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よろしくお願いします。

 不思議だよなー。一体何時から居るんだろう。



 ◇ ◆ ◇



 おくさん(生前の呼び名)が知ったら興奮しただろうなぁ…。


 …………

 『本人です!』


 …………

 しっかし似てるよなぁ~。誰かに似てるんだけど…。誰だったかなー?


 …………

 ―――えーーーーーー!!


 …………

 まさかのおくさん!?


 ………『あたり!』


 …………

 ―――悪い冗談だな…。


 ………『今思いっきり目が合って言ったよね?』


 …………


 ………!

 そう言えば…。名前があったら便利だな…。

 ぼそっと呟いた。

 何が良いのかと思い巡らしているようで、目を斜め上にちょっとだけあげている。


 性別が分からないしなー。と言いながらカチャカチャとパソコンで調べているようだ。


 『想像上の生き物の性別まで分かる世の中になったんだーっ。とちょっと感動したがどうやら違ったらしい。』


 うーーん。


 『やっぱり分からなかったようだ』


 名前…。 悩むなぁ…。


 ―――性別がどっちでも良いように…。


 ………

 ………!


 ――!「イタルボランテ」でどう?と聞かれた。


 ………

 ………


 ―――頷くしかないよね。


 ………


 長いからな-。「イタッ」で良いかっ。

 名前は「イタルボランテ」呼び名は「イタッ」

 完璧じゃん。と嬉しそうだ。



 ◇ ◆ ◇



 それにしても小さいな。餌は何が良いんだろう?

 ペットショップに「ドラゴンの餌」なんてないしなー。

 取りあえずキャットフードか…。

 と、こちらを見ながらしゃべってる。


 『いやー。今まで普通に食べてたご飯が良いんだけど…。』


 しゃべろうとして声を出した。

 「ほえっ」と鳴いた。

 びっくりした!


 あーちゃんもこちらを見てる。


 もう一回鳴いてみた。

 「ほえっ」

 あぁ。なんて情けない声だ。


 「ドラゴンの鳴き声なんて聞いたことないからなぁ。こんな鳴き声なんだ。身体が小さいせいかな…。」とちょっとからかうように、嬉しそうにこちらを見た。


 いやぁー。びっくりしたよぉー。

 ホントびっくりだよ~。

 声を出すのと火を噴く、絶妙な調整が必要だなー。

 練習しないと…。と心の中で思った。


 ―――それにしても…。なっさけない声だったな~。



 ◇ ◆ ◇



 腹減ったなー。と言ってキッチンへ行った。

 そう言えば、あーちゃんは朝から何も食べてなかった。


 丁度甘い物ばかりで、お腹が膨れるようなご飯が食べたいなー。と思っていた所だった。


 あーちゃんがいなくなると優秀なハンター達の餌食になるので、壁の縁までよたよたと飛んだ。もっと飛行練習しないとダメだな。と思い、練習することがたくさんあるな。とぼんやり考えていた。

 いやぁ~。こんな所にも座れるなんて本当にちっちゃくなったんだなー。と痛感した。


 高い位置から部屋を見回すのは結構楽しかった。ただ見回すと目に入る遺影が気になる。いつ死んだろう…。

 今更知ったところでどうにもならないが、気にならないと言えばウソになる。 


 それにしても極小だって竜なんだし、人語が話せるんじゃなかったっけ? 身体も強いし病気知らずで寿命も長いんだよね?

 何だか色々考えてたら溜息が出た。

 更に命の危険を感じながらの生活は結構ストレスになっているようで、思ったより気弱になっているような気もした。

 

 優秀なハンター達も人間の時は可愛かったのになー。さすが肉食獣! なまってないねっ。

 いやいや。困ってるんだけどね…。

 悩ましい…。


 …………


 「イタッ!」と呼ばれた。


 うーん。まだ馴れない名前。

 でもしょうがない。意思の疎通が出来る事を証明するため、よたよたと近くに飛んでいった。


 あれっ。分かるの?


 『え? 分かるよ?』


 テーブルにはインスタントラーメンと肉、野菜が入り乱れたフライパンが鍋敷きの上に置かれていた。そして直ぐにキッチンから水が入ったコップと小皿、取り分けようの小皿を持って戻って来た。

 椅子に座りこちらを見て「じゃ、食べるか。」と言った。


 目の前にはキャットフードと、ラーメン肉入りが取り分けられた小皿があった。


 いやぁ~。まぁね。分かるけどね。でもここは断然ラーメン肉入りでしょう!

 キャットフードには全く目もくれず、ラーメン肉入りにジャンプして一目散にかぶり付いた。

 正直嬉しかったねー。あんまり嬉しくて「ほえっ~」と今度はちょっと長めに鳴いてしまった。


 挿絵(By みてみん)


 嬉しそうににこにこしながらこちらを見ている目と合った。


 お菓子以外に飢えていたので、身体がラーメンまみれになってもちっとも気にならなかった。むしろ身体毎ダイブしないと食べられなかった。

 人間の頃はハンバーガーを頬張って口の横に付いたソースを、神経質にいちいち拭き取っていたのがウソのようだ。

 もしかしたら身体まみれじゃないと食べられないので、逆に気にならなかったのかもしれない。

 自分の背丈ほどある肉をガツガツ食べた。さっきクッキーを食べた時の満腹感もなく身体はもっともっとと要求している。


 成長期…?


 小皿分を完食し隣の小皿にあった水は身体毎ダイブし、先に水を飲み身体をざっと洗った。



 ……………



 睡魔が限界に達し、このままここで寝たら優秀なハンター達の餌食になるなー。と思い、すっかりねぐらになった枕棚までよたよた飛んだ。


 あーちゃんはちょっと驚いたようにこちらを見たが、何やら察し「お休み」と声をかけれたので、手を振りながら振り返ったけど、見えたかなー。と思いつつ、天井の隙間から身体をねじ込み棚板に落ちた。


 直ぐに後ろの扉が開き目の前にハンカチが敷かれ、「ここで寝れば?」と声をかけられ気絶するように爆睡した。




短編も書いてみました。

良かったらご覧下さい。

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