね」

「まぁギャンブルのためにな。逆に莉里は可愛すぎて、他の女子が化粧して来るということを見落としていたわけだ。お前みたいにすっぴんでは来られねぇんだよ」

「……ど、どうも」


 リリアは急にしおらしくなり、威勢の良さがどこかへ飛んでいったようだった。

 なぜか俺から顔を背け、話しかけても背中で返答してくる。そんなに賭けに負けたのが悔しいのか?


「わかったよ拗ねるなって。放課後ちょっとくらいなら一緒にいてやるから」


 そう言う俺だが、ぶっちゃけ一緒にいたいのは俺の方だった。

 恋愛は好きになった方が負けというが、まさに俺のことだな。ギャンブルで勝ったのに何かを差し出すなんて初めてだぜ。


「ふーん。じゃ放課後デートね。ホテルでも行く?」

「行かねぇよ」


 そういやサキュバスだったなこいつ。普通の人間と話しているような気がして忘れていたぜ。

 授業が始まると俺はいつも通り地方競馬の予想を始めた。チラッとリリアの方を見るとまじめに授業を受けていた。優等生なんだな。俺とは真逆だ。

 昼飯時になり、悪友どもと飯を食おうと立ち上がったらリリアが俺の制服を掴んできた。


「……どうした?」

「どうしたじゃないわよ。逃がさないから」

「あぁ、もしかして一緒に飯食ってくれるのか?」

「なっ! そ、そういうことじゃ……」

「わかったぜ。光栄なことだ」


 まさかリリアの方から誘ってくれるだなんてな。人間、生きていれば楽しいこともあるもんだ。人生まだまだ捨てたもんじゃねぇな。

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