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よろしくお願いします。

 知らなかった。


 …………


 そして誰にも気づかれないように何とかお菓子が置いてある場所に着いた。

 全てのお菓子は個別包装されていて、クッキーが入った袋を掴もうとした。


 !!!


 えーーっと。

 あーちゃんと目があったかも知れない…。


 慌ててクッキーをその場に置き、テレビの後ろに飛び降りた。

 あーちゃんの気配がする。 


 「……おっかしいなぁ。」 


 ――――

  

 「………ハエかなー。こんな季節にハエか~ぁ?」

 などと、独り言を言ってまたテーブルに戻ったようだ。


 ―――あぁ。なんか疲れた…。

 今日はもう止めようかなー。

 でも、お腹空いたなー。と色々考えている内にとてもひもじくなった。

 人間ドラゴンだけどひもじくなると色々良からぬ事を考える訳で…。


 ドラゴンになっても思考は一緒なのかなー。とか、どうせなら人間に生まれ変わりたかったなー。とかあらぬ方向に考えがいって、とにかくひもじい訳ですよ。


 そんな時、ガタッと椅子から立ち上がる音がした。

 そのままゆっくり歩き回る気配がして、洗面場に行きドアが閉まる音がした。

 今は午前中のようだからシャワーかなー。と思った。


 内心ほっとした。

 このままこんな所で餓死したら、折角ドラゴンに生まれ変わったのに本当に情けない。

 今度こそ、お腹に力を入れて飛び上がりお菓子の置いてある場所まで飛んだ。


 あーー。

 あったよーー。

 お菓子を見てこんなに感動したことがあっただろうか…。


 感動もそこそこに、グズグズしていたら我が家の優秀なハンター達に見付かると思い、すっかり馴染んでしまったねぐらへ持ち帰ることにした。


 腐ってもドラゴンだし少しは力があるんじゃないかと思い、両手両足更には口を使って持てるだけ持った。案外軽かった。

 調子に乗っていくつも持ち、よたよたと壁に沿ってねぐら化した枕棚に戻った。


 ………

 

 ―――戻ろうとした。


 ――そこで初めて知った! 

 こんなにたくさんお菓子を持っていたらクローゼットの隙間を通り抜けられないじゃない!!


 ばかですか?

 ばかですか? わたし…。


 ひもじいとは恐ろしい…。

 正確な判断も出来なくなる…。


 仕方なく、手に持っていた物は先に隙間に押しつけて入れられるだけ入れて、ぎりぎり入らなかった物は身体で押さえつけ、口や手を使って何とか入れようと奮闘していたら、足の力が一瞬抜けていくつか落としてしまった。


 直ぐに取りに行こうと思ったら風呂場から出てくる所が視界の端に見えた。



 やば!

 やばやば!!


 隙間から枕棚にジャンプし、しばらく様子を伺った。

 目の前にお菓子があるのに食べられないなんて…。

 わんちゃんがよだれをだらだら垂らしている気持ちが分かるようだ。

 

 あーちゃんは風呂場から出て忙しく動き回っているようで、もしかしたらどこかに行くのかもしれない。と期待した。

 しばらく部屋を歩き回りその内にバタンとドアの閉まる音とがちゃがちゃとカギを閉める音がした。

 家の中が急に静かになった。

 それから直ぐに車が走り出す音がした。

 

 天上の隙間から部屋を見回してみると誰も居なかった。

 

 そこで直ぐにお菓子を食べることにした。

 小袋を開けようと思ったけど、気も急いているのでなかなか開けられない。

 こうなったらと思い、意識して火を噴いてみることにした。


 ――― ふーっ。ふーっ。ふーっ。………ぼっ。ぼっ。ぼっ。

 出来た! 

 やれば出来るじゃない!

 

 すごーい。すごーい。すごーい。

 もう、火噴きは会得したかも知れない…。

 

 火の大きさの調整は後回しにし、小袋に穴を開けそこから手を入れて、わしゃわしゃと穴を広げクッキーを出した。

 クッキーを食べるのにこんなに苦労をしたことがない。美味しさもひとしおだ。

 食べているとなぜか涙が流れてそれが段々酷くなって、その内泣きじゃくりながら食べ続けた…。

 

 …………

 …………


 大泣きをしながらクッキーをお腹いっぱい食べたら喉が渇いた。

 

 キッチンまで飛べたとして、水道の蛇口のレバーを持ち上げられるだろうか…。

 まぁ、小さくてもドラゴンだし力はあるんじゃないかと思った。

 

 キッチンに行くまで優秀なハンター達に見付からないように慎重に進む。我が屋の壁の殆どはキャットフォークを設えていて、部屋の中央には吊り橋が横断されている。

  

 飛ぶのはまだ馴れずよたよただった。

 部屋の中央にある、吊り橋の下を通る時、優秀なハンターが音も立てず近寄ってきて思いっきり爪を伸ばし危うく捕まるところだった。


 びびった。

 本当にちょーびびった。


 そのままよたよたとキッチンまで無事に飛んた。

 優秀なハンター達はこんによたよた飛んでいるのに、見失ったようで追いかけてこなかった。ほっとした。


 水道の蛇口にたどり着くと身体を使って蛇口を上げたら結構簡単に上がってしまい、勢いよく水が出た。そのままだと流されそうだったので蛇口の上に乗り飛びながら勢いを付けて下げ水流を押さえた。


 やっと水が飲める。

 ごくごくと体中で飲んだ。毎回ここに来るのは危険がいっぱいなので、何か水筒になるような物はないかと探していたら車の音がした。


 慌ててよたよたと飛びながらねぐらに戻った。


 

まだまだ続きます。

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