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010 さすがに同じ班がいい

 触らぬ神に祟りなし。

 俺は酒が入って深く寝ている姉貴を起こさないようにそっと家を出た。ここで起こすと修羅のように怒り狂うからな。

 いつも通りの通学路をいつも通りギャンブルのことを考えて歩く。直接的にギャンブルをするだけじゃなく、イメトレや人間観察もギャンブル修行の一環だ。

 教室に着くとやはりリリアは一際美しく映った。声をかけるのも緊張するってもんだ。


「よっ、おはよ」

「……おはよ」


 なんだか少し機嫌が悪そうだ。昨日の電話でノーデリカシーと怒られたからか。


「昨日はその……悪かったな。デリカシーのない言葉を言っちまって」

「ふーん。気にしてたんだ?」

「あ?」


 俺がリリアの方を向くと、リリアは怒っているどころかニヤニヤと笑っていた。


「アンタって性欲ないのかと心配していたけど、その様子だとちゃんとドギマギしていたみたいね」

「莉里……てめぇハメやがったな!」

「ぷっ、めっちゃ面白い」


 なんだよ、昨日の夜悩んでいた俺が馬鹿みたいじゃねぇか。

 やってらんねぇな、と思っていたら急にクラスのやつが教壇に立って紙を配り始めた。なんだなんだと配られた紙を見たら修学旅行と記されていた。


「みんな知っての通り、僕たちの高校は来月に修学旅行へ行くことになっている」


 へぇ、知らなかったぜ。


「行き先は沖縄。7月の海は最高だろう。いい思い出にしよう。そこで先生がおっしゃってくれたんだが、班はどんな分け方でも自由みたいだ。みんな好きなように、喧嘩しないで組んでくれ」


 修学旅行の班ってことは、組んだそいつと沖縄を楽しむってことだよな。

 チラッと横を見ると眉ひとつ動かしていないリリアの顔が映る。リリアめ……どう思ってるんだ? 俺と組むつもりなのか、他のやつと組むつもりなのか……。

 俺も変わったな。先週までなら当然のように1人班にしていたことだろう。今の俺は猛烈に、リリアと沖縄を回りたい気持ちでいっぱいだ!


「な、なぁリリア」

「なに?」


 ぐっ……俺の言いたいことを分かっているくせにこの態度。これは俺に恥をかかせるつもりに違いない。


「……ギャンブルだ」

「……は?」

「ギャンブルをしよう。俺が勝ったら沖縄は俺と回ってもらう。リリアが勝ったら好きにしろ」

「ちょ、学校では本名で呼ぶなっての!」


 つい昂った俺は莉里ではなくリリアと呼んでしまった。まぁ吐いた言葉は取り返せない。また気をつければいいだけだ。

 それより大事なのはギャンブルだ。この勝負は言ってしまえば照れ隠しだが、何はともあれ勝てばリリアと沖縄を満喫できる。


「どうだ、受けるか? もし回りたい奴が他にいるのなら今のうちに言ってくれ」

「……別にいいけど。勝負の内容は?」

「そうだな……スマホのルーレットアプリはどうだ? これならイカサマのしようがねぇ」

「ぷっ、相当イカサマにびびってるみたいね」

「うるせぇ」


 リリアにはここ数回、イカサマで負けているからな。ここはイカサマのしようがないもので勝負させてもらうぜ。

 ただルーレットとなると本当にただの運ゲーになってしまう。ここは磨かれた直感を使う時が来たようだ。


「じゃあ私は赤ね」

「なにっ!?」


 俺が聞く前にリリアは止まる色を選んでしまった。これではもう俺の直感云々の前に黒しか選べなくなってしまった。


「文句ある? ルールに則っているつもりだけど?」

「……いや、ないさ」


 こうなってしまった以上は仕方がない。黒に俺の修学旅行を賭けるしかない。

 リリアは俺のスマホの画面を見るため、机をくっつけてきた。肩が密着してリリアの体温を少しだが感じることができる。


「ふふん、ドキドキするわね」

「このドキドキもギャンブルの良さだ」

「……ギャンブル馬鹿」

「なんか言ったか?」

「べっつにー?」


 なんだかよくわからんが、ともかくルーレットスタートだ。

 画面上を転がる銀色の玉は赤に入るか、黒に入るか焦らそうとしてくる。本物のカジノではこんなんで金のやり取りが決まるんだから恐ろしいよな。

 銀色の玉は推進力を失い始め、ついに止まろうとしていた。リリアの選んだ赤か、俺が選んだ黒か、どっちだ……!


「なっ!?」

「ふっ……私の勝ちね!」


 玉は無情にも赤色のポケットに入ってしまった。

 くそ! やっぱり俺が選ばずリリアが先に選んだから調子が狂っちまった。


「チッ……負けたもんは仕方がねぇ。好きなやつと回れよ」


 俺は普通に悔しすぎて泣きそうになったので教室から逃げ出そうとした。そんな俺の制服をリリアがキュッと掴んで引き留めた。


「な、なんだよ?」

「アンタ」

「は?」

「……修学旅行で回りたいやつ、アンタ」

「……えっ?」

「か、勘違いしないでよ? アンタと近くにいたら誘惑できる機会が増えるし、水着だから絶好の機会ってだけよ!」


 そうか、そういうことか。リリアにとってこの修学旅行は勝負を決めるのにもってこいの舞台だもんな。


「ふん……俺を選んだこと後悔するなよ? いっそのことお前を惚れさせて、お前から付き合うことを懇願させるまでにしてやるわ!」

「やれるもんならやってみなさい!」


 こうして、俺とリリアは修学旅行で同じ班になった。それがバレた時、クラスは一時騒然としたが俺がガンを飛ばしたら静まり返った。

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